天国から地獄へ、地獄から天国へ――。そんなまさかの瞬間が起こった。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」予選Dリーグ第1試合、チーム稲葉 対 チーム佐々木の模様が6月1日に放送された。第6局では、稲葉陽八段(35)がチーム佐々木の久保利明九段(48)を追い込み“勝率99%”となったものの、ラストスパートでまさかの頓死。驚きの結末に、随所から悲鳴が上がった。
チーム稲葉の4-2で迎えた第6局。前局に続き、連勝でチーム勝利を決めるべくリーダーの稲葉八段が担った。対する久保九段の三間飛車に居飛車穴熊で対抗した稲葉八段は、着実に後手を追い込みリードを拡大していた。最終盤に突入後、勝勢の稲葉八段は持ち時間も3分以上を維持。読み抜けのないよう慎重に確認を重ねて後手陣を封じ込めに行った。一方の久保九段は駒不足ながら、持ち前の粘り強さを活かして最後の最後まで逆転の道筋を模索していた。
勝利は目前、ABEMAの「SHOGI AI」も稲葉八段の勝率を99%を表示。慎重に後手玉に迫っていた稲葉八段だったが、ここで悲劇が待ち構えていた。執念の粘りを見せていた久保九段が最後に仕掛けた罠が△9七銀。これに▲7七玉と引いていれば受け無しに追い込み勝利が決まっていたが、稲葉八段の決断は▲9五玉。これには久保九段が△7三角と合わせることができるため、先手は“頓死”となった。
一瞬の出来事に、村中秀史七段(43)も「あれれれれ?あら?あら?大逆転しちゃいました」「頓死…しちゃいましたね…」と大混乱。即時に現実を理解した稲葉八段は、対局中ながらもはや笑うしかない。額に左手を当て天を仰いだ後、投了を告げた。
これには両軍の控室も言葉が出ない。チーム佐々木の控室では伊藤匠七段(21)が「こういう(粘る)ことが大事なんですね…」、佐々木勇気八段(28)は「すごいね…100回に1回(の出来事)…」と驚きの声を漏らすと、チーム稲葉の控室では、同門の藤本渚五段(18)と上野裕寿四段(21)が「いや~」と呆然とした表情を浮かべていた。
波乱の結末に、視聴者も騒然。「事件だ」「こんなことあるんや…」「ちょうそやろw」「珍しい」「ひゃー」「時間あったのに…」「アベトーならでは」「こんなことってあるんだね」「こんなん初めてじゃねえかな」「粘るの大事なんやねー」と大量のコメントが押し寄せることとなった。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)