ゴールデンウィークの中日の3日間。学校を休みにした自治体がある。
「昭和の日と憲法記念日の間の教育委員会が定める日を『体験的学習活動等休業日』にする。もう一つ、秋の文化の日前後の教育委員会が定める日を休業日に充てると規定している」
話を聞いたのは「体験的学習活動等休業日」の制度を取り入れている鳥取市教育委員会の浅見康陽課長。
「体験的学習活動等休業日」とは家庭や地域でさまざまな活動の充実を図るために自治体が独自の休校日を定めることができる制度。鳥取市では今年のゴールデンウィークは4月30日から5月2日までを休業とし、子どもたちも10連休になるのだ。
一般的にはまだ浸透していない制度だが、なぜ鳥取市は取り入れたのか?
浅見課長は「まとまった休みとすることで、普段なかなか学校ではできない、家庭や地域における体験的な活動を行う機会を作り出すこと。もう一つは、保護者や教職員をはじめとして、社会全体で有給休暇の取得促進の機運を高めて働き方改革につなげられればと考えて始めた」と説明した。
子どもの体験学習の幅を広げると同時に市全体の働き方改革を担っているといい、教職員からは「この制度があることで休みがしっかり取れる」「平日になかなか行けない銀行や病院に行ける」などの声が上がっているという。
この施策について、東京の街の人たちに聞いてみると「決めてもらうと罪悪感なく休める」「休みの計画を立てやすいし、長い休みは長いお休みで中日はなくていい」と肯定的な意見の一方で「結局どこも混んでしまう。分散でも、別の所で休むなどのほうがいい。比較的(休みが)融通が利く人ならいいが、そうじゃない方もいるので学校だけではなく全部足並みが揃っていた方がいい」と、疑問の声も。
加えて最大の問題は、子どもは休みでも親が休みを取れない場合における子どもの預け先の確保だ。
この点について浅見課長は「本市としては、商工会等にこの制度の周知を行ったり、休暇取得の協力のお願いをしている。さらに、放課後児童クラブを開設して、休みが取れない家庭の子どもの受け入れも行っている」と説明。
鳥取市では企業にも協力をあおぎ、保護者への負担を減らす取り組みも同時に進めているようだ。
まだまだ全国的に広まっていない「体験的学習活動等休業日」の制度。この制度からどのような社会を目指していくのか?
浅見課長は「学校はもちろん、家庭でも地域でも様々な体験、豊かな体験ができることは子どもたちの成長にとって本当に大事なことだ。そのため、この制度をきっかけに地域社会全体で子どもたちを育てる機運が高まればいい。そして、大人にとってもこういう取り組みをきっかけに、余暇を子どもたちと一緒に、あるいはご自身の余暇を有意義に過ごす機運が高まれば嬉しい」と話した。
鳥取市の取り組みについて山田進太郎D&I財団 COOの石倉秀明氏は「保護者と児童、学校の先生の休みはトレードオフというか、どちらかが休むと一方にしわ寄せが行くような状況にある。これは会社も同じで、子育てをしながら働く親を一部では“子持ち様”などと揶揄し、子を持つ社員が休むことで周囲に負担がかかってギスギスすることも。きっと、『ゴールデンウィークの中日3日は一斉に休みましょう』と定めても一般的な休日に働く職業の人はいるため、すべての問題は解決しないだろう」と指摘。
その上で「個人的には、家庭の状況や学校の先生の都合で普通の日にガンガン休めばいい」と提案した。
「例えば平日の火曜日、水曜日に両親が休みの家庭であれば、火曜日と水曜日のどこかのタイミングで子どもも学校を休んで土日にオンラインで録画された授業を見るなどの方法もあるだろう。平日は絶対に休んじゃいけない、学校の先生もずっと校内にいなくてはいけないという固定観念から離れた方がいい。僕が小学生だった時に住職の担任がいたが、法事の際には自習になり『先生でも用事があったら休んでいいんだな』と受け取っていた。学校の先生も授業のある日に有休を取る、午前中に病院に寄って午後から来るなどが普通にできる社会をどう作るかの方が重要なのでは」
(『ABEMAヒルズ』より)