東京池袋で起きた、乗用車を暴走させて母子2人が死亡した池袋暴走事故。被害者遺族、松永拓也さんに対する、卑劣な殺害予告をした男が逮捕された。
「年のいった受刑者に金を払わせるのはおかしい。近いうちに松永を殺しに行く」警視庁は殺害を予告する電話をかけたとして、鳥取市の無職、吉村育久容疑者を逮捕。吉村容疑者は容疑を認めているという。
今回犯人逮捕を受け、松永さんにその胸の内を聞いた。
「命を狙われるかもしれないという恐怖心はずっとあって、最初の殺害予告を受けてから1ヵ月間はまったく家から出られないような生活をしていて。それでもやっぱり恐怖心はずっと拭えなくて。そういう意味でやっぱり今回、加害者が逮捕されたということは、少し安堵した。良かったなという風に、いまは思っているところです」と明かした松永さん。
事故で愛する妻子を失った松永さんは、被害者遺族として交通事故撲滅のための運動をおこなってきたが、そんな松永さんに対してネットでは「男は新しい女を作ってやり直せばいい」「お荷物の子どももいなくなったから乗り換えも楽でしょうに」といった心ない卑劣な誹謗中傷も繰り返されてきた。
しかしそれにも負けず、自身の体験を発信してきた松永さんは「誹謗中傷のときも殺害予告のときも『そんなにそういうの(誹謗中傷)を受けるのが嫌だったら、発信しなければいいじゃないか』と言われることがけっこうありまして。事故で亡くなった妻と娘の遺体を見たときに、こんな理不尽なことが起きてはいけないと。被害者にも加害者にも。現実を知ってもらって、それが事故抑止につながっていくという意味で発信していこうと決めた」とコメントし、発信をしないという選択肢は自分にないと話す。
交通事故をゼロにすることは確かに難しいと語りつつも、「『ゼロにはできないんだから仕方ないじゃん』で終わらせてしまったら、誰かが被害者になってしまう。だからできる限り減らしていこうって考えていくことは大事なことだと思う」と、発信を続ける理由を語った。
3月22日、松永さんは被害者の心情を刑務所職員が加害者らに伝える制度を利用し、飯塚幸三受刑者が収容されている刑務所を初めて訪れた。
このことについて松永さんは「加害者と直接話をしてみたいとずっと思っていて。事故そのものは過失、いわゆる人間のミスなわけですよね。ただ、刑務所に入ってそれで終わりでいいんだろうか。私はこの被害者側という立場で彼は加害者側という立場。2人の立場を超えて将来の交通事故の未然防止というところに、同じ視点を加害者側と被害者側が発言することが、未来の事故防止に僕はつながるんじゃないかという風に考えていた」とコメント。
さらに「加害者に対して交通事故の防止という同じ視点を持って、同じ未来を見て発信していきませんかということを伝えました。私にとってはもう妻と娘の命も戻らないし、あの日常というのも戻ってこないから、唯一僕に救いがあるとしたら、やっぱり未来の事故を一件でも防げたんじゃないかと思ったときに、唯一救いなんです。同時に加害者にとっても、もうそれしか救いがないんじゃないかなって。本当の更生というのは未来の事故防止について一緒に取り組んでいくこと。お互いの立場を乗り越えて取り組んでいくことじゃないかなと私は考えています」と語った。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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