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【映像】メタバースで仕事の説明を受ける受刑者
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 受刑者の就労を支援するため、受刑者と企業をメタバース空間で結ぶという新たなプロジェクトがスタートした。

【映像】メタバースで仕事の説明を受ける受刑者

「うちの会社というか団体のHPは見てもらえましたか?どんな感じでしたか?」(清掃業 担当者)

 メタバース空間でやりとりをするのは、企業と就職を希望する人。よくある企業面接かと思いきや、大きな違いがある。画面に映った「帯広刑務所」のアイコン。就職を希望するのは受刑者だ。いずれも現在服役中で、刑務所などからメタバース上にアクセスしている。

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 これは受刑者や少年院在院者の社会復帰を目指すべく、日本財団が企業とともに取り組んでいる「職親プロジェクト」。さらなる雇用促進のため、このプロジェクトでは日本初の試みとなるメタバース空間を使った受刑者等の就労支援を始めた。

「メタバースを使うことによって、例えば今日、この東京の会場と北海道の帯広など、そういったところをつなぐ。そうすると東京にいながらにして北海道の受刑者とも対話できる。あるいは今後、沖縄など全国に広げることができると思っている」(日本財団公益事業部・福田英夫部長)

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 移動時間や旅費の削減につながるこの支援には、東京都や地方の企業13社が賛同し、メタバース空間にブースを設置。そこに札幌や帯広など6カ所の少年院や刑務所の在院者・受刑者が参加した。参加者は各施設からパソコンでメタバース会場に入室。気になる会社があればそのブースへ行き、担当者から仕事内容について詳しく話を聞けるというシステムだ。

 今回は建設業をはじめ、介護福祉業や人材派遣業など様々な業種の企業がそろった。担当者が希望する受刑者たちへ、画面を通して説明を行う。

「介護のお仕事といっても色々な種類があります。大きい施設であったり訪問介護など。その中で私たちは通所介護、通いのサービスを行っています」(介護福祉業 担当者)

「ビルクリーニングの仕事は技術さえあれば稼げるので、若い人にはそういうところが結構人気ですよ」(清掃業 担当者)

「受刑者は受刑者で、色々な企業の担当者と話ができるので、職の選択肢、幅が広がる。東京の刑務所に服役している人と北海道の企業をつなぐことも、これからは容易になってくると思う」(日本財団・福田氏)

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 それぞれ何らかの罪を犯し、服役している受刑者たち。自分が罪を犯した地域とは離れた場所で就職することで、当時の仲間と会うことがなくなり再犯防止になるというメリットもあるそうだ。

「寮費は1カ月3万円でワンルームアパートを会社の方で用意してあり、給料は25~28万円くらいの支給になっています」(建設業 担当者)

 参加者から多かったのが待遇や給与に関する質問。デリケートな話もオンラインだと聞きやすかったようだ。受刑者と企業の心の距離までも縮めたメタバース空間での就労支援。参加した企業側の感触はどうなのだろうか。

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「多数の方と短時間で面接ができるのは魅力かなと思う」(建設業 担当者)

「どんな気象条件であっても、そういう空間が設けられることによって、新幹線が遅れたとか雪が降ったとか、そうした弊害もなくできる面では、延期や中止にならないのでいいと思う」(建設業 担当者)

「(刑務所に直接行くと)移動時間や交通費ももちろんかかるし、なかなか行けないところの人たちに話を聞いてもらえるので、メタバース空間を今後も活用していくのが一番いいのかなと思う」(介護福祉業 担当者)

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 メタバース就労支援について、アフリカでスマート農業を進める社会起業家の牧浦土雅氏は「メタバースでやる必要がどこまであるのかという議論はあるが、やらないよりはやった方がいい。そして、ただ対面で1対1でZOOMや電話越しにやるよりも、あたかもイベント会場のブースに訪れて『この企業の話ちょっと気軽に聞いてみようかな』ということができるのは素晴らしい取り組みの1つだ」と述べた。

 受刑者がこれから社会でどう歩んでいくのかという不安や、自分の所在をまだ明かしたくないといった、心の準備ができてない人にとって、メタバース空間は素直に意見が言える場なのかもしれない。

牧浦氏は“メタバースの後”について「就業のきっかけはメタバースだが、受刑者も社会・リアルに出ていくため、同僚と話をしたり接客をしたり物を作ることで給料をもらうことになる。メタバースがいい切り口になるといい」と指摘した。

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 政府広報オンラインHPの情報によると、刑務所再入所者の再犯時における有職・無職の割合は、再犯のときに無職だった人は有職に比べ約3倍に増えている。再犯防止にも職があることは非常に重要なようだ。

この点について牧浦氏は「人と仕事をしていることによって罪を犯す機会が減るのもそうだが、それよりも、令和4年時点で再犯率が2人に1人というのは衝撃的だ。当然、就労の機会を提供するのも大事だが、どう再犯を減らすのかを考えていくことはより大事だ。この人手不足の時代、2030年、40年にはもっと酷くなると言われているので、この問題を解消する1つとして、このような受刑者に対してもっと多くの就労機会を与える取り組みは今後増えていきそうだ」と述べた。

(『ABEMAヒルズ』より)

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