履歴書や面接内容に間違いがないかをチェックする株式会社企業サービスの調査によると、中途採用で多いトラブル第1位が「経歴詐称」。しかもこの数年、増加傾向だという。驚くのはその中身で、同社の吉本哲雄氏は「勤続12、13年、部長職という申告だったが、調べてみると実際はわずか3カ月、しかも試用期間で退職になっていた。辞めたのは9年前で、それ以降今まではアルバイトを転々としていた人がいた」と話す。
実際に経歴詐称をしてしまったというくろしゃちさんは、悪いことだと認識しつつ、次のような言い分を述べる。「会社側も雇われる側も、入ったら話が違うということはよくある。会社側は“年間休日が何日”“ボーナスは毎年出る”、就職する側も初心者ながら“できます!”と、ある意味で嘘をつくわけだ。お互いに不確定性のリスクを負っている」。
また、嘘かどうかは重要な論点ではないという。「結果、ビジネスとして約束を果たせるかが重要だ」。くろしゃちさんはその後、結果をきちんと出し、派遣社員から正社員になったという。
街中で取材しても、「就活で話をちょっと盛った」「同僚が有名大学を出たと書いて採用されていたが、結果を出せず、学校に連絡したら“在籍がない”ということで退職に至った」といった声があがる。リスクがありながらなぜ経歴詐称をしてしまうのか。『ABEMA Prime』で議論した。
■勤めた会社“5社→2社”のウソがばれ内定取り消し
転職時に経歴詐称をし、内定取り消しになってしまったピノさん。2010年から現在まで5社を経験してきたが、提出した書類には2社と記載した。「(転職回数が多いと)書類選考で引っかかってしまうので、少なめに書いた」。
しかし、会社から被保険者記録照会回答票の提出を求められたことでウソが露呈する。「過去、厚生年金をどこの会社でいくら払ったのかが明確に記載された書類。もちろん履歴書とは合わない。提出したら、『ちょっとお話があるので』と呼ばれた。履歴書と回答票を横に並べられて、合っているかを確認された」と明かす。
結果、「弊社としては、そういった(経歴詐称をする)方とはお仕事ができない」と言われ、内定が取り消され不採用に。
ジャーナリストの堀潤氏は「1社の期間が半年で、採用担当者が見ると若干引っかかりがあったかもしれない。失業保険をもらって遊んでいたということだが、それは制度としてあるわけだ。おそらく転職を繰り返したということではなく、それぞれの理由を聞いて内定取り消しに繋がったのではないか」との見方を示した。
なお、ピノさんはその後、きちんと5社を記載した経歴を出して就職できたということだ。
■なぜ経歴詐称が増加?法的な問題は?
経歴詐称が増える背景について、転職エージェント・マジキャリ代表の末永雄大氏は「転職市場・採用市場が激化して、SNSやYouTubeなどどこにでも情報がある。“転職したら年収アップ”みたいなことが喧伝されている中で、“このままでいいのかな?”と、恵まれた環境なのに安易に転職してしまう若い人が増えている印象だ。そこから辞め癖がつき、どんどん職歴が荒れていく」と話す。
株式会社クイック「転職Hacks」の調査によると、面接でウソがばれたのは「回答を深堀りされボロが出た」が41.4%、「仕草や表情が不自然」が34.5%、「証明書の提出や手続き」が17.2%などとなっている。
堀氏は「やってほしいことが明確に決まっているかどうかが、企業側は問われる。期待する業務がきちんとできれば、どんな経歴でも構わない。ただ、僕も痛い目にあったことはあって、いいなと思ったが、しばらくしたら違うなと。急な解雇もできない。ただ、それは自分の見る目、マネジメント能力がなかったということだ。書類はいくらでも書けてしまうわけで、今みたいな採用面接には“本当に雇いたい人を雇えない”という欠陥があるのではないか」と考えを述べた。
末永氏は「じっくり見極められる時間と工数があれば、膝を突き合わせて、変な話、会食に行くということもできるだろう。しかし、ある程度の規模の会社になれば、四半期で数十〜数百人を採らなければいけないこともある。そういう場合は書類など何かしらの情報がないとスクリーニングできず、非効率だというのは論点としてある」と説明した。
では、経歴詐称は罪に問われることがあるのか。弁護士法人プラム綜合法律事務所の梅澤康二弁護士は、経歴を詐称しただけで罪に問われることはないが、犯罪につながる可能性はあるとする。存在しない卒業証書や架空の履歴書等を作成した場合は「私文書偽造」「公文書偽造」。相手から金銭等を得る目的で行われた事例、例えば有資格者のコンサルと騙して報酬をもらうなどした場合は、「詐欺罪」にあたる可能性があるということだ。また、採否に関わるほど重大だと懲戒解雇の場合もあるとしている。(『ABEMA Prime』より)
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