先週、厚労省が公表した「日本の世帯数の将来推計」によると、2050年の単独世帯の割合が4割以上になるという。そして将来増えると考えられるのが身寄りのない高齢者だ。日本総合研究所は2040年、高齢者世帯のうち子どものいない世帯が3分の1にのぼると試算しており20年で倍増に。
「入院する際の身元保証人は?」「もし認知症になったら?」「亡くなった後のことは?」、こうした課題に岸田総理は「まさに政治として寄り添わなければならない課題である」と述べており、支援体制の整備に向け検討が進められている。
身寄りのない高齢者のケア、そして政策の在り方とは。官房長官時代に孤独・孤立支援を推進した、前厚生労働大臣・自民党の加藤勝信衆議院議員を招いて『ABEMA Prime』で議論した。
■2050年には高齢者の4割が「身寄りなし」
加藤氏は「この問題は誰にでも起こり得ること。例えば、子どもがいても海外にいる場合など、サポートが期待できないこともある。身元保証だけでなく、体調不良時にサポートしてくれる人が必要であり、そこも議論していかなければならない」と指摘する。
そんな中、加藤氏が会長を務める自民党社会保障制度調査会がプロジェクトチームを立ち上げた。誰もが安心して歳を重ねることができる「幸齢社会」に向けた包括プロジェクトで、地域包括支援センターや身寄り問題支援のNPOからヒアリングなどをおこなう。
加藤氏はプロジェクトの内容について「元々は“認知症支援”の議論から出てきている。高齢者の生活支援として、1人暮らしの方が急な体調不良で救急車で病院に運ばれた時に、入院手続き等の身元保証人の問題、日常生活品の手配、空けた家をどうするかなどをサポートする人がいない。これから高齢者が増えていく中でどう支えていけるかを議論する」と説明した。
また、「亡くなった場合の行政手続きや、ご遺体をどうするかなどの問題もある」と述べた。
■浮上する介護&ケアの問題
身寄りなし高齢者の介護ケアの実態として、身元保証人だけでなく、緊急連絡先がないことも問題だ。日常生活では買い物や銀行に行けない人や、住宅の賃貸契約で困難を要することもある。また、死亡届や無縁仏、墓仕舞い、遺産、遺品、残留物をどうするかなどの課題もある。
実際に、行政が遺体を火葬し遺骨を保管するケースも増えているという。横須賀市終活支援センター福祉専門官の北見万幸氏は「身元が分かっていながら引き取り手のないお骨も増えてきている」と指摘する。
「経済力や家族がちゃんとしているかは別問題。スマホが見つかってもロックされていて連絡先が分からない。エンディングノートを書いていても保管場所が見つからなければ全て無駄になってしまう」とした上で「情報の登録制度を急いで整備しないといけない」と警鐘を鳴らした。
加藤氏は「日本の身元保証制度は、就職、学校入学、借家、入院、施設入所時など様々な状況で必要とされる。本当に必要なものだけを残して、不要なものは廃止すべき。必要なものについては民間も活用しつつ、行政が支援する仕組みを作る必要がある」と指摘する。
また、地方自治体は人手不足の問題もあり何でもできるわけではない。「地域の中にあるNPOやNGOと連携をしながら、民生委員制度など、既存の仕組みを有機的に組み合わせていくことが重要」。
■身寄り問題で必要な“仕組み”
身寄りのない高齢者ができる対策として、北見氏は「私の終活登録」の利用を推奨する。連絡先や墓など“終活関連情報”を事前登録でき、緊急時に市が代わりに各所へ連絡する制度だ。「緊急連絡先、エンディングノートの保管場所、遺言書、お墓の場所、血液型、かかりつけ医などが登録できる」。
一方で、元デジタル副大臣で自民党・新しい資本主義実行本部事務局長の小林史明衆議院議員は、マイナポータルなどデジタル基盤を活用し、自治体が積極的に情報を集約・共有することを提案する。
「何かあった時に医療や遺産処理の意思決定を、スマートフォンからマイナンバーカードで簡単に登録できる制度を作るべきだ。海外ではできる制度が始まっている。日本もそれを取り入れることで、家族や友人に託すことができるようになる」。
さらに「コミュニティに属するということが必要で、本人が健康になるだけでなく、あまりお金を使わずにプラスになる世界がある」。また「本当に困ったときのために情報の登録が必須だが、スマホを使えない人もいるので、国が一律のコールセンターで登録できる仕組みを作るなどすれば、費用を抑えてやることは可能」とした。その上で「コミュニティを作っていく、支援をしていくNPOや中間団体をどう育てるかという議論が重要だ」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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