何度殴られても、ダウンを奪われてもゾンビのように立ち向かってくる激闘派ファイターの姿に「もう止めて」とファン困惑。ならばと意識を刈り取って試合を決めた“空手仕込み”の左ハイによる戦慄のKOシーンには「やばい倒れ方」「倒れ方がアニメ」「糸が切れた人形のよう」など驚きの声が広がった。
6月23日に後楽園ホールで開催された「Krush.162」。鈴木翔也(OGUNI-GYM)と斎藤祐斗(JK TRIBE)の対戦は、3ラウンドまでに2度のダウンを奪っていた斎藤が、パンチの攻防から一転して“空手仕込み”のハイキックを振り抜いて衝撃KO勝利。緊急参戦、さらには一階級上という不利な相手との試合を見事に制すると力強い“残心”も決めて見せた。
鈴木の対戦相手の負傷により急きょ斎藤が代打出場となった試合。昨年6月以来じつに1年ぶりのKrushのリング、しかも1階級上のライト級への漢気参戦となった斎藤は、8歳から25歳まで新極真空手を習って全日本大会高1軽量級の部で準優勝を果たした実力者。対する鈴木は今年1月の堀井翼戦で連敗から脱出。カード変更のアクシデントはあったものの、連勝で弾みをつけたい重要な試合。
不利な条件の斎藤だったが、試合は斎藤がその剛腕ぶりをいかんなく発揮する展開となった。1ラウンド、鈴木の強いプレッシャーに対し、斎藤は下がりながらローやミドルで距離を探る。パワーでは鈴木有利の流れのなか、斎藤がハイキックからボディショット、さらに相手をロープ際に追い詰めての連打。左を何度も顔面に当て、最後は左フックをカウンターで振り抜いて最初のダウンを奪う。
「鈴木はダウンしても回復の早いタフな選手」と実況解説が話したとおり、2ラウンドに入ると鈴木は何事もなかったように前に出る。近距離ではアッパーぎみの連打で対抗するが、斎藤も打ち合いに応戦して空手仕込みハイキック、再びロープ際でパンチの連打で鈴木をグラつかせスタンディングで2度目のダウンを奪う。
被弾を重ねつつも決して心折れず、前に出続ける鈴木に解説陣からは「倒れませんね」と驚きの声。ファンからも「まるでゾンビ」などの声が上がる。解説の石川直生が「こういう場面から逆転を見せてきたのが鈴木選手」と逆転劇に期待を寄せたが、その後も斎藤の連打を貰い続ける状況に「もう止めて」「もう駄目」とファンからは心配と困惑の声が聞こえ始めるなか、解説を務めた元プロボクサーで第40代日本スーパーライト級王者の細川バレンタインは「(鈴木選手は)全部が頑丈」と評価しつつも「いつもこんな戦いですか? 非常に健康に悪いですね」苦笑いを浮かべた。
最終3ラウンドは近距離での打ち合い。鈴木が連打で先制するが、斎藤も打ち負けずに反撃。さらに斎藤はローキックで削りながら左のフックからパンチを連続でヒットさせる。ロープを背負ったまま防戦一方ながら倒れる気配のない鈴木に対して、斎藤は一転して左ハイを一閃。予期せぬ一撃をまともに被弾した鈴木は腰からグニャリと砕けて前のめり。衝撃的なダウンシーンをみて続行不可能と判断したレフェリーが即試合を止めた。ダメージの蓄積から糸が切れた人形のように倒れ込むダウンに「やばい倒れ方」「倒れ方がアニメみたい」「意識飛びすぎだよな」「前に倒れるのはまずいな」といった驚きの声が相次いだ。
打たれ強い激闘派というイメージで、壮絶な打ち合いから逆転劇を演出してきた鈴木だが、解説の細川からは同業ファイターからの視点で「ちょっと僕は心配ですよ。頑丈なのはわかるけれど、何回か意識飛びながら試合してると思うんですよ…キックボクシングを辞めてからも(人生が)あるから、もうちょっと身体を労った方がいいよ」と本音のコメント。この発言に「ホント心配だよね」「これは正しい」「バレンやさしいな」と共感の声が続いた。