勝利目前の仲間にかけたのは、伝説級の名ゼリフだった。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」予選Dリーグ第2試合、チーム稲葉 対 エントリーチームの模様が6月29日に放送された。第7局、チーム稲葉の上野裕寿四段(21)とエントリーチームの冨田誠也五段(28)が大熱戦。最終盤、冨田五段が勝利目前のところ、チームメイトの井出隼平五段(33)がモニターに向かって全力応援。かつて先輩が発して将棋界の中でも大きく話題になったフレーズを用いたことで、ファンも大きく盛り上がることになった。
対局は先手・冨田五段が中飛車、後手・上野四段が居飛車の対抗形からスタート。冨田四段が三間飛車に振り直すと、それを受けて上野四段も飛車筋を変更。再度、冨田四段が中飛車にすると、さらに上野四段も飛車を5筋に向かい合わせるように、じりじりとした鍔迫り合いが続いた。
中盤、一時は後手がやや有利かと思われる局面もあったが、冨田五段も冴えを見せて挽回。終盤の入り口ではABEMAの将棋ソフト「SHOGI AI」でも冨田五段の勝率が70%を超えていた。
最終盤に入り、いよいよ冨田五段の勝勢がはっきりしたと思われたが、寄せに手こずり一瞬、形勢が上野四段に振れる場面も。ただ、その後の応手がうまくいかず、再度先手が必勝となり、ついには上野玉に即詰みが生じた。
ただ超早指しのフィッシャールールは、ここからが大変。1手の間違いで大逆転負けも日常茶飯事というのは、将棋界でも有名だ。勝利目前といった場面でエントリーチームの控室もテンションアップ。リーダー大橋貴洸七段(31)が思わず「落ち着いて」とモニターに向けて呼びかけると、続いて井出五段は「お茶飲め、お茶。これはお茶飲めだね」。さらに「こういう時にお茶飲むんだ」と笑い始めた。
この「お茶飲め」は、かつて渡辺明九段(40)が過去の同大会でチームメイトに落ち着いて指すようにメッセージを送ったところから将棋界でも大きな話題になったもの。すっかり有名になったセリフだけにファンからも「ナベの名言」「渡辺先生被弾」「ナベのマネwww」「お茶飲めデター」と盛り上がっていた。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)