Mrs. GREEN APPLEの新曲「コロンブス」のミュージックビデオが「人種差別的」などの批判を受けて公開を停止した。
【映像】ミセスMV なぜ止められなかった? 表現の自由との兼ね合いは?
6月12日公開のミュージックビデオ「コロンブス」は、コロンブスに扮した3人がある島の住宅で類人猿と出会い、乗馬や音楽を教えたり、人力車を引かせたりする内容であったが、「人種差別的」などと批判が相次いだ。
これを受け、公式サイトでは「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現が含まれていた」と謝罪し、ミュージックビデオの公開を停止。
テーマソングに採用した日本コカ・コーラは「ミュージックビデオの制作には関わっておらず、内容も把握しておりませんでした」「いかなる差別も容認しておらず、今回事態を遺憾に受け止めております」として、楽曲を使用した広告素材の放映を停止した。
そして、この事態を受けてMrs. GREEN APPLEの大森元貴さんが以下の声明を発表した。
「類人猿が登場することに関しては差別的な表現に見えてしまう恐れがあるという懸念を当初から感じておりましたが類人猿を人に見立てたなどの意図は全く無くただただ年代の異なる生命がホームパーティーをするというイメージをしておりました。しかしながら、意図とは異なる伝わり方もするかもしれないと思いスタッフと確認し合い事前に特殊メイクのニュアンス衣装演じ方のフォロー監修をしていたつもりではおりましたがそもそもの大きな題材として不快な思いをされた方に深くお詫び申し上げます(抜粋)」
ノンフィクションライターの石戸諭氏は「今の世界的な潮流においては、コロンブスの新大陸発見の物語は必ずしも“偉人譚”とはならない。白人が黒人をまるで動物のように扱ってきた奴隷制の歴史があらためて問い直されている真っ只中にあり、サブカルチャーの世界においても歴史観の問い直しは無視できないところにある」と説明。
さらに「歴史の問題はセンシティブである」として、実例を挙げた。
「去年日本でも、実写コメディ映画『バービー』と「原爆の父」として知られるロバート・オッペンハイマーをモデルにした伝記映画『オッペンハイマー』で問題が起きたことを思い出してほしい。一般ユーザーが作成した、バービーと原爆のきのこ雲をかけ合わせた画像に映画『バービー』の米国公式アカウントが好意的なリプライをつけたことを受け、炎上して、結果的に『オッペンハイマー』の公開はかなり遅れることになった。『オッペンハイマー』という作品に全く落ち度はなかったが、このような事態になった」
これらの背景を受け、石戸氏は「あまりにも無邪気に題材として使ってしまった点は批判されてしかるべき」と指摘した。
では、表現の自由との兼ね合いはどうなるのか?
石戸氏は「楽しげなホームパーティーというコンセプト自体は悪いわけではない。何を作ろうと基本的には自由だが、コンセプト・意図・文脈を意識することは大事だ。今の時代においては『この表現・登場人物・演出・衣装・小道具に至るまで全てチョイスは妥当なのかどうか』を説明できなければいけない。細部が大切で『なんとなくカッコいいから』では通用しない」と説明した。
複数の大人が関わっていたはずの作品、なぜ止められなかったのか?
石戸氏は「大森さんが『懸念を当初から感じていた』とコメントしているが、懸念を感じた以上、当人たちも、周りも止めるべきだろう。この手の話でよくあるのが『ここまで作ったからもう止められない』『なんとなくおかしいとは思ったが言うタイミングを逸してしまった』などの小さなダンマリの積み重ねだ。違和感を口にせず、懸念を解消しないことで大きな問題に発展してしまうため、個人的には小さな段階で芽を摘んでおくことが大事だったと思う」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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