東京地裁は26日、大手学習塾「四谷大塚」の元講師・森崇翔被告(25)に懲役2年、保護観察付きの執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。
「講師の立場を利用し、学習指導に当たっているかのように装い撮影した」(東京地裁)
判決によると、森被告は去年、教え子の女子児童10人以上の下着などを校舎内で盗撮し、動画の一部をSNSに投稿していたという。
東京地裁は犯行の悪質性を指摘しつつも執行猶予とした理由について、「性依存症を克服すべく治療に取り組んでいる」ことなどをあげている。判決後、四谷大塚は「再発防止を徹底する」とコメントした。
東京地裁が、性依存症の治療中であることなどを「刑事責任を軽減する事情」とした判決について、明星大学心理学部教授で臨床心理士/公認心理師の藤井靖氏は次のように違和感を指摘する。
1.量刑が軽い
「類する事件で共通して感じることだが、量刑が軽い印象がある。僕は法律の専門家ではないが、犯行の様態に比例して、傷害よりも殺人の方がより量刑として重くなるように、インパクトはある程度考慮する必要がある。判決の中で、いくつか犯罪の事実が裁判でも認められてはいたが、被害者の視点からすると子どもはもちろん、その親に与えるインパクトは生涯続くといっても過言ではない。
常に『撮られているんじゃないか?』という不安を抱えながら、しかもその画像がずっとネット上に残り続けることも懸念される。法的には考慮しきれていない印象がある『精神への影響』を勘案して、もう少し量刑は重くてもいいのではないか。被害者の心の傷をもっと社会的に共有し、予防に繋げていく必要がある」
2.「反省」の中身の分析は?
「判決からだけだと、森被告が反省の念を抱いているかは推し量るしかない部分がある。裁判の中で反省の言葉を言っているだけではなくて、その中身はどういうことかを踏まえた上で酌量されているのか気になる。例えば『もう二度とこのようなことがないようにしたいと思います』くらいの反省なら、極端に言えば誰でも言えてしまう。
森被告は自分の性的嗜好をあらかじめ理解していたというような報道もあるが、それを受け入れた上で今後も同じようなことをしないよう具体的にどうするか、自分の中に取り込めているかも含めての反省だと思う。仮に『自分の性的嗜好をなんとかしたいと思います』くらいの反省だと、本人の考え方としてはいいが、客観的に見て『じゃあ性的嗜好はなんとかできるものなのか?』という疑問も生じる。実際に治療も受けているという話だが、自分の意気込みや主観ではなく、正しい方向性でちゃんと自分を変えていこうと考えているかどうかは大事なポイントだ」
3.「治療可能」の根拠は?
「類する事件の判決などでも、通院して治療を受けていることが情状酌量に影響したりする。ただ、僕が現場で実際に色々な人が治療に通うのを見ていて、治療に向き合う意欲や意思のレベルも人それぞれでバラバラだし、『たぶんいずれまたやります』などと言い、治療内容に抵抗し続けることもある。なので、『治療機関に通っている』ことだけで情状酌量の余地があるとはなかなか言えないのではないか。しかも性依存症といっても人によって病態はさまざまで、パーソナリティなど複雑に特性や症状が入り組んでいると、治療対象として扱えるかどうかも微妙な場合もある。治療を行っているのであれば、そこの治療者の所見や治療の経過を踏まえた上で、判断すべきではないか。しかも仮に治療が通常の『通院』の形態であれば、その間は容易に性衝動を喚起させる刺激に触れられるわけで、それは治療経過にはマイナスに働く」
さらに藤井氏は「保護観察付きの執行猶予5年」における「保護観察」の内容について「おそらく、治療を受け続けさせることが主目的であって、保護観察を付けて更生の方向に向かっているのを見守るという意図だと思う。しかし、症状の再燃や再犯などリスク管理をどこまで実効性を伴ってできるかは不明である」と説明した。
3月19日に「日本版DBS」を導入する法案が閣議決定されたが抑止力になるのか?
藤井氏は「ないよりはあったほうがいい。ただ、先進諸外国に比べると、日本は例えばGPSを付けたりはしないので、被害者感情や再犯予防を考えると、まだちょっと甘いと言わざるを得ない部分がある。韓国ではGPSで再犯率が1/8に下がったというデータもあるし、できる手は今後もさらに打つべきだ」と答えた。
そして「加害者を助けていく取り組み」については、「日本ではどちらかというと個人の人権や倫理への配慮からあまり議論が進んでいない経過がある。一方で、再犯率が高い犯罪の種別であり、再犯しないように加害者の更生を考えていかなければならない。海外だと化学的去勢で、性的衝動自体を薬によって抑える方法が一般化されていたり義務(強制)になっていたりする。これは根本的治療でもある。日本でも、もちろん任意でやられている場合もあるが数はごく少数。じゃあ強制的にやればいいかというと、当然そこは不可逆性や副作用の可能性もあるため、慎重に考えざるを得ないという意見もある。
ただ、本人が望んで、どうしても苦しくてどうにもならないときに『化学的去勢で楽になれるんだったら』という人もいる。そういったことも対処や予防の一つとしてもう少し周知されたり、一般化されてもいい気がする」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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