監督も「すごい見切り。ひえー!」と感嘆 タイトル経験持つ一流棋士が見せた受けの妙手に周囲はヒヤヒヤもの/将棋・ABEMA地域対抗戦
【映像】仲間が「ひえー!」広瀬九段、ぎりぎりの見切り

 「玉は下段に落とせ」という有名な格言がある以上、自ら下段に落ちていく手は選びにくいが、達人レベルの棋士ともなれば、これが妙手にもなる。日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」予選Aリーグ2位決定1回戦、北海道・東北 対 関西Aが2月17日に放送された。第7局に登場した北海道・東北のエース広瀬章人九段(37)は、関西Aの井田明宏四段(27)と対戦。自深くに攻め込まれた際、自玉を横に逃がすと思われたところで真っ直ぐ下段に落ちる選択をしたことで、仲間たちから「すごい見切り。ひえー!」と驚きの声が飛んだ。

【映像】仲間が「ひえー!」広瀬九段、ぎりぎりの見切り

 広瀬九段は竜王1期、王位1期というタイトル経験者。同じフィッシャールールで行われるABEMAトーナメントでの活躍も目覚ましいが、今大会では1回戦での対局がいいところなく敗戦。今回も第2局に登場したが、本調子には遠く久保利明九段(48)に敗れていた。

 チームのエースと期待される広瀬九段だが、チームが久保九段にまさかの4連敗を喫して、カド番状態で第5局に出ると、諦め半分で指したことが開き直りにつながったのか、チームの連敗ストップに成功。続く第6局も勝利し、今度は逆に広瀬九段が連勝街道を走り出した。

 3度目のカド番となった第7局は、相居飛車で先手の広瀬九段が矢倉、後手の井田四段が得意の雁木というスタート。40手目付近までは全くの互角というじっくりとした将棋になったが、ペースはここから徐々に井田四段に。8筋からの突破を許した広瀬九段は、ここからどうしのいで反撃に転じるかという状況になった。するとここで仲間も驚きの一手が。△8七金と王手銀取りをかけられたところ、控室で見守っていた屋敷伸之九段(52)をはじめ仲間たちが横へと逃げていくと思ったが、広瀬九段はスッと玉を下段に落として▲7九玉。2八の地点にいた飛車の横利きも守備に活かすという判断だ。

 これには監督を務める屋敷九段が「すごい見切り。ひえー。すさまじい」と仰天し、戸辺誠七段(37)も「怖い。うおー」と後に続いた。大盤解説でも聞き手の武富礼衣女流初段(24)が「真っ直ぐ引くんですね」とつぶやけば、解説・高崎一生七段(37)も「めちゃくちゃ怖い…」と素直に言葉にしていた。

 なお、予想外の受けに井田四段もペースを乱されたのか、耐えに耐えた広瀬九段がついに形勢逆転し、そのまま勝利。この見切りの一手が、広瀬九段の5連勝によるチーム勝利も招いていた。

◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

【映像】久保九段の快進撃に仲間も「勉強させてもらっています!」
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