【写真・画像】社長は11ヶ月勾留、顧問は保釈されずに病死、裁判で“違法”とされた捜査…大川原化工機「冤罪事件」の深い闇 1枚目
【映像】ある技術者の死…追い込んだ「ずさんな捜査」
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 大川原化工機(おおかわらかこうき)の冤罪事件で「人質司法」が問題になっている。
 
【映像】ある技術者の死…追い込んだ「ずさんな捜査」
 
 2020年3月、生物兵器製造の恐れがある噴霧乾燥機「スプレードライヤ」を不正輸出したとして外為法違反に問われ、社長ら3人が逮捕、起訴された「大川原化工機事件」。検察は、裁判が始まる直前に起訴を取り消した。社長らが国と東京都を訴えた国家賠償請求裁判では捜査員が法廷で「捏造ですね」と驚きの証言をして、冤罪が明らかになった。

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 逮捕、事件そのものが公安の「でっち上げ」の可能性がある異例の事件だと、この事件を担当する和田倉門法律事務所の高田剛弁護士は指摘する。
 
「当初は警察がミスをしたんだろうというふうに考えていましたが、実は警察はミスではなく、悪意を持って事件を作り上げたんじゃないかと。当初我々が思っていたよりもずっとずっとこの事件は闇が深い」(高田弁護士)
 
 社長らは無実の罪で逮捕、起訴され、11ヶ月に及び不当に長期拘束、一時会社は倒産の危機に見舞われた。さらに、拘束中に体調を崩した元顧問は胃がんが発覚。適切な治療を受けられず、無実を晴らす前にこの世を去ってしまった。冤罪の温床となっている日本の人質司法、そして弁護人が指摘する「深い闇」、この事件の背景には何があるのか。

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 逮捕に踏み切った警視庁公安部の言い分は、外為法が輸出を禁止する生物兵器製造の機械は、定置で内部を滅菌または殺菌できるもの、つまり生物兵器を製造するときに機械内部に残る有害な菌を完全に死滅させる機能が備わっているもので、スプレードライヤがそれに該当し、会社側はそれを知っておきながら無許可で中国・韓国に輸出したという内容。以降、公安部は自ら描いたストーリーに沿うような取り調べや実験結果を出し続ける。
 
 逮捕された大川原社長らはおよそ3ヶ月、警察署内の留置場で拘束。手錠腰縄での取り調べを受けることになった。駆けつけた弁護士は「とにかく黙秘してください」「反論もしないでください」「取り調べ調書には捺印しないでください」と3人に告げたという。取り調べに弁護士が立ち会えない現状で無実の人を生還させる術がそれしかないからだ。憲法にも保障された「黙秘権」。取り調べの際にも宣告されるのが常だが、実際に黙秘や否認を続けると事実上、保釈は認められない。これが問題とされる「人質司法」の現実だ。だが黙秘は想像以上に辛いことだったと社長は言う。
 
「事件のことは黙秘して、とにかく反論してはいけないというのがものすごく辛い」(大川原社長)
 
 高田弁護士は社長らに“黙秘”をお願いした理由について「逮捕の目的が自白をとることがわかったから」と説明。その上で「自白を取られないために、対抗する手段は黙秘しかない」と判断したという。
 
「黙秘をすれば長期化する、否認しても長期化する、信念を曲げて自白するしかないが、自白したら負け」(高田弁護士)
 
 元大阪地検検事で弁護士の亀井正貴氏は、検察側について「逮捕した段階で起訴することは前提になっている。起訴するために取り調べをして自白させたい、もしくは不利な供述をとって有罪を作っていくというのが普通の話」と説明。さらに「雑談から入って共感を得て、そして反論しやすい内容を見つけてあてていく」と取り調べの手法について語った。

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 社長らへの取り調べと並行して、公安はドライスプレーの殺菌能力を確かめる実証実験に着手。実験で付属のヒーターで温めれば装置内部を100度にすることができ、大腸菌は死滅するとして有罪立証の柱としたが、会社側の実験では、250℃の熱を9時間送っても大腸菌の一部は残った。実は、会社側は社長の逮捕前から、機械には殺菌に必要な温度に達しない箇所があると詳しく説明していたが、公安部はそれを確認しないまま逮捕に踏み切った。さらに元役員には、殺菌の解釈をあえて誤解させ供述調書に署名捺印させるなど、取り調べの違法性も認定された。加えて、捜査側は不都合な実験データを隠ぺい、この機械の特性である粉状でやるべき実験すら行っていなかった。また、容疑を裏付ける専門家の意見を都合のいいように改ざんするなど、証拠の隠滅がなされていたことが弁護士の直接調査で明らかになっている。
 
 それでも社長らの拘束は続いた。弁護側は拘束期間中、5回も保釈請求を行ったがいずれも却下。中には、熟考されることもなく2時間ほどで却下されたこともあった。その理由は、毎回同じ「逃亡」「証拠隠滅」「口裏合わせ」の恐れ。しかし、逮捕前に2年にも及ぶ捜査をし尽くしていて隠滅するような証拠も、口裏合わせの恐れもないはず。保釈請求は、極めて常識的な訴えだったが認められることはなかった。
 
 逮捕から11か月後の2021年2月5日に、大川原社長がようやく保釈された。その2日後、ともに逮捕、拘束された元顧問の相嶋静夫さんが亡くなったが、大川原社長は葬儀に参列できなかった。保釈の条件に「関係者との接見は禁止」とあったからだ。
 
 そして保釈の6ヶ月後、検察が異例の起訴取り消し。大川原化工機は、国と警視庁を所管する東京都を相手に損害賠償請求裁判を起こし勝訴したが、国と東京都は判決を不服として控訴、同社も控訴した。
 
「現在わかっているのは、やはり当初我々が考えていたよりもずっとずっとこの事件は闇が深い。第二審でさらに主張・立証を丁寧に行って、この事件の真相がどこにあるのか、国民の皆さんにお知らせできるようにしたい」(高田弁護士)
 
(『ABEMA的ニュースショー』より)

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