注目の新リーダーが激闘の末、初戦でうれしい白星発進だ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」予選Aリーグ第2試合、チーム渡辺 対 チーム中村の模様が6月8日に放送された。今大会からリーダーに加わった中村太地八段(35)は、自ら2勝1敗と奮闘すると、佐々木大地七段(29)も2勝1敗、最終第9局は2連敗中だった渡辺和史七段(29)が勝利する劇的な展開で、フルセットの末にスコア5-4で勝利した。中村八段も「みんなで掴んだ勝利」というように、チーム一丸となった戦いで本戦出場に向けて一歩前進した。
中村八段は「リーダーは光栄な立場。それを目指して公式戦も頑張ってきた」と試合前に話したとおり、この大会でリーダーを務めることに強い意欲を燃やしていた。将棋界きっての人格者としても知られる中村八段がドラフトで選んだのは佐々木七段と渡辺和史七段。大会出場経験のあるメンバーを揃え、強敵チーム渡辺とぶつかった。
すると第1局、なんと中村八段が自らトップバッターとして登場した。語るよりも戦う姿で仲間を鼓舞しようと臨んだが、相手は若手ホープの岡部怜央四段(25)。後手番から相掛かりの一戦になると、積極的に仕掛けにいったが、岡部四段の攻めを時間切迫もありうまく受けきれず敗戦、いきなり痛い黒星に。第2局も岡部四段に渡辺和史七段が敗れ、苦しい連敗スタートとなった。
ただ、ここで踏ん張ったのが最近ではタイトル戦にも続けて出場した佐々木七段だ。相手のリーダー渡辺明九段に絶体絶命の状態まで攻め込まれたものの、常に心がける諦めない将棋を徹底したことが奇跡の大逆転勝利を呼ぶことに。ここからガラリと試合の流れが変わっていった。
第4局、中村八段2度目の登場では山崎隆之八段(43)を相手に角換わりの一局。序盤から工夫を凝らした山崎八段に対して、中村八段も苦しみながら活路を見つけ143手で勝利。今大会、自身初勝利でスコアもタイに戻した。
第5局は渡辺和史七段が、渡辺明九段との「渡辺対決」を落とし、第6局も佐々木七段が岡部四段に惜敗。スコア2-4とカド番に追い込まれたが、第7局に負けたばかりの佐々木七段を連投させたことが、再びチーム中村に流れを呼び戻した。山崎八段を相手に大苦戦ながら勝利をもぎ取ると、リーダー中村八段は第8局で3度目の登場。山崎八段とこの試合2度目の対戦になると、先手番から角換わりで早い段階からリード。相手の独特な間合いにも乱れることなく指し進め、99手で快勝し、ついにスコアを4-4のタイに戻した。
つないだバトンは渡辺和史七段がしっかりと受け取った。最終第9局は、渡辺明九段と2度目の「渡辺対決」になったが、先手番から相掛かりに。お互いしっかりと陣形を整える静かな序盤ながら、渡辺和史七段はじわりとリード。渡辺明九段の猛攻をしっかりと受け止め、終盤も攻防手を連発。プレッシャーがかかる一局を制して、見事にチーム中村に勝利をもたらした。
終わってみれば中村八段、佐々木七段が2勝1敗、渡辺和史七段が1勝2敗と、全員が勝利を挙げつつ、誰か1人が突出して勝ったというわけでもない、まさにチーム一丸での勝利。試合後の中村八段は「すごくギリギリの戦い。なんとか勝利を掴むことができてうれしい。みんなで掴んだ勝利でした」と素直に喜び、「予選突破はなんとしても果たしたい。次回はスタートダッシュから頑張りたいです」と意気込みを新たにした。
難敵を下したが、予選突破には次戦・チーム広瀬に勝利もしくは9本勝負で3勝以上が必要という、決して楽ではない条件。新たな戦いもまた3人ががっちりと肩を組んで前進する。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)