2月4日、宮城県・仙台サンプラザホールでプロレスリング・ノア『CROSS OVER 2024 in SENDAI』が行われた。メインイベントは王者・拳王にイホ・デ・ドクトル・ワグナーJr.が挑戦するGHCヘビー級選手権試合。拳王は1.2有明アリーナで征矢学を破り初防衛に成功すると、1.13後楽園ホールでは潮崎豪も破り、今回が早くも今年3度目の防衛戦。挑戦者のワグナーJr.は22年10月から約1年間GHCナショナル王座を防衛し名勝負を連発した実力者で、今回がNOAH最高峰のGHCヘビー級王座初挑戦。いま最もNOAHファンの支持率が高い両者による頂上対決が実現した。

 挑戦者ワグナーは、特別な時だけ着用する祖父と父から受け継いだワグナー家伝統の純白コスチュームで登場。ゴングが鳴ると、「拳王」「ワグナー」への声援が相半ばする中、両者一歩も引かない攻防を展開した。

 場外戦で拳王がワグナーの耳元で「カブロン!(馬鹿野郎)」と叫んでから鉄柵に打ち付けると、ワグナーもネイティブスペイン語で「カブロン!」と叫びながらのラリアットで仕返し。

 リング内ではワグナーがルチャ・リブレ伝統のロメロスペシャルを完璧に決めれば、拳王も足のフックを逆にしたロメロスペシャルを決め返し、さらに場外ステージ上でもロメロスペシャルを仕掛け、“ジャパニーズ・ルチャ”の先駆けであるみちのくプロレス出身者である意地を見せる。
 
 中盤、拳王のミドルキック連発にワグナーが頭突きで応戦する打撃戦を経て、後半は大技の応酬。拳王の得意技PFS(プロフェッショナル・フット・スタンプ)をワグナーが未遂に終わらせて、逆に雪崩式ブレーンバスターから、そのままワグナードライバー。さらに拳王のお株を奪うダブルフットスタンプを決め、「ミチノク!」と叫んでからワグナードライバーを狙うが、これは拳王が回避し張り手、ハイキックから拳王スペシャルを極めるが、これはニアロープでブレイク。

 それでも拳王はすかさずPFSを成功させ、さらに切り札・炎輪(ムーンサルト・ダブルニードロップ)を狙うが、ワグナーはそれを回避すると、カサドーラ(前方回転エビ固め)からラリアット。そしてファイアーマンズキャリーで担ぎ上げてのワグナードライバー・スペシャルを決める。

 拳王はカウント3ギリギリで返すが、ワグナーはすかさずロープに三段跳び乗ってのムーンサルト、ベスト・ムーンサルト・エバーを完璧に決めて、ついにカウント3を奪取。

 拳王はGHCヘビー級王座3度目の防衛に失敗。イホ・デ・ドクトル・ワグナーJr.が史上二人目となるGHCヘビー級外国人王者となり、NOAHにファンの絶大な支持を集めるメキシコ人ピープルズ・チャンプが誕生した。

 決着がつくと、ジェイク・リーがGLGのメンバー全員を引き連れてリングイン。そしてマイクを握ると「ワグナー、コングラチュレーション」と、まずは祝福。そして「これだけ素晴らしい選手が王者になった。ならばやることは一つ、私は次の挑戦をあなたにお願いしようと思う」と、次期挑戦者に名乗りを挙げ、「ワグナー、先ほども言ったとおり素晴らしい選手だ。だがな、ここの舵を取るとなったら、決定的に足りないものがある、それは私からの勝利だ。返答を待つ。リングで会おう」と語りリングを後にした。

 これに対しワグナーは無言でベルトを掲げ誇示すると、観客と「ビバ!メヒコ!」のコール・アンド・レスポンス。そしてスペイン語で感謝を述べたあと、「ドウモアリガトウゴザイマス、トモダチ!」と日本語でメッセージを送り、マットに置いたベルトに深々と礼をしてからベルトにキスをした。

 大会終了後、3.31後楽園ホール大会でイホ・デ・ドクトル・ワグナーJr. vs ジェイク・リーのGHCヘビー級タイトルマッチが正式決定。はたして重量級ルチャドールが時代を築くのか、それともジェイク・リーが再びNOAHの舵取りとなるのか。聖地でマット界に春を告げる激闘が展開されることは必至だ。

取材・文/堀江ガンツ
写真/プロレスリング・ノア