「『独身だから家の都合ないでしょ?シフト変わって』と言われたことがある」「子持ち様が会社頻繁に休んでずるい!」
【映像】「子持ち様のしわ寄せは独身にくる」…「子持ち様」巡るSNS上の声
SNSで噴出している、職場での不満。子育てが理由による休みや早退のしわ寄せを受けているとして「子持ち様」という言葉を使い、批判する人が相次いでいます。
それぞれの家庭環境の違いからくる、不公平感。少子化や働き方改革についての研究・調査を行う相模女子大学大学院の白河桃子特任教授は、家庭と仕事の両立を支援する制度の利用者増加が背景にあると話す。
「2010年以降、育休利用者の復帰がすごく増えている。なぜなら、以前は努力義務だった時短(勤務)制度が義務化されたからだ。この両立支援制度はどんどん充実しており、短時間勤務制度、残業・所定外労働の制限、育児の場合に利用できるフレックスタイム、テレワークなども含まれる」
女性の社会進出を後押しする動きも相まって、産休・育休後、職場に復帰する人が増加。男性も育休制度を利用するなど、多様な働き方が浸透する中で、上司や同僚の負担については置き去りにされたままだという。
白河特任教授は両立支援制度の利用者の同僚にインタビュー調査を実施。職場に短時間勤務者がいることで「負担がある」と回答した人は全体の35.6%にのぼった。
それぞれの家庭の事情によって感じる不公平さを解消するための方法はあるのか?
白河特任教授は「例えば育児をしている人の同じチームにいる人に負担金を渡す。月5~6千円の手当を出している事例がある。またボーナスに反映させている企業もある。24時間休みがない産婦人科では当直の問題もあり組織に不満がたまっていたが、誰もが全く理由をつけずに1カ月に1回休めるようにしたことで不満が収まったという事例もある」と紹介した。
さらに白河特任教授は職場でできる対策として「コミュニケーションをしっかりとって時短の方がいない間も仕事が回るように工夫するべきだ。例えば、ファイルの場所を撮影して共有したり、営業先や職場のデータをしっかり整理してクラウドに上げるなど、誰が休んでも回る職場にする『属人化の排除』が一番重要だ」と述べた。
「お互い様」はもう限界にきていると話す白河特任教授。社員の間に軋轢を生まないための取り組みが会社側には求められていると指摘する。
「お互いに憎しみ合うべきではなく、『子持ち様』という言葉が一般化してくるのは大変良くないことだ。あくまで制度を作っている側に問題があり、会社の運用がうまくできていないということだ。不満は会社や制度のせいであってけっして本人に向けてはいけない」
「子持ち様」という言葉によって子育てしながら働く人への批判が相次いでいる現状について、政治学者の佐藤信氏は「共働きに関する問題は昔からあった。かつては地域社会で共働きの人と専業主婦の対立が問題となったが、共働きが主流になった今、対立が職場に移ってきたことに時代を感じる」と述べ、「そもそもの前提として、『子どもがいるかどうか』で線引きをすべきではない」と強調した。
「子どもがいたとしても、子どもの性格や体調、周りのサポート体制によって状況は大きく違う。今は介護の問題も同時にあるため、育児と介護の両方を担っている人はさらに厳しい。そのため、『子持ち様』などと定型的にすべきではなく個々人の事情を見て理解していくべきだ」
一方で、「制度と社会が現状に追いつくことは理想だがすぐには難しいため、個々の職場で対応していくことも必要だ」と訴えた。
「場合によっては、生産性が落ちた社員の給与を一定程度引き下げるような対応も検討すべきだ。そうすることで、育児や介護を行なっている人たちも『ここまで出来ていなくても自分は許される』という働き方ができる。また、これまで会社では公私を分けようという流れがあったが、それぞれのプライベートな事情を組み込まなければ、それぞれが満足して働けない状況が生じるようになったことで“公私の再編”が必要になっている。新しいフェーズに入ってきて、その中で私たちが新しい働き方、新しい社会の作り方に慣れていくことも大事なのでは」
(『ABEMAヒルズ』より)
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