6月は、東京都が定める「就職差別解消促進月間」。そこで都が発表した、就職面接に関する動画が賛否両論を呼んでいる。面接官が「ご兄弟はいるの?尊敬する人とか」と問うと、助手が「その質問、就職差別としてとらえられる可能性があります」と静止。面接官は「私も昔、大先輩から同じ質問を受けた」と反論するが、「応募者の資質、能力、適性と関係のない事柄や本人の責任ではない事項の質問は就職差別に該当します」と指摘される——。
東京都は、面接などの採用時に就職差別になる可能性がある質問として、本籍や出生地、家族の職業や地位、学歴など「本人に責任のない事項」、宗教や支持政党、尊敬する人物など「思想信条など、本来自由であるべき事項」などを挙げている。この動画にSNSでは肯定的意見がある一方、「なんでも差別にするとコミュニケーションがとれない」など疑問の声が圧倒的に多かった。
採用や就職における差別の境界線について、『ABEMA Prime』で考えた。
「出身地は?」「同居している人は?」「将来どんな人になりたい?」「愛読書は?」、このうちどれがNG質問にあたるのか。企業の雇用問題などに詳しいベリーベスト法律事務所の齊田貴士弁護士は、「全部NGだ」と説明する。「東京都の動画と同じく、本人に責任がない事項であり、採用可否の理由になってはいけない」。
時事YouTuberのたかまつななは、NHKのディレクター時代の経験から、「あえて地方から採用して、多様性を担保していた。出身地を採用基準にしないことで、“蓋を開けたら東京の人ばかりだった”みたいな、多様性がなくなる可能性があるのではないか」と疑問を呈する。
これに齊田氏は、「面接で聞くことが、能力や適性を判断する上でふさわしくないということ。出身地等の情報は面接以前の履歴書でカバーでき、特に不都合は生じないだろう」と答えた。
職業安定法の第5条5では、「労働者の募集を行う者は、その業務の目的の達成に必要な範囲内で目的を明らかにして求職者等の個人情報を収集し、使用しなければならない」(抜粋)とされている。同居の人の有無も「求人への適性を判断する上では関係がなく、不適切な質問とされている」と齊田氏。
「将来どんな人になりたい?」については、判断が難しい質問だ。「社内業務についてであればOKだが、個人の思想信条の自由に関わる可能性がある。あくまで採用面接の場は、適性や能力があるのかを問う質問に限るべきというのが、東京都や厚生労働省の考えだ」。
たかまつが「反対に『どのようなキャリアを積みたいか』を知ることで、企業との適性や成長の可能性を判断することも大切なのではないか」と問うと、齊田氏は同意しつつ、「そこはケースバイケースで、質問の内容によって工夫しながら情報収集すべき」と語った。
齊田氏によると、不適切質問で会社が負うリスクは「違法」「イメージダウン」の2つ。前者は、職業安定法違反や、厚労省からの指導・改善命令があり、懲役6カ月以下もしくは30万円以下の罰金の可能性も考えられるという。後者は、求職者によるSNSへの書き込みによって、従業員のモチベーションが低下する、取引先の信用を喪失する、などだ。
では反対に、しても問題ない質問はどういうものなのか。「応募動機は?」「就職後にやりたい・目指したいことは?」「目指すべき仕事人としてのイメージは?」「これまでの経歴(職歴)実績は?」「自社のイメージは?」など、生い立ちや嗜好に無関係で、採用試験の目的に合致するものや、知る必要があることであれば問題ないという。
また、齊田氏が「必ず確認すべき質問」としているのが、採用後に詐称がわかりトラブルになる「資格や経歴」。また「犯罪歴」は、「質問されない限り」答える必要がないため、提出書類に「賞罰」欄を設けるか、面接時に質問する必要があるとしている。「採用後に就業規則違反などのトラブルになりやすいため、面接の段階でしっかり企業として確認すべきだ」とした。(『ABEMA Prime』より)
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