「女子トイレに男児を連れて入ってきた…」「銭湯の女湯に男児が入ってきた。すごく嫌」(Xの投稿)
母親が男児を女子トイレや銭湯などに一緒に連れていく光景が見られる。その行為に対して「やめてほしい」と考える人と「別にそれくらい良いじゃないか」という人がSNS上でしばしば対立している。なぜ、この問題は炎上するのか?
この対立について、明星大学心理学部教授で臨床心理士/公認心理師の藤井靖氏は「自分に男児がおり、一緒に行かないと心配だという『現実論』と、性別の観点から年齢がどうあれ女性のいる場に男性が入るのはまずいのではないかという『感情論』が対立している。男児を持つ母親は(男湯などで我が子が)男性から何か性的な加害を受ける“もしかして”を懸念している。一方で女性側は、男児がいることに対する気持ち悪さや違和感、覗かれるなどの行為があったら困るという“もしかして”を懸念している」と説明。
幼い男の子を持つ母親としては、男子トイレに一人で行かせるのは怖いという思いもある。それでは、常識的にはいつまで一緒に連れていくことが許されるのか?
藤井靖氏は「難しいところだが、1歳2歳の歩き始めの頃でも、男性として認知すれば、目線だったり“女性の体を表すような言葉”などがあれば反対派は納得できないだろう」と述べた。
国は2020年に混浴に関するトラブル等の防止のため「公衆浴場における衛生等管理要領」を改正し、混浴制限年齢を「10歳以上不可」から「7歳以上不可」に引き下げた。しかし7歳未満であっても一緒に女湯に入る母親に対する批判は続いている。
さらに、産婦人科に男児を連れていくことにも批判がある。
これに対し藤井氏は「産婦人科に男児が来ることに嫌悪感を持つ人は、ある種のミサンドリー(男性嫌悪)が様々な価値基準に表れている。SNSにおいて、男性に対する嫌悪感を持つ人が交流共感し合うことで意見が増幅する背景もある」と説明した。
トイレ、銭湯、産婦人科などに幼い男の子を連れていきたい母親と、不快に思う女性。藤井氏は、この対立を解決するためにやれることがあると話す。
「ハード面で、例えばトイレの個室の上下や扉と壁の間の隙間を塞ぐなど、少しでも嫌悪感を持つ人を減らす。全ての人に対応するのは難しいが、数を減らしていくのが現実的な社会的対策だ」
この問題について、ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介氏は「ネット上では極端と極端の意見が先鋭化してぶつかり合っているように見えるが、実際にはその中間の穏当な意見が多くを占める。未就学児が母親と行動することを認めなければ、小さい子がいる母親はどこにも出かけられない。極端な意見だけを見ていると、当たり前のことが見過ごされてしまう」と指摘。
さらに、「トイレ、産婦人科、公衆浴場のそれぞれでも女性の受け止めは異なり、一緒くたに論じられない部分もある。産婦人科はいいけど、裸を見られるお風呂は嫌だという人もいるだろう。単に対立を煽るのではなく、丁寧な議論が必要だ」との見解を示した。
(『ABEMAヒルズ』より)
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