【写真・画像】“分断浮き彫り”の討論会 バイデン氏VSトランプ氏の直接対決に専門家「バイデン氏が劣勢だったとは捉えていない」 1枚目
【映像】「ポルノ女優とセックスはしていません」討論会でのトランプ氏の発言
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 秋の米大統領選挙で再戦を目指すバイデン氏と返り咲きを狙うトランプ氏による第一回のテレビ討論会が行われ、90分の論戦が交わされた。

【映像】「ポルノ女優とセックスはしていません」討論会でのトランプ氏の発言

 今回の討論会における軍配はどちらに上がったのか? アメリカ現代政治外交が専門の前嶋和弘教授に聞いた。

 まず、前嶋教授は討論会全体の印象について「大統領選挙の討論会はその年の大統領選挙のシンボルであり、歴史に残る瞬間のはずだが、両者の話し合いはすれ違ってばかりで、『分断』という印象を強く受けた。全体を通して、トランプ氏が話したことに対して、バイデン氏が多少間を置いて対応するという場面が多かったため、“バイデン氏が負けた”ように映る人もいるかもしれないが、民主党支持者からすればトランプ氏の発言は嘘ばかりでどう対応しているのか?と感じたはず。トランプ氏が公正だったかどうかは何とも言えない状況で、個人的にはバイデン氏が劣勢だったとは捉えていない」と述べた。

 今回アメリカのCNNで放送されたテレビ討論会は以下の条件で行われた。

 参加資格:「4つの世論調査で15%以上の支持率など」(満たすのは、バイデン氏とトランプ氏のみ)

 時間・観客:90分間、無観客

 演壇の位置:コイントスで決定

 その他:討論会中は発言者以外のマイクはオフ/小道具や事前に書き込んだメモの持ち込み禁止/休憩中も選挙スタッフとの交流禁止

 「討論会中の発言者以外のマイクオフ」という新しい試みについて前嶋教授は「相手が話してる時にトランプ氏が被せて発言してしまうという場面は2016、2020年の討論会で何度もあったため、バイデン氏としてはやりやすかったかもしれない。被せる形での発言ができない中、トランプ氏の発言に対してバイデン氏はがっかりしたような表情を見せ、逆にバイデン氏が発言中にトランプ氏は呆れたり怒ったりしている様子が印象的。トランプ氏が信ぴょう性の低いデータを話すのに対し、バイデン氏があきれていて、それが“驚く老人”のようにも見えたかもしれない」と印象を語った。

 こうしてトランプ氏の繰り出す情報の信ぴょう性について、ファクトチェックすれば、「トランプ氏は候補者としてふさわしくない」と考える共和党支持者も出てくるのではないか?

 だが、前嶋教授はその可能性は低いと話す。

 「そもそもファクトチェックが偏っているという見方をする。支持者は聞きたいものを聞き、見たいものを見るというのが今のアメリカだ」

 経済政策について、バイデン氏が「雇用を生み出し失業率を改善した」とアピールしたのに対し、トランプ氏は「私の政権時代、経済は絶好調だった」と述べている。

 前嶋教授は「トランプ政権時、経済は途中までは良かったがコロナ禍となり、最後は悪くなった。そのため、“絶好調”というのは正しくないだろう。バイデン氏が雇用を生み出し失業率を改善したのもその通りなのだが、あくまで自分の支持層向けへのメッセージだ。民主党支持者からすれば『そうだ! 失業率は60年ぶりの良さだ』と見えても、共和党支持者は『いや、このインフレはバイデンがもたらしたんだ。トランプ時代は経済が絶好調だったんだ』となり、ここでもすれ違っている」と解説した。

 続いてウクライナ情勢について、 バイデン大統領は「世界50の国から支持を得た」と主張したのに対し、トランプ氏は「ロシア・ウクライナ問題はすぐに解決させる」と宣言している。

 前嶋教授は「バイデン氏は『世界中が応援しているんだ。ウクライナが負けたら民主主義が負けるんだ。我々はこれを支援する。悪いのはロシアなんだ』と強く訴えている。一方、トランプ氏は『いや、これは早く解決させるんだ。そのために、ウクライナには(東部などを)妥協させるんだ。アメリカはお金をどんどん出しており、大きな負担なんだ』と。実際、ウクライナへの支援疲れについては去年の夏頃から共和党支持者の半分以上は『ウクライナはもういいよ』という心理になっており、民主党支持者も迷っているため、バイデン氏としては少し分が悪い。バイデン氏の『世界のために支援する。プーチンは戦争犯罪者なんだ』という主張は対世界としては納得できるところだが、対国内としては少し厳しい」と説明した。

 中東情勢について、バイデン氏は「ハマスに停戦を受け入れさせる」と主張し、トランプ氏は「イスラエルに最後までやらせるべき」と主張している。

 前嶋教授は「現在、停戦案を出しているがハマスの反応がないため、ハマス側に停戦を受け入れされる、とバイデン氏は述べている。対して、トランプ氏は明確にイスラエルを支持しており『イスラエルに最後までやらせるべき。バイデン大統領はむしろパレスチナ寄りだ』と非難しているのだ。このトランプ氏の主張は共和党支持者の中でも、特に『聖書にあの土地はユダヤ人が持つべきだと書いてある』と信じているキリスト教福音派の人たちに大いに刺さる」と述べた。

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 討論会の前、前嶋教授は「バイデン氏がフリーズする(固まってしまう)かどうかがポイントと話していた。

 討論会を終えて、この点については「ほんのちょっと言葉が止まるところがあったが全体としては大丈夫だと思う。とはいえ、声がかすれたり、あるいはトランプ氏の発言に対して、『何を言い出すんだ』という表情を見せた瞬間が多少あったため、これがメディアで報じられることで、実際に見た印象よりも増幅されているところはあるだろう。そうした場面で共和党側がCMを作ったりすることも考えられる」と解説。

 今回の討論会に勝敗をつけるとするとどうなるか?

 前嶋教授は「やはり五分五分だと思う。とはいえ、つっかえた部分の切り取りを考慮すると、ほんのわずかにトランプ有利という見方もあるかもしれない。次に、秋の選挙の結果についてだが、こちらもなかなか決まるものではない。アメリカの大統領選の最後は無党派の“あまり選挙に行きたくない人たち”を個別訪問で説得して、選挙に連れていくといったところで決まってくる。非常に拮抗しており、まだまだ五分五分だ」との見解を示した。

(『ABEMAヒルズ』より)

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