入学シーズン、多くの人が新たな門出を迎えようとしている中、埼玉の名門進学校・県立浦和高校の生徒らが先週、県の教育委員会に対し「共学化反対」の声をあげた。
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2023年8月、埼玉県の第三者機関が男女平等の観点から、県内の公立の男女別高校に関して「共学化が早期に実現されるべき」と教育委員会に勧告。これを受けて、浦和高校など対象となる高校の卒業生や保護者らが中心となって反対の声をあげ、署名活動なども行ってきた。そんな中、浦和高校の現役の生徒らが県教育委員会の担当者を学校に招き、意見を述べたのだ。さらに今月、生徒会が実施したアンケートでは、約86%が「反対」「どちらかといえば反対」と回答した。
別学公立高校の共学化の是非について、『ABEMA Prime』で議論した。
浦和高校の意見を聞く会で生徒から出たのは、「別学を選ぶ権利を奪う」「異性がいると埋もれる意見も腹の底から話し合える」「共学化のメリットを示して」といった意見。
共学化に反対する浦和高校OBでさいたま市議の堀川友良氏は「『共学化のメリットを示してほしい』という声があるあたり、少し性急な話になっていると感じる。第三者機関が勧告を出したわけだが、ここに至るまでの議事録もメモも出てきていない。また、男女別学・共学に関してのデータも不足している」と指摘する。
埼玉の県立高校137校のうち、男子校が5校、女子校が7校。ただ、偏差値上位10校を見てみると、男子校が3校、女子校が2校入る状況になっている。
これに堀川氏は「男女別学のほうが学力が伸びやすいという韓国のデータもある。そこで私学だけ、つまりお金がある子どもだけ別学に通える状況は、ある程度是正されないといけない」との見方を示す。
教育者で京都精華大学前学長のウスビ・サコ氏は「お金があるかないかで学校が決まらないよう、その子の選択を支援することが重要だと思う。多くの国で、国が支援して一部の人が私学に入っている。試験に受かる能力があって、その子に合うのであれば、お金がない家庭へはお金を出していく。公立をどうするかもあるが、そういう支援もあるのではないか」との考えを述べた。
県立浦和高校同窓会が2023年12月に埼玉県知事・教育委員長に提出した意見書では、「共学化は社会の男女間格差や不平等が学内に持ち込まれる」「別学の廃止で異性と接することに恐怖心を持つ生徒を無視することになる」といった声もあがっている。
堀川氏は「例えば、男子野球部の女子マネージャーなんかは相当固定されている状況だ。しかし、男女別学であればそういう役割に縛られることもない。実際、浦和第一女子校校なんかでは、理系に行く生徒の割合が多くなっている。子どもたちがそこに行きたいと思った時に選べる環境を残しておくことは、少なくとも今の段階では必要だと思う」と指摘。
一方、17年の専業主婦経験を経て外資系企業で働いている薄井シンシア氏は、女子校出身だが「良かったとは思っていない」という。「この議論は、なんとなく共学がいい・別学がいいというものではなく、その子どもに合っている学校かどうか。娘を共学に入れたのも、子どもを見てのこと。子どもファーストで選択肢を与えようということだ」と投げかけた。
公立高校の共学化をすでに実現した自治体もある。宮城県では1999年に方針を表明し、約10年かけて全県での取り組みを完了した。当時の宮城県知事である浅野史郎氏は、「教育委員会の人が説明に来て、“宮城県の県立高校をすべて共学化する”と。実は教育委員会は知事から独立していて、決めることができる。私は男子校である仙台第二高等学校の卒業生なので、“一部例外を認めてもいいんじゃないの?”という思いもあったが、教育委員会の人は“どこを別学・共学にするという基準、メルクマールはないので、全部なんです”と。それはそうだなと納得し、そこからは決意を持って自分の意見のように進めた」と話す。
また、「これは理屈の問題。税金を使って運営しているのに、男子しか行けない高校、女子しか行けない高校があっていいのかという話だ。例えば、アメリカの公立高校で“白人しか行けない”“黒人しか行けない”と説明すると、おかしいと思うのではないか。性別も人種も生まれながらのものだ」とした。
堀川氏は「高偏差値帯に男女別学しかないのであればこの議論はすごくわかる。しかし、埼玉県には共学校・男子校・女子校もしっかりある状態の中で、強制的に共学校にしてしまうというのは性急すぎる。貧困の再生産が起きているとも思うので、この点はしっかり見ていかないといけない」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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