2月、カナダの財務大臣事務所に環境活動家たちが乱入。警察が出動する騒動になった。彼らが訴えたのは「2050年までに融資による二酸化炭素排出量をゼロにする」というカナダの大手銀行のPRに抗議するため。「銀行の発信には根拠がない。グリーンウォッシュ(実態が伴わない見せかけの環境対策)だ」と断じたのだ。
【映像】カナダの財務大臣事務所に乱入してつまみ出される環境活動家
2月20日にはEU(ヨーロッパ連合)の理事会が、グリーンウォッシュを用いた企業などのマーケティング活動を禁止する「グリーンウォッシュ指令案」を採択。「環境にやさしい」「エコロジカル」「グリーン」など、実証できない表現が禁止される。
世界で規制する動きが進む中で、投資や企業活動にどのような影響を及ぼすのか。そもそも”経済成長”と”環境対策”は両立するのか。『ABEMA Prime』で専門家を交え議論した。
■車が森の中を走るCMはNG? 投資への影響も
ニューラルCEO、信州大特任教授でESGコンサルタントの夫馬賢治氏は、「日本でも、“エコ”“環境にやさしい”という言葉を怪しいと思う方は少なくないと思う。今回のEUの規制は、言葉ではなく具体的な根拠を書け、というもの。逆に言えば、具体的なことを書かれても、読み解き能力がないと本当に良いものなのかわからなくなってくる。消費者側にリテラシーがより求められる規制だ」と説明。
具体例として、「カーボン・オフセット(相殺)をエコと言うのも駄目だと、世界初のことで話題になっている。特に狙われているのは自動車関連だ。車が森の中を走るシーンは車そのものをエコに見せているということで、差し止める動きが広告業界からも出てきた。イギリスやEUではこういう状況になってきている」とあげる。
投資への影響については、「EUでは投資商品への規制が先に走っていて、ESGという言葉でブランディングしたプロモーションをやめることも始まっている。日本でも金融庁がガイドラインを作っているので、国内の投資商品にも影響が出てきている」とした。
使用時のみならず、原料調達や製造・廃棄等、製品やサービスの全サイクルを通して環境に対する負荷を評価する「ライフサイクルアセスメント(LCA)」の考え方がある。
夫馬氏は「先進的な企業ほどLCAで表示する動きは起きている。EV製造時のCO2は、蓄電池を作る時や資源を採掘する時に排出される量が多いが、これはLCAではなく製造コストしか見ていない。化石燃料由来の電気で走らせるとガソリン車よりも多かったりするが、再エネや原発由来なら減っていくので、どんな電気を使うかで評価は変わる」と述べる。
ただ、「ヨーロッパでもついていけていない企業、消費者のほうが多数だ」という。「きちんとコミュニケーションしていかないと、良かれと思ってやったのに処罰されるようなことが起きてしまう。そうするとバッシングが起き、放っておけば揺り戻しにつながる可能性はゼロではない。基準を示してどうジャッジするかを一緒に伝えていかないと、浮いてしまう変な規制になる可能性がある」との見方を示した。
■経済成長と環境対策の両立は?
夫馬氏は、環境と経済の両立はできると著書『ネイチャー資本主義』で述べている。「企業自身でどうするかよりも、投資家が各企業に迫るという動きは続いている。アメリカで反ESGは出ているが、EUの中で投資額はずっと伸びていて、なかなか環境問題が止む動きはない。マクロ全体で見ると、環境問題をやっていったほうがGDPは伸びるという結論をIMFが出していて、どちらかというと企業はそのためにやっている感覚。投資家も同じだ」とする。
また、「自然が破壊されることによる経済への悪影響がどんどん可視化されていて、IMF(国際通貨基金)や世界銀行、エコノミストが数字を出してきている」と説明。「“環境への悪影響を防ぐことが経済成長のために必須の前提になる”ということで広がっているわけだ。菅元総理が経済と環境の好循環と言った理由がそれで、この感覚が各国政府の中に入ってきている。もちろんそれを信じない方々もいる」と現状を述べた。
では、未来は明るいのか、厳しいのか。「悲観的ではないが、難しい状況。昔は、先に規制をかけられる大企業が“なぜここまで苦しい思いをしないといけないのか”と反発していた。逆に言えば、資本があり率先して動ける状況だ。今は残された消費者や中小企業が“目先のことで大変なのに”と反発する展開になっている。これは格差問題とシンクロしていて、ケアやコミュニケーション、支援策を打っていかないと、環境問題はどこかで行き詰まる」との見方を示す。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「結局、二酸化炭素が本当に減っているのか、環境対策による効果が出ているのかもよくわからない。おそらく“環境疲れ”がある中で、そこまでの負担を各国がやり続けないといけないのか?というのはあるだろう。中国やアメリカが好き勝手やっているのを見て、あれどうなの?という流れが何年かで来ると思う」との考えを述べた。(『ABEMA Prime』より)
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