静かな立ち上がりの攻防が一撃で激変。強烈な左ハイで1ダウンを奪われた直後、右ハイで腰砕けになり、手とヒザをついて反射的に立ち上がった瞬間に左フックを“バコッ”と被弾して大の字に…。1度のダウンで2度沈む珍しい衝撃のKO劇に場内騒然。わずか15秒間で2度のダウンを奪う電光石火の勝利に後楽園が沸いた。
3月30日に後楽園ホールで開催された「Krush.159」。王者・璃明武(K-1ジム総本部チームペガサス)と倉田永輝(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)のKrushスーパー・バンタム級タイトルマッチは、1ラウンド1分54秒に左ハイ、右ハイ、左フックと3つのクリティカルな打撃で2ダウンを奪った璃明武が完璧なKO勝利で2度目のタイトル防衛に成功した。
昨年7月、怪我から8カ月ぶりの復帰戦で永坂吏羅を退けた王者・璃明武。2度目の防衛戦は岩尾力の欠場により選ばれた連勝中の倉田だ。前回12月の「Krush.156」では、龍翔を相手にパンチ連打からタオル投入と鮮烈なKO勝利でインパクトを残している。
カード変更があったにも関わらず、王者盤石の勝利だった。試合開始から的確に倉田の左足に集中攻撃を加えた璃明武は、前に出る倉田のパンチを下がりながら当てさせず、遠距離からカーフキックで削っていく。蹴りにローからミドルと変化を加えながら、伸びのあるジャブ。やや前傾で前に出る倉田に何もさせない。
すると開始1分半、倉田がプレッシャーをかけ璃明武がジワジワ下がるシーン。倉田が距離をはかりながら次の攻め手を探った次の瞬間、それまでローを見せていた璃明武が一転して左ハイを一閃。これが倉田の顔面へヒット。「パシッ」と乾いた音とともに、倉田は後退しながら背後に沈んでいく。
一瞬の出来事に蹴りを被弾した倉田も「何が起きた?」と呆気に取られた表情。解説の石川直生も「見えてませんでした、反応できてなかった」とコメントする。
倉田の足元はフラフラ。何とか立ち上がるが、ダメージが大きくレフェリーの呼びかけにも上の空だ。初回でダウンを奪われた倉田はリスクを取り前進しながらパンチを振るが、璃明武は冷静に攻撃をかわし、ガードが緩んだ相手に今度は右のハイ。腰からガクンと崩れ落ちた倉田は右手、右ひざをマットにつき、反射的に立ち上がったが、そこに璃明武の追撃の左フックが炸裂。頭からマットに落ちた。
一撃目のハイで既に目が泳いだ表情を浮かべていた倉田に「目が飛んでいた」「自分が倒されたことにも気付かないハイ」「ローの軌道からハイキック!」とファンも驚愕。気持ちと本能で立ち上がったゆえに、追撃の左を許した1ダウンで“2度沈む”衝撃的なラストシーンについては「不用意に立たない方が良かった」といった声も聞こえた。
試合後、璃明武は「完璧な試合が出来た。Krushのベルトは自分がしっかり守って相手がいれば防衛するんですけど見つからないと思う」と語り「これからK-1に乗り込んでベルトを狙っていきます」とKrushとK-1タイトル両取りを宣言した。