「おはようございます。いよいよ今日の9時から手術が始まります」
福岡県議の佐々木允さんは4年前にドナーとして骨髄採取の手術を受けた。これはその直前に撮影されたものだ。
白血病をはじめとする血液疾患のため、骨髄移植が必要な患者と骨髄を提供するドナー。移植を待つ患者は年間およそ2000人に上る一方で、適合するドナーは血縁関係にない場合、数百から数万人に1人と言われている。
ドナー登録は献血センターなどで簡単にできるが、患者との型がマッチングしても辞退者が後を絶たない。その理由は…
「仕事を休めないなどの理由で辞退される方が非常に多い。検査や入院が平日に必要となり、骨髄提供の場合、3泊4日程度の入院が必要になる」(日本骨髄バンク・広報渉外部 鈴木慶太さん)
仕事の都合がつかないための辞退。
日本骨髄バンクによると、2023年度にマッチングしたドナーのうち、一番多かった辞退理由は「仕事を休めないから」。約4人に1人の割合だという。
これに対し、日本骨髄バンクの鈴木さんは「こうした現実があることは事前に患者さんに伝えているが、骨髄移植に懸けて待っているため、断られて悲しむ患者さんもいる」と実情を語った。
実際に骨髄を提供した佐々木さんも、一番大変だったのは仕事の都合をつけることだったと話す。
「手術自体の痛みや苦労はそれほどなかった。問題は手術のために仕事を休むこと。平日の指定の日に行く必要があったのだ」
何とか仕事の都合をつけて臨んだ骨髄採取。全身麻酔をかけられ、太い針を腰に何度も刺した。
佐々木さんは「麻酔が入ると言われて、そのまま寝て、気がついたら終わっていた。腰の鈍痛以外はほとんど感じなかった」と振り返る。
家族や職場など、理解ある周囲に支えられながら採取を終えた佐々木さん。後日、提供された患者から手紙が届いたという。
「おかげさまで退院することができました。骨髄の提供をするという大きな決断に感謝しています」(届いた手紙の概要)
佐々木さんは「患者さんにとって骨髄液は生死を決める重要なものだ。患者さんが回復してくれたことが分かってとても嬉しかった。今も元気でいてくれたらいい」と話した。
命を救うため骨髄ドナーになることを仕事のせいで諦める社会であってほしくない。そこで日本骨髄バンクは「ドナー休暇制度」の導入を企業に呼び掛けた。
検査や入院による欠勤を有給休暇ではなく特別休暇として扱う制度だ。現在導入している会社は約800社で、会社として社会貢献していることがアピールできるほか、社員の安心にも繋がると考えられている。
日本骨髄バンクの鈴木さんも「社員の方は会社の都合で休めないことが負担になるが、制度があることで周囲の理解が得られやすく、安心して提供に進むことができる」と説明。
また、仕事を休むことで気になるのが賃金のカット。仕事を休んでドナーになった佐々木さんは自身の経験をもとに、それまで福岡県内の一部のみで行われていたドナー提供後の助成金制度を県内全域で行うよう議会で提案した。
一方、自治体が主体となるため、全く助成しない地域もあり格差が生じている。この制度について佐々木さんは「国が一律的に支援することが必要」と強調する。
「健康な人が全身麻酔で骨髄液を提供するのは大きな仕事だ。リスクを抱えるドナーに対して最大限の支援を提供するのは、国がその役割を担うべきだろう」
現在、ドナーは50万人以上いるが年間の移植は1000件程度。ドナーは3〜4カ月の間に10日間程度の検査や入院が必要であり、ドナー候補者として選ばれても仕事の都合がつかず辞退する人が多いという。
自身もドナー登録をしているという教育経済学を専門とする慶應義塾大学の中室牧子教授は「経済学ではドナー登録や献血、ゴミ拾いなどは『向社会的な行動』という『自分のためではなく社会の役に立ちたいという気持ち』がもとになっている行動であるため、増やしていく難易度は高い」として、“失敗例”を挙げた。
「以前、アメリカや欧州の国々では『登録者にお金を払えばいいのでは?』と考え、ドナー登録や献血をしてくれた方に金銭的なインセンティブを与えたところ、かえってドナー登録者や献血をする人が減ってしまったという研究がある。おそらく、向社会的な、利他的な気持ちがお金を支払われることによって冷めてしまったのだろう」
では、骨髄移植によって救われる命を増やすにはどうすればいいのか?
中室教授は「まず、ドナーになった人がちゃんと移植できるように休暇制度などを整えることが挙げられる。もう一つはドナーを増やすことだが、アメリカで行われた印象的な研究を紹介したい。ここでも金銭的なインセンティブを出したのだが『このお支払いを今後さらにドナーを増やすための活動、あるいは病気の人を救うための寄付にします』などと伝えると特に女性を中心にドナーが増えた」と説明。
最後に「向社会的な気持ちを刺激したり、高めるような政策を日本も実行できればいい」と希望を語った。
(『ABEMAヒルズ』より)
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