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【映像】スタジオゲストの掌にも“多量の汗”
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 名古屋を拠点に活動するアイドルグループ「なないろ∞ミルキーウェイ」の舞咲ゆめさん、彼女は手掌多汗症に悩まされている。手掌多汗症とは、気温や体温に関係なく、手のひらから日常生活に支障をきたすほどの大量の汗が出る疾患で、全国に推計400万人以上の患者がいるとも言われている。

【映像】スタジオゲストの掌にも“多量の汗”

 手からの大量に発汗するため、握手会ではハイタッチではなく、グータッチにするなどアイドル活動を行う上で困難に直面しているゆめさん。手を使う場面が多いだけに、生きづらさを感じる毎日だという。

 主だった原因がわからず、彼女以外に悩む人も多い手掌多汗症。どのような治療や対策を講じることができるのか。『ABEMA Prime』では疾患を抱える当事者と専門家に話を聞いた。

■「自分の手汗で携帯を水没させた」

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 手掌多汗症を公表し、疾患の経験をもとにした音楽や映像作品の発信を行うマルチアーティストのnaoさんは、症状について「異常発汗している時と、カラカラに乾いている時とで波がある。暑いから出るわけではなく、コントロールは難しい。自分の手汗で携帯(ガラケー5台)を水没させてしまうくらい」と明かす。

 症状に悩まされていたのは幼少期からで、「鉄棒をやっていた時に、自分の汗で滑って頭から落下したこともあった。鉄棒に水滴が大量についているので“naoちゃんがやった後だから嫌だ”と言われる。他にも、プリントを回す際や、フォークダンスなどの手を繋ぐ必要があるときにも嫌がられる対象になってしまうし、それがいじめにつながることもある」と振り返る。

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 緊張する状況下で発汗しやすいようで、「人がたくさんいる場所、バスや電車などで一気に汗が出てしまう」という。他にも「脱水症状になりやすく、起床時に動けないといったトラブルもある」ということだ。

 一時期は、対人関係で悩んでいたnaoさんだが、多汗症に関するイベントを主催するなどし、約8年間の活動で1000人以上の患者と対話してきた。日々の対策としては、着替えを持ち歩いたりしているという。

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 手掌多汗症による生きづらさについて「誰にも話せたことがないという方が非常に多い。言ったところで、相手にされないこともあるし、相手のリアクションに傷ついてしまうこともある。何十年と抱えて来て、ようやく今、辛さが共有できるようになった。疾患そのものの周知が大事だと思って活動している」と語った。

■手掌多汗症の治療法は?デメリットも?

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 これまでに2万人の患者と向き合ってきた、多汗症治療の専門家である山本英博クリニックの山本英博院長は、原因について「一卵性双生児の方なんかでは、同じ状態が出るので、遺伝子背景で病的な交感神経活動が生じていると考えられている」「診断で見るのは二次性徴が始まる前に出ているかどうか」と説明。

 症状と特徴については、「両方の手から同時に出ることもあれば、片側だけ出る場合もある。両側の手の汗が出る時に、足の裏もほぼ同じタイミングで出ることもある」「常に汗が多いわけではない。出る時は、スイッチ入ったみたいにドカンと、出ていない時はサラサラで、オンとオフが極めてはっきりしている」という。

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 手掌多汗症の治療法としては、汗の出口をふさぐ、発汗物質をブロックする「塗り薬」。神経からの発汗の指令をブロックする「飲み薬」。電流を流し、イオンが汗の出口を小さくする「イオントフォレーシス」がある。また、手術によって汗の原因となる交感神経節を取り除くことも。

 山本氏は「塗り薬は2種類あって、保険が適用されている。また、飲み薬は口内がパサパサになったり、筋肉量が落ちたり、涙が出なくなってしまうなどの有害事象があるが発汗量は減少する。イオントフォレーシスも保険で承認されている。この3つでも改善しない場合、手術で治療する」と説明。

 手術は「発汗は交感神経の一部の活動によって行われるので、その神経の通路に対するもの」。なお、同手術をした場合には9割の確率で代償性発汗が起き、別の所から汗が出るようになる。具体的には胸・背中・腰・大腿など脇から下が多いようだ。

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「交換神経節が取られてない場合に行われる交感神経幹切断術、一般的に遮断術と呼ばれるタイプの手術を受けると9割以上の確率で出てしまう。胸や背中、脇から下のお腹、太もも、お尻から、大量の汗が出て、かえって困るという現象だ。交感神経節の切除術が行われたら、それもほとんどの人が治まる」

 手術以外の治療を一通り受けたというnaoさんは「どれもかなり副作用が強かった。汗が出ないことの方が、逆にストレスというか、気持ち悪い感覚が強かったこともあり、難しかった。現在は治療しない選択をし、一緒に付き合っていくものとして捉えている。自分がどう困っていてこの汗をどうしたいのか、治療する・しないは個人の選択によってくる。そうしたことを知るため、きちんとガイドラインを作っていく必要がある。国内初のNPO法人も立ち上がったので、自分だけで悩みを抱えて困っている人は一度アクセスしてみてほしい」と呼びかけた。(『ABEMA Prime』より)

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