2023年の合計特殊出生率は1.20、出生数は72万7200人余りとともに過去最少となる中、東京都が開発に取り組んでいるのがマッチングアプリ。すでにテスト運用が始まっており、夏までに実用化する予定だという。
その内容は一体どのようなものなのか。対象は、東京都内に在住、在勤、在学している18歳以上の独身者。登録には運転免許証、マイナンバーカードなど写真付きの身分証明書、独身証明書、年収の証明と最終学歴などの個人情報が必要になる。さらにオンラインでの入会面談を行って登録が完了。その上でAIが相性を判断し相手を紹介し、出会いにつなげるということだ。
SNSでは「手続きが面倒で不安しかない」「都が母体なのは安心」など賛否さまざまな声があがるが、官製マッチングアプリにはどのような意義があるのか。『ABEMA Prime』で考えた。
都は開発理由の1つとして、「自治体がサービスを提供することで安心感を持っていただき、婚活を始めるきっかけになればと思っている」としている。ものまね芸人・マッチングアプリジャーナリストのこいでまほ氏は「マッチングアプリはすごくカジュアルな印象で、『怖い』という意見も多い中、安心なものを作るのはすばらしい」と語る。
44歳でマッチングアプリに挑戦した東京都立大学大学院准教授の高橋勅徳氏は「結婚相談所内のマッチングシステムと同じ仕組みだが、それよりもかなり安い金額でサービスを受けられる。そこに一定の需要はあると思う」と評価。
都は婚活事業に2年で5億円の予算をかけてきた。今回のアプリは有料化も検討中だという。「民間がこれだけ競争していて、女性側はほぼ無料で使える環境の中で、登録の手間と課金でかなり脱落するのではないか。不満というより、不安に思う点だ」と指摘する。
こいで氏は「15個項目の入力が必須なんて当たり前のこと。これを面倒くさいと思ってしまう人たちは向いていないと思う」としつつ、「所得証明によって、やはり男性は年収を見られる。他のアプリ同様、“結局、財力か”となってしまうのではないか」との懸念を示した。
自治体が進める婚活サービスとして、埼玉県が2018年に開設した「恋たま」(2年で1万6000円)は、累計約2万人が登録し、458組が成婚(2024年2月末現在)。京都府が2023年に開設した「きょう婚ナビ」(3000円)は所得証明が必要なく、1年で2000人超が登録、半年で約100組が成立している。
リディラバ代表の安部敏樹氏は「統計データなどを見比べても、結婚は間違いなく所得と連動していて、特に男性はその傾向が強い。そう考えると、お金を投じるところはマッチングアプリなのか、それとも非正規雇用の問題を解決して所得を上げることなのか、公教育のレベルを上げて塾などにお金を払う必要をなくし、2人目、3人目を考えやすくすることなのか。そういったことのほうが、少子化対策のコストパフォーマンスとしてはいいのではないか」とコメント。
一方で、マッチングアプリの仕組みに着目。「“課金するユーザーの数×どれだけ長く続けるか”、つまりライフタイムバリューの最大化という話。課金ユーザーが簡単にマッチして退会していくと、ビジネスとしてはうまくない。普通に考えると、マッチングして結婚することを事業のゴールにはしづらいが、そこを行政がやることによって異なるインセンティブが働き、結婚を最大化する可能性がある」と語る。
近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「結婚は女性の就業が難しい昭和の時代において、生活の安定を求めて、経済的なユニットを作る意味合いが大きかった。しかし1990年代以降、女性も自分で稼げるようになり、そのユニットを形成する必要性が低くなってきている。逆に言えば、“私が稼ぐから優しく世話してくれる男性がいい”という女性も出てくるわけで、所得証明の話はお互い様だ。こういう選択肢が増えるのは良いことだが、悪いのは結婚を餌に食い荒らしている人。東京都が真面目な目的でやるようなものが出てくるほうが、世の中的にはいいと思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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