広瀬章人九段「チームコンセプトとしては大成功」チーム広瀬、予選敗退もフルセットの激戦制し晴れやか笑顔/将棋・ABEMAトーナメント2024
【映像】激闘を振り返る広瀬章人九段

 敗れたとはいえ、力を出し切った者の顔は清々しい。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」予選Aリーグ第3試合、チーム広瀬 対 チーム中村の模様が7月6日に放送された。フルセットの激闘はチーム広瀬がスコア5-4で勝利。Aリーグはチーム渡辺を含めた3チームが1勝1敗で並んだものの、得失点差でチーム広瀬は惜しくも予選敗退となった。それでもリーダー広瀬章人九段(37)は「チームコンセプトとしては大成功」と、チーム名「ダメ元」として奮闘できたことに満足げ。グッドルーザーとして大会を去ることとなった。

【映像】激闘を振り返る広瀬章人九段

 負けてもともと、追い込まれてからが勝負。そんなチームカラーを出し切った。第1局、チーム広瀬は黒沢怜生六段(32)が登場、佐々木大地七段(29)と対戦したが、中盤から押され始め敗色濃厚だった終盤に、まさかの「二歩」で反則負け。チームとしても最悪のスタートを切ると、続く第2局も大会初出場の杉本和陽五段(32)が佐々木七段に挑むも、リードを奪う場面がないような完敗。さらには第3局もリーダー広瀬九段が、渡辺和史七段(29)に逆転負けを喫し、いきなりスコア0-3と追い込まれた。

 得失点差から、あと1つ負ければその時点で予選敗退が決まるという絶体絶命のピンチ。ところがここから「ダメ元」精神が、急に花開いた。第4局は、まだ大会初勝利を得られていない杉本五段だったが、相手のリーダーで兄弟子でもある中村太地八段(36)と対戦。先手・中村八段の居飛車、後手・杉本五段の四間飛車と、何度も指してきた対抗形から始まると、序盤こそ中村八段がリードしたが、杉本五段が丁寧な指し回しで挽回、逆転すると、そこからは絶対に負けないとばかりに手厚く、かつ辛い指し回しに終始。待望の1勝を手にした。

 失うものがない者は強い。続く第5局にも杉本五段が連投すると、渡辺七段とは大熱戦。解説を務めた井出隼平五段(33)が「この2人は将棋が長い」と展開を予測すると、その言葉通りに形勢も両者の間を二転三転。両チームの控室からも「やばい!みえなくなった」「あるよ!あるよ!」と興奮気味の言葉が飛び交う最終盤の中、杉本五段が辛くも153手で勝利。2連勝で仲間にバトンを託した。

 後輩の活躍に、ついにリーダー広瀬九段も燃えた。中村八段とのA級棋士リーダー対決に挑むと、中村八段の先手から角換わり腰掛け銀に進んだが、早い段階から先手玉が入玉を狙うような展開に。続いて後手玉も入玉を目指し、最終的には相入玉。道中、大きく駒得していた広瀬九段が194手の長手数の末に勝利し、ついにスコア3-3のタイに戻した。「ダメ元」から始まった勢いは衰えない。まさかの反則負けから雪辱を期す黒沢六段が第7局に登場すると、佐々木七段の手厚い指し回しに押されていたはずが、激しい攻防に持ち込んだ末に終盤で逆転。控室の杉本五段からも「男気を見た」という言葉が出るほどの熱い戦いぶりで、とうとう4-3と大逆転での勝利、予選突破に王手をかけた。

 しかし快進撃も、あと1勝が遠かった。運命をかけた第8局、広瀬九段がリーダー自ら登場したが渡辺七段の前に139手で惜敗。最終第9局を待たずに予選敗退が決まってしまった。それでも最後までしっかり指すのが棋士たるもの。黒沢六段は中村八段と角交換型振り飛車で挑み、相手にペースを掴まれながらも盛り返しての逆転勝利で、スコア5-4と激闘を制した。

 結果的には、チーム渡辺との対戦で負け越した数が大きかった分、予選突破はならなかったチーム広瀬だが、試合後の広瀬九段をはじめ3人の表情は実に清々しいものだった。広瀬九段は「浮き沈みの激しいスコアでした。リーダーの力が足りなくて残念でしたが
それ以外は想定通りでした」と笑顔。黒沢六段も「追い込み始めた時は杉本さんがつなげてくれてリーダーに回すのが団体戦の醍醐味。そういう展開になってので、つなげたいという一心でした」と充実感を口にした。さらに初戦では勝ち星がなかった杉本五段は「あまりにも崖っぷちに追い込まれすぎて、黒沢さんがすごく緊張しているのを見て、それを見て自分が気楽になった」というエピソードも紹介。「トップ棋士の将棋を間近で見て、有意義な時間を過ごさせていただいた」と満足げだった。

◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
ABEMA/将棋チャンネルより)

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