政治とカネの問題をめぐり、野党側が要求している政治倫理審査会(政倫審)の開催。
自民党は野党側が出席を求めている議員51人への意向の確認を始めたが、15年ぶりとなる開催となるのだろうか?
ロッキード事件を機に、衆参両院に設置された政倫審。議員本人からの申し出、もしくは政倫審委員3分の1以上の「申し立て」があり委員の2分の1の賛成があった場合に開かれ、これまで計9回開催されている。
2002年に政倫審に出席した田中真紀子氏は疑惑についておよそ20分の弁明を行った。この際は野党などからの追及に対し、参考人として同席していた弁護士などに話を振り、自ら説明することは多くなかった。
規定では原則非公開。だが、本人からの申し出があった場合は公開されることもある。今国会では、野党から岸田総理に対し政倫審の開催と安部派幹部や二階元幹事長の出席を求める声が上がっていた。
立憲民主党 泉健太代表は「政倫審の開催はぜひやってもらわないと。それを妨げるということであれば当然、証人喚問や次の手段を考えなくてはいけない。まずは政倫審をしっかり開いていただきたい」と発言。
野党側は自民党が応じない場合、2024年度予算案の審議に影響が出る可能性を示唆している。岸田総理は政倫審について周辺に「しっかりやらないと世間はそんなに甘くない」と話し、開催に後ろ向きではないという。自民党関係者は2024年度予算案の年度内成立のためにも政倫審を開くのは「既定路線」だとしている。
東京工業大学准教授の西田亮介氏は政倫審について「何らかのかたちで開催せざるを得ない状況に追い込まれていくはずだ。実はそもそも出席することそれ自体は、不利益を被るものではない。51人全員とはいかないかもしれないが、一定数の疑惑の渦中にある国会議員が出てくることになるのでは」と述べた。
さらに西田氏は「原則非公開(傍聴不可)となっているが、それでは国民に対して説明責任を果たしたと言えないだろう。将来的にはこの規定の改正も必要だ」とした上で政治とカネの問題の「処分」について持論を述べた。
「政倫審はもともとの経緯から国民に説明する(体を見せる)と同時に政治家が深刻な罰則を受けにくくする “落とし所”を作るために設置された節がないでもない。政倫審後の処分に関しても勧告にとどまる形になっている。これはなぜなのかというと、過去の日本の政治体制(翼賛体制)への反省から『国会議員には“不逮捕特権”のような身分保障が重要だ』と考えられているからだ。たとえ多数者の合意があっても直ちに国会議員としての身分を追われるべきではないという考えのもと、著しく政治倫理に抵触するような場合でも勧告にとどまる格好だ」
一方で西田氏は政治とカネの問題を解決する方法について「自民党は自主的なルールの変更を行うとしているが、30年前に作られた政治改革大綱は今になって振り返ってみれば全く守られなかった。なぜ今回の自主ルールは守られるといえるのか。全く信頼できない。そのため、厳しい規制が必要になってくる」とした上で、「会計に問題が生じた際に国会議員も何らかの形で責任を負う“連座制”だが、適応は難しい。なぜなら連座制を導入したところで強力な証拠が出てこなかった場合、結局関係者はおろか政治家本人に責任が及ばない可能性もあるからだ。実際、今回の疑惑の総数に対して、起訴に至った人数は政治家に加えて関係者まで広げても少ない。むしろ彼らが“最もやってほしくない”ことは政治資金規正法の強化による『政治資金の流れの透明化』だ。そこを法律で規制強化すべきだ」と指摘した。
自民党は様々な問題を抱えているが、この先の選挙にはどのような影響が出るのだろうか?
西田氏は「国民の怒りの声はかなり激しく、政治とカネの問題に対する不信感は極めて強い。だが、世論調査における支持政党で『支持政党なし』が占める割合も上昇している。この層が投票にも行かなかった場合、低投票率の中で組織の基盤が固い現政権と自民党が勝ち切ってしまう。議席は減らすと思われるが、大負けしない、という結末を迎える可能性も大いにある」と予想。
さらに野党などについては「野党が急速に信頼を回復し国民の支持を受けるようになる、あるいは全く別の『新しい塊』ができる可能性もある。地方政治に目を向けると、例えば子育て環境を変えていくことに対する支持が強まっており、そういった主張の政治勢力が国政にも出てきている。そうしたところが新しい民意の受け皿になるのであれば、選挙の結果も予想できないかたちで変わってくるかもしれない」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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