極限状態で戦う超早指しだからこそ起きるハプニングだ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」予選Aリーグ第3試合、チーム広瀬 対 チーム中村の模様が7月6日に放送された。この第1局、チーム広瀬・黒沢怜生六段(32)とチーム中村・佐々木大地七段(29)で、終盤に黒沢六段がまさかの「二歩」で反則負け。解説していた棋士からも「え!え!ああ~!」と絶叫が飛び出す事態となった。
「二歩」は同じ筋に、歩を2枚置いてはいけないという、将棋の中で最も有名な反則の一つ。アマチュアはもちろんプロともなれば、そうはしないミスだが、時として自陣、もしくは相手陣深くに歩を打っていた展開で、中段に歩を打つのがいい手である場合に起こりやすいものでもある。持ち時間が豊富にある対局であればめったに出ないが、最終盤ともなれば数秒内に連続して指さなくてはいけないフィッシャールールの今大会においては、過去にも二歩での反則負けが複数出たことがある。
両チームともに予選突破のかかる大事な試合の第1局。気合と緊張が入り混じる中、先手の黒沢六段は中飛車に穴熊、後手の佐々木七段は対振り飛車に袖飛車を採用した序盤になった。すると早い段階から後手が2枚の銀を使って盤面中央を制圧。先手の飛車を自由にさせない流れでリードを奪うと、中盤以降も着実な攻めで先手の穴熊を構成する駒を1枚、また1枚と剥がしていった。
ハプニングが起きたのは100手を過ぎたところ。佐々木七段が△4七歩と、4八の地点にいた先手の金に圧力をかけたところ、黒沢六段はなんとか4筋を守りつつ切り返そうと、▲4五歩と打ち返した。ところがよく見ると4九の地点には、事前に打っていた底歩があり、同じ筋に歩が2枚となり「二歩」が成立。即、反則負けになってしまった。
予想外の事態に解説していた井出隼平五段(33)が「え!え!ああ~!気づかなかったの?」と声を張り上げると、ファンからも「やっちまったか」「まじかい」「二歩はいい手だからなぁ」「打っちゃったよー」「こんな近い二歩は珍しいぞ」と驚きの声が殺到した。対局後、チームメイトのもとに戻った黒沢六段は「視聴者の皆様、失礼いたしました…」と反省のコメント。それでも広瀬章人九段(37)、杉本和陽五段(32)の2人が明るく励ましたこともあってか、その後に指した2局はいずれも勝利とショックを引きずることなく奮闘していた。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)