思いもよらないところで関わってしまう可能性がある反社会的勢力。企業がそうした相手との関わりや取引を防ぐために行うのが、「反社チェック」だ。しかし、これが時に一般社会で更生しようとする人たちにとって壁になることも。その実態について、『ABEMA Prime』で話を聞くとともに考えた。
■「資本が入っていたらと思ったらゾッとする」
反社会的勢力について、政府の指針では「暴力 威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」とし、暴力団、匿名・流動型犯罪グループ(元暴力団、元暴走族、地下格闘技集団など)を指している。
九州中心の運送業者、株式会社AEトランスポート代表の野田慎太郎氏は、知らないうちに反社と関わりを持ちそうになったことがあるという。起業する際にビジネス書などを調べる中でA氏を知り、SNSを通じてコンタクトし、面会。数日後、好条件で業務提携の話を持ちかけられるが、A氏は逮捕され、反社(暴力団構成員ではないものの密接交際者)だったことが判明した。
当時について、野田氏は「東京で会って九州に帰った後、メールで車を貸すとかお金を入れるといった話があった。しかし、うまい話には裏があると感じて、DMでお断りをして、その人からスタンプ1個が来て終わった。数カ月後に(逮捕の)ニュースが流れて、事なきを得た」と振り返る。
「資本が入っていたらと思ったらゾッとする」と話すが、そのリスクについて「我々も取引をする中で株主のチェックはする。反社が判明すれば、取引できなかったり、融資を受けられないだろう。業容拡大ができなくなる問題が出ていたと思う」と述べた。
その後も取引先は気をつけているそうで、「全てできているわけではない。ただ反社ツールを導入して、違和感があればネットで調べたり、採用する方に関しても経歴に空白期間があるなど怪しい部分があれば調査等は入れている」と答えた。
■反社と関わるリスク「自治体や警察のネット情報にリストアップされ拡散」
独自のノウハウを生かし、新聞記事やネットの情報から企業や団体、個人が反社会的勢力に関与したことがないかを調べるツール「RISK EYES」を開発したソーシャルワイヤー株式会社。反社会的勢力の情報は警察などで取得できるものの手間も時間もかかってしまう。そのため、導入する企業が増えているという。
サービス責任者の杉山賢人氏は「ネガティブな情報をできる限り抽出しやすくするためのシステムとして企業に活用いただいている」とし、「暴力団やそこの属する方だけ排除しておけばいいかというと、隠れている存在は多い。いわゆる半グレも一般人を害する。怪しいというところでは、例えば逮捕歴や裁判を起こされたことがあるかなどを情報網として把握した上で、取引するか否かを判断することが求められている」と説明。
反社と関わった時のリスクについては「基本的には銀行からの融資や取引が停止し、口座が使えなくなるケースもある。自治体や警察のネット情報にリストアップされると、拡散されていき、全ての取引が段階的に止まっていくと思う。実際は(関係を)知らなかったとしても、事実が世の中に広がって社会的信用が低下し、営業活動がうまくいかなくなるリスクがある」とした。
元埼玉県警捜査一課で刑事コメンテーターの佐々木成三氏は「匿名・流動型となってくると、隠れているグループはデータ上で絶対に出ない。警察はその組織に足を運び、誰が出入りしているかをアナログな捜査で明らかにしていくわけだ。警察の持っているデータは外に出ないとなると、完全な反社チェックはできない」と指摘した。
■更生する環境作りは 反社チェックが壁に?
裏社会に詳しい作家の草下シンヤ氏は、更生する環境作りも必要だと主張している。「暴力団組員として報道されたものは蓄積され、10年20年残るとも言われ、抹消されない。5年ルールで一般人に戻れるはすが、元反社とされ生活への支障をきたす。結果的に再犯へとつながるケースもある」。
元暴5年条項(5年ルール)として、暴力団を離脱しても5年間は「暴力団員等」とし組員とみなす規定がある。この間、銀行口座の開設、携帯電話の契約、クレジットカードの契約、賃貸物件の契約、各種ローンの手続きが出来ない。
このルールに効果はあるのか。佐々木氏は「警察は正直、抜けたというのは積極的にやっていない。実際にそれが更生の道を閉ざしてしまうのであれば、制度は明確にするべき。ただ、一応隠れて抜けただけということをやっている人もいるので、それも判断するシステムを作っていかないといけない」「反社と犯罪をした人は別。そこは分けて考えたい」と述べた。
企業側の対応について、野田氏は「足を洗った方々に関しては、企業の受け入れる姿勢も大事ではないか。コンプライアンスが厳しい世の中なので、警戒はする。しかし、初めから否定してしまうのは、やり直そうとする方々の足を引っ張るのではないかと、常に疑問を感じている」と話した。(『ABEMA Prime』より)
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