自民党の裏金問題による政治倫理審査会をめぐり、永田町は大揺れの1週間だった。
【映像】岸田総理と自民党議員の相関図
自民側からは当初、裏金問題のあった51人のうち、安倍派の事務総長経験者ら4人と、二階派の事務総長が出席予定だった。自民は原則通り「完全非公開」での政倫審開催を求めるも、立憲・野田佳彦元総理が「完全公開を指示したらどうか」と、2月26日の予算委員会で提案。しかし岸田文雄総理は「公開の是非は、規定に基づいて国会で判断されるべきものだ」と答弁した。
27日になって、西村康稔前経産大臣、武田良太元総務大臣が政倫審へ出席すると明言。マスコミの傍聴を認める一方、審議中のテレビ撮影は行わない意向が示され、野党も受け入れる方針に傾く。しかし、塩谷立元文科大臣、松野博一前官房長官、高木毅前国対委員長が完全非公開でないと出席しないとしたことから、西村・武田両氏も発言を翻した。業を煮やした岸田総理は28日、「説明責任を果たす」として、みずからも政倫審へ出席すると発表した。29日からの政倫審では、岸田総理が野田氏に対して、在任中の政治資金パーティーを行わないと発言するものの、その他に目新しい内容は出てこず、5人も「関与していない」と口を揃えた。
3月1日には予算案採決をめぐって、立憲・山井和則氏が3時間近く演説するなど、衆議院の審議引き延ばしが行われたが、維新・馬場伸幸代表が「こういう形で時間を浪費するのはよくない」と日程闘争に反発するなど、野党の足並みがそろわない結果に。そして2日に異例の「土曜国会」が行われ、予算案は衆議院で可決された。
ジャーナリストの青山和弘氏は、政倫審への出席は、岸田氏の「奇策」だったと指摘。派閥解消の時と同じく、ほとんど周囲に相談をせずに、「目算もないまま、とにかく自分だけ出る。あとの連中もついてこいや」と動いたと説明する。
「政倫審が開かれ、一定の説明責任は果たした。大谷翔平(結婚)の速報も流れて話題がそれた。一気に強行採決の方向にかじを切って、野党は抵抗を始めたが一枚岩にならず、予算案が通過して年度内成立が確定した」(青山和弘氏)
青山氏によると、「奇策」の影響で、岸田氏と森山裕総務会長の間には「すきま風」が吹いている。岸田総理は、茂木幹事長が動かないため、頼りにしている森山総務会長に調整を頼んだ。政倫審は本人が説明したいという意向ありきで開催するもので、森山氏はその原則通りに調整を進めていたが、岸田総理の奇策でその調整に泥を塗られる形になった。
加えて、岸田総理、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長の「三頭政治」は派閥解消を機に崩れ、茂木氏は周辺に「岸田総理は信用できない」と語るほどだという。菅義偉前総理との不仲も残る現状、「岸田氏は非常に孤立した状況にある」と青山氏は解説する。
青山氏が取材で得た「周囲の声」を紹介する。
「総理は切れると何するか分からないから怖い」(自民党参議院幹部)
「岸田さんはもう誰も信じられなくなっているんじゃないか」(自民党幹部)
「岸田さんはどうしちゃったのかね。こっちは構わないけど岸田さんにとってはリスクしかない」(野党幹部)
自民党内には「この勢いだと、岸田さんは誰にも相談せずに、衆議院の解散もやるんじゃないか」との疑心暗鬼があるという。ポスト岸田として上川陽子外務大臣への期待も高まるなか、「それを防ぐにはひとつしかない。自分の手で解散を打って、全部リセットすること。激しい暗闘が始まるのがこの3月」と青山氏は語る。
さらに、浮上しているのが「茂木幹事長交代説」だという。「茂木氏は『次の総裁選には何があっても出る』と言っている。これまでは岸田氏が出るなら裏切らないと言っていたが、前言撤回している。岸田氏と茂木氏は完全に決裂状態。(裏金問題で)政治責任を取って自民党議員を処分しないといけない。それを幹事長がやらないといけないが、もう茂木氏には全く任せられない」と説明。
加えて「岸田総理が世論を意識するなら石破茂氏を幹事長にすえる可能性がある。しかし、そうなると麻生さんや茂木さんと完全に決裂することになる。岸田総理はとにかく支持率を上げることしかないから、何をやってくるかわからない」と解説した。
一方で、維新による「裏切り」もあったという。これまで維新は、政倫審開催を求める立場だったが、予算委員長や財務大臣の解任決議案を出す立憲の動きには「昭和のやり方」と反発し、解任決議案には自公とともに反対票を投じた。
「立憲に批判が殺到し、腰砕けに終わって、予算は採決・通過した。維新も立憲と一緒に抵抗戦術をして、3月3日に衆議院採決がずれ込んだら、(憲法の規定により参議院送付から30日で、参議院の議決によらず自動的に成立する)自然成立は阻止できた。4月1日までに通すには、参議院でも日程闘争が必要になってくる。野党に武器を与え続けるか、なくしていいか、という話」(青山和弘氏)
(『ABEMA的ニュースショー』より)