残り時間数秒の中では回避不能とも言える、会心の一撃が決まった。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」予選Bリーグ第2試合、チーム永瀬 対 チーム斎藤の模様が6月15日に放送された。フルセットにもつれ込んだ第9局、チーム永瀬のエース・増田康宏八段(26)は、相手リーダー斎藤慎太郎八段(31)と対戦。息詰まる最終盤で放った“王手飛車”の一手に、チームメイトもファンも興奮することとなった。
増田八段は、リーダー永瀬拓矢九段(31)から毎年ドラフト会議で1巡目指名を受け続ける右腕のような存在。単に勝率が高いというだけではなく、ともに戦法を考えるという意味でも迷うことなく指名する、必須のパートナーとなっている。増田八段も期待に応えるように毎年、高勝率をマーク。今回はレジェンド森内俊之九段(53)を加えた3人組で、優勝を狙う布陣ができていた。ところが増田八段は第1局、三枚堂達也七段(30)との一局で勝勢のところから大逆転負けを喫すると、第6局ではまたも三枚堂七段に敗戦。よもやの2連敗で、いいところがなかった。
それでも永瀬九段の3連勝などもあり、試合はスコア4-4のフルセットに。増田八段にこの日3度目の出番が回ってくると、相手のリーダー斎藤八段と、勝った方がチームの勝利を手にする大一番に臨んだ。
増田八段の先手番で始まると、戦型は相掛かりに。お互い右玉模様で陣形を整えると、中盤までは完全に互角。そこから斎藤八段から攻める展開にはなったものの、好んで攻めているわけでもなく、解説・勝又清和七段(55)も「(後手が)攻めさせられている気がする」という展開で進んだ。
増田八段、会心の一撃が決まったのは終盤だ。83手目、▲5四角と王手をかけたが、これが実は罠。受け方を間違えると、6五の地点にいた桂馬を跳ねて成り込み王手をかけつつ、角道が開くことで斎藤八段の飛車を捕獲できるという“王手飛車”だ。ところが、▲5四角を打たれた時、斎藤八段の持ち時間はわずかに残り8秒。7四にいた銀を6三に引けば難を逃れたが、逆に5二の銀を6三に上がってしまったことで、王手飛車の筋が通ってしまった。
これには控室にいた三枚堂達也七段(30)が「えー!」、高見泰地七段(30)も「マジか…」と絶句。逆に永瀬九段は「おー、それは!よかった!」と大喜びになった。さらにファンも「そんな手があったのか」「激痛」「飛車抜き」と大盛り上がり。さすがに勝負どころでの王手飛車が決まったことは大きく、その後は斎藤八段が粘ったものの増田八段が快勝。チームの勝利をもぎ取り、笑顔を取り戻していた。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)