若き才能が、また1つ輝いた瞬間だ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」予選Dリーグ第2試合、チーム稲葉 対 エントリーチームの模様が6月29日に放送された。チーム稲葉の藤本渚五段(18)は苦戦続きながら個人3連勝を達成。試合後には「ようやく念願の3連勝ができて、嬉しい気持ちでいっぱいです」と笑顔になった。
2023年度は51勝で全棋士トップタイ、.850は2位と輝かしい成績を残した藤本五段は、藤井聡太竜王・名人(王位、王座、棋王、王将、棋聖、21)や、伊藤匠叡王(21)に続き、将来の将棋界を背負うような活躍が期待されている10代棋士。いずれはタイトル戦に登場することは間違いなしというほど、周囲の棋士からも高く評価されている逸材だ。
同門の先輩・稲葉陽八段(35)からドラフト1巡目指名を受けてチーム入り。本戦出場をかけた2戦目は、第2局から登場した。先手番から居飛車の急戦を選び、後手の冨田誠也五段(28)が中飛車にするところ、なかなかどちらにも主導権が行かない痺れる序中盤を過ごした。それでも細かな部分でポイントを稼ぎ、じわじわと藤本五段が差をつけ始めると、最終盤の寄せ合いに負けることなく131手で勝利。最後は指運かというせめぎ合いだったが、貴重な白星を手に入れた。
するとチーム稲葉は得意の連投で、藤本五段が第3局にも登場。井出隼平五段(33)の四間飛車、さらに三間飛車と飛車筋を変える攻めに手こずり、序盤から劣勢を感じるような展開になったが、目まぐるしい桂馬の打ち合いから最後は後手だった藤本五段が156手で勝利。個人2連勝を飾った。
若者に勢いを与えてしまっては、止まるはずもない。3度目の登場は第6局。またも井出五段との対戦になったが、ここで後手の井出五段は角交換型振り飛車(向かい飛車)を採用。「ストップ・藤本」の秘策に苦しんだが、慌てることはなかった。時間は使いつつ、決定的に悪くはならないように守備に努め、相手のミスが出たところを逃さずに一気呵成に攻めるという指し回し。豊富な持ち駒を活かして、あっという間に後手玉を寄せ切ってしまった。
本人からすれば押され気味の序盤、中盤が続く3局だっただけに、3連勝後も晴れやかというよりホッとした、むしろ疲労の色も濃かったが残した結果は最高なもの。この3つの白星があったからこそ、チーム稲葉も本戦出場を決められた。試合後は「3連敗でもおかしくない内容なので、そこはよくない。反省したいと思います」と謙虚に語った18歳。大注目の現役最年少は、まだまだ伸びしろだらけだ。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)