育児をしている人は“採用されにくい”。女性では結婚・出産後の就職を「難しい」と感じる人が9割以上とのデータもある。一方で衆議院では、男女の子育てと仕事の両立を支援する「育児・介護休業法」の改正案が審議入りした。
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しかし中小企業では、社員が少ないと1人休んだだけでも一苦労で、子育て中の人を安易に雇えない現状もあるという。『ABEMA Prime』では、育児を支える社会のあり方を考えた。
■時短勤務の職探しに壁?と2児の母の悲鳴
審議入りした育児・介護休業法改正案は、男女ともに仕事と育児等を両立できるように、育児中の柔軟な働き方を実現することが目的だ。残業免除は従来の3歳までから、小学校就学前までに拡大。子どもの看病等の休みも、小学校就学前から小学3年生までに。病気・けがを理由とするものに限られていたが、入学式や入園式も可能となる。働き方の面でも、3歳から就学前の子を持つ親への措置として、時短勤務・始業時間変更・テレワークなどのうち2つ以上を全企業に義務付ける。
2児の母のAyaさん(20代)は、子持ちでも働きやすい環境を求めて転職活動中だ。夫(30代)と保育園に通う娘2人(4歳と2歳)と暮らし、コンサル系企業で派遣の営業事務職をしている。子育てに理解のある職場に転職を希望し、正社員を目指したが、時短の相談ができず派遣となった。転職活動は2カ月で3社落ち、2社は結果待ち。過去には100社以上も書類落ちして、面接は1件のみだった。
法改正については「働くママにはありがたいが、子育て支援が広がる度に『子育て世代ばかりずるい』という声が聞こえてくる」と語る。
現在は派遣で働いているが、「上の子が小学校に上がるまでに、テレワークの多い職場へ転職したいが、正社員は定時が長く、時短勤務も難しい」ため、派遣で仕事を探すことになる。「そもそも子どもができてから、派遣の面接に進む確率が減った」。
■雇えない企業側の本音
企業側が、子育て中の人々を雇うことをためらう理由とは何なのだろうか?中小企業の代表をつとめるTakaさんは、女性を「子どもができたら辞める」条件で採用しているという。現在は営業事務2人、経理1人の女性を雇用しているが、寿退社や妊娠・出産で辞める人が多い。その経験から、産休・育休整備は中小企業では無理で、大企業などできるところはやるべきとの考えだ。
補助金が出るなら雇うことも可能だが、産休・育休をすすめたいなら、政府が補助金を出すべきとの見方を示す。「仲良くしてもらうために同年代の若い女性を常時雇用しているが、どうしても結婚・出産がある。休むと誰かを補充するが、補充した子に仕事を教えると、帰ってきた子には仕事がない。中小企業は、物理的に定員が決まっているところがある」。
面接時に方針を伝えても、「嫌だと言う子は、今まで一度もいない」。「男性も含めて離職率は低いが、高齢化はしている。女性は産休・育休の他にも、妊活や夫の転勤で退職する」とした上で、増員による職場復帰は「やりたくてもできない」と説明した。
厚労省は中小企業を対象に、両立支援等助成金を設けているが、それでは不十分な現状もある。「お金もそうだが、戻ってもやはりお願いできる仕事がない。会社をどう継続するか、今雇っている人とその家族を食べさせることが第一使命で、きれいごとだけを言っていられない」。
■“子持ち様”が波紋!制度を整えれば変わる?
近ごろでは、子育て世代が職場で頻繁に休むことにより、子どもがいない人が負担を強いられるとして、「子持ち様」なるネットスラングもある。社会心理学者の碓井真史氏は、「子どもがいる人のことではなく、時短等を利用している人のことでもなく、子持ちであると同時に、周囲への配慮ができない人のこと」だと解説する。
衆院議員の小林史明氏は、「社内のルール決めが重要だ」と指摘する。「人手不足の時代で、働き方や生き方が多様化するなか、経営者にルール決めの能力が求められる。ノウハウを高めれば円滑にできて、『しわ寄せがいく月は、給料を増やす』といったルールがあれば、納得する部分がある」と主張。
さらに、労働環境の改善に成功した地元企業の事例を紹介する。「50人ぐらいの製造業で、女性が7、8割。1〜2時間単位で働けるため、女性同士の口コミで人が集まる」。背景には人手不足による「みんなに働いてほしい」との雰囲気がある。「どういうルールや職場環境を作れば、働きやすくなるのか。そういう社会を作る段階に、もう移っている」とした。
(『ABEMA Prime』より)
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