将棋の藤井聡太叡王(竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖、21)が5月2日に行われた第9期叡王戦五番勝負第3局で、挑戦者の伊藤匠七段(21)に敗れ、シリーズ成績1勝2敗のカド番に追い込まれた。最終盤では猛追を見せたものの、伊藤七段に寄せ切られる結果に。扇子を力なく落とすなど見たことのないほどの落胆の表情に、ABEMAの視聴者からは「どうした聡太」「なんか鳥肌が…」などの声が押し寄せた。
藤井叡王がタイトル戦同一シリーズで初めての連敗を喫した。本局は藤井叡王が先手番で角換わり腰掛け銀を志向。防衛に向けて伊藤七段からリードを奪うべく、得意の戦型で戦いへ臨んだ。前局で初勝利を飾った伊藤七段も想定内だったか、5二金型から仕掛ける工夫を披露し、動じることなく対応。先にリードを奪ったのは挑戦者だった。
難解な中盤戦では、伊藤七段が持ち時間を大量に投入。揺さぶりをかけた藤井叡王が形勢を押し戻したかと見られていた。攻め合いのスピード勝負となった終盤戦は、藤井叡王の“勝ちパターン”になるかと思われたが、混戦の中で誤算が発生。ABEMAの「SHOGI AI」は挑戦者側へ大きく傾くこととなった。
互いに秒読みとなった最終盤では、藤井叡王が頬をパンパンと叩き、明らかに苦しい表情を見せる場面も。解説を務めた中村太地八段(35)は、「藤井叡王がタイトル戦で最も追い込まれている瞬間かもしれないですね。見たことのない姿が表出していてノータイム指しにも凄みを感じますし、目の前に座っていたら恐ろしいものを感じるかもしれません」とコメントし、モニター越しにも鬼気迫るほどの圧力を感じ取っていた様子だった。
勝負勝負、と厳しく迫って粘りに出た藤井叡王だったが、自身の負けを悟ったか、手に持っていた扇子をぽとりと落下。あまりにも悔しそうに苦しみもがく様子に、視聴者からは「悔しさ全開」「どうした聡太」「扇子ポトリはちょっと衝撃的だったな…」「なんか鳥肌が…」「自分に怒ってる」「がっくしやな」「涙出そう」などの声が多数寄せられていた。
絶対王者を相手に冷静に寄せ切った伊藤七段の勝利で、シリーズ成績は藤井叡王の1勝、伊藤七段の2勝に。初タイトルに“王手”をかけた伊藤七段だが、「中盤のバランスの取り方に課題が残った。本局はかなり課題が残る内容だったので、しっかり振り返って(次戦に)臨みたい」とあくまで冷静に一局を振り返っていた。
一方、藤井叡王にとってはタイトル戦同一シリーズで初連敗を喫し、初めてカド番に追い込まれることとなった。それは同時に“八冠”陥落のピンチに立たされたことも意味する。伊藤七段が悲願の初タイトルを手にするのか、藤井叡王が底力を見せつけフルセットに持ち込むのか。大注目の第4局は、5月31日に千葉県柏市の「柏の葉カンファレンスセンター」で行われる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)