さすがのレジェンドも、ちょっと目を離した隙に急展開した将棋には、少し混乱したようだ。日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」予選Aリーグ1位決定戦、関東A 対 中国・四国が3月2日に放送された。第6局は関東Bが佐々木勇気八段(29)、中国・四国が藤本渚四段(18)という顔合わせになったが、関東Bの監督・羽生善治九段(53)が少し離席していた間にガラリと模様が変わった盤面に「な、な、な、なんで?」と驚く珍シーンがあった。
藤本四段の先手で始まった将棋は、居飛車党の中では非常によく指される相掛かり。しかも18歳の藤本四段が、1986年に塚田泰明九段(59)が考案したとされる急戦「塚田スペシャル」を用いたことで、控室にいた羽生九段も「ん?これは塚田スペシャル?そんな昔の将棋を指すんだ」と着目していた。2005年生まれの藤本四段が生まれる前から指されていたものだけに、どんな展開になるかと思われたが、指し手のスピードからして経験があるものと周囲も認めていた。
佐々木八段も、予想外の作戦に意表を突かれる格好にはなったが、慌てることなく元気いっぱい“らしさ”溢れる指し回しとなり、控室の羽生九段からも「ちょっと意外な意外をやられて面食らったかもしれないけど」と、心境を代弁しつつ安堵の笑みが出た。
すると徐々に佐々木八段の勢いが加速。中盤に△7七角成と大駒を捨てて成り込む大胆な一手から、形勢は佐々木八段ペースに。応援していた木村一基九段(50)も「順調、順調。冴えていますね」と声が弾んだ。ここで生まれたのが珍シーン。一瞬、席を外していた羽生九段が場面とSHOGI AIの勝率を見て「え?でも、さっきまで互角だったのに」ときょとん。「な、な、な、な、な、な、な、な、なんで?」と、うまく言葉がつながらず「な」を連呼してしまった。
対局はそのまま佐々木八段が危なげなく90手で勝利したが、ファンはタイトル99期を誇るレジェンドの「な」連発がツボに入ったようで「はぶさんたまに面白い」「羽生さん」「戸惑ってるw」「壊れたw」「羽生さんバグった」と笑いの輪が広がっていた。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)