【写真・画像】「一緒に寝入ってしまい、起きたら息子の体は冷たく死後硬直が…」 原因不明の“乳幼児突然死症候群” 遺族の苦しみ、必要なケアは 1枚目
【映像】SIDSで亡くなってしまった悠吾くん
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 元気だったはずの赤ちゃんが突然亡くなる「SIDS(乳幼児突然死症候群)」に苦しむ遺族は少なくない。4年半前に生後59日の息子・悠吾くんを亡くしたぬりちゃんさんは、「一緒に逝けばよかったと、何度も思った。周りが『あなたのせいではない』と言ってくれるが、抱っこしている最中だったので、自分を責めた」と話す。

【映像】SIDSで亡くなってしまった悠吾くん

 日本では年間約50人がSIDSで亡くなっている。赤ちゃんのために、遺族のために何ができるのか。『ABEMA Prime』で当事者とともに考えた。

■「一緒に寝入ってしまい、起きたら体が冷たく…」

 「抱っこでないと寝ない子だった。深夜0〜1時ごろに泣き声で起きて、ミルクの時間には早かったので生後1カ月から飲める麦茶を飲ませた後、いわゆるラッコ抱きで寝かしつけた。そのまま寝入ってしまい、朝6時ごろにはっと横を見たら、体は前にあるけど顔が落ちている。直感的に“終わった”と。すでに体は冷たく、死後硬直が始まっていた」

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 当時を振り返るぬりちゃんさん。すぐさま心臓マッサージを行い、搬送先でも処置を行ったが、悠吾くんが戻ってくることはなかった。

 原因不明のまま亡くなるSIDSは、遺族にとって心の整理がとりわけ難しい突然死のひとつだと言われている。生後2〜6カ月に多く、窒息などの事故ではなく、何らかの病因を有する疾患だが、病理学的所見が認められないのが特徴。診断には解剖による精査が必須となる。悠吾くんも朝に死亡確認がされた後、警察での事情聴取、自宅の現場検証を経て、強制的に司法解剖へ回された。2日ほど経って遺体が自宅に戻り、警察から「悪いところはなかった」と告げられたものの、詳しい説明はなかった。

 ぬりちゃんさんは「まだ2カ月にもなっていないのに、メスで切り刻まれるのには抵抗があった」と明かすが、死因については「保育系の大学を出ていたため、“SIDS”の単語は頭の片隅にあった。亡くなった時はそうなんじゃないかと感じていた」という。

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 遺族を悩ませる問題として、夫婦間で悲しみ方に違いが出ることがあるという。中には離婚に至ったり、父親に泣ける場所がなかったりする。次の子を持つ気になれず、もし生まれてもフラッシュバックに悩んだり、他の子を見て「なぜうちの子が」と苦しむことも。周囲から「悲しいだろうけど、次の子を作って忘れなさい」と言われたり、無理に話題を避けられて存在がなかったことにされたり、正しく認知されていないために「不注意」という心無い言葉が投げかけられることもある。

 ぬりちゃんさんも「夫婦間で悲しみに違いがあった」と振り返る。「当時の夫は単身赴任をしていて、息子と接したのは2週間ほど。悲しみの度合いで溝ができ、半年後に離婚に至った」。しかし、「今思えば、同じく子を失った夫に酷だった」「離婚したため、同じお墓に入れない」と考えている。

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 悠吾くんを亡くしてから4年半が経ち、「亡くなって1〜2年は自分を責める時があったが、今はだいぶ落ち着いてきている」と語る。「新しい方と再婚して、第2子を産んで、59日を超えて生かせられていることに安堵している。今の夫も、亡くなった子を自分の子どものように言ってくれる。今回SIDSのリアルを話せる機会をもらってよかった」。

■専門医「3つのリスクはわかっているが、原因ではない。当事者を責めないで」

 こども家庭庁の資料によると、1997年に538件発生していたSIDSは、2002年に285件、2007年に158件、2012年に152件、2017年に77件、2022年に47件と、発生件数は年々減少している。

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 小児科医・新生児科医の今西洋介氏は背景として、「アメリカや世界でも同様の傾向がある。1970〜80年代は、消化や寝付きの良さから『うつぶせが良い』と言われていた。しかし突然死が多いと気づいて、やめるよう20年間訴えて、減少した。SIDSは旧約聖書にも書かれているもの。医療のレベルは違うが、原因不明の突然死は昔からある」と説明する。

 SIDSの予防方法は確立していないながら、こども家庭庁は「1歳になるまでは、寝かせる時はあおむけに」「できるだけ母乳で育てましょう」「たばこをやめましょう」の3点で発症率が低くなるデータがあるとし、「睡眠中の赤ちゃんの死亡を減らしましょう」と呼びかけている。

 今西氏は「原因はわからないが、リスクを上げる要因はわかってきている。ただ、あくまでも全員ではないことには留意が必要。『こういうことをしたから、突然死したんだ』と、周囲が当事者を責めないことが大事だ」と警鐘を鳴らす。

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 子どもの突然死をめぐって、日本の医療現場には課題があるという。決まったガイドラインがなく、医師や相談窓口の地域差・病院差が大きいこと、そして解剖率の低さ。遺族を支える「グリーフケア」では“死の説明”が大切だが、そのためには解剖による原因究明が欠かせない。

 医師としては「悲しんでいるところに解剖をお願いするのは気が引ける」というが、「原因がはっきりわかることはある。後から遺伝的な問題が判明して、両親や兄弟の病気を未然に防げたケースもある。解剖で原因究明することには恩恵がある」と訴える。

 また、グリーフケアが日本国内では不足しているとも指摘。「窓口は9割程度作られているとの調査もある。しかし、多くの相談員は、訓練を受けたことのない普通の自治体職員。そのため、グリーフケアは足りていないとのアンケート結果が出ている」とした。

(『ABEMA Prime』より)

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