約9カ月間にわたるヨーロッパ武者修行を終えて凱旋帰国した稲村愛輝あらためYOICHI(ヨイチ)が、7.13プロレスリング・ノア日本武道館大会で、清宮海斗の持つGHCヘビー級王座に挑戦する。

 海外修行前から大器と期待されてきたYOICHIは、ヨーロッパでどのような修行をして、何を考え、武道館でどんな闘いを見せようとしているのか。決戦前日のYOICHIを直撃した。

(聞き手・文/堀江ガンツ)

——フルコスチュームに身を包んで、“戦(いくさ)”の準備は整った感じですね。

「そうですね。日本武道館のメインで清宮海斗とGHCヘビー級を賭けて闘えることは光栄だし、自分のすべてを出して闘うつもりです」

――9カ月間の海外武者修行中、どんなことを考えてすごしてきましたか?

「『とにかく自分を変えたい』『しっかりと実力をつけて、自分が納得するまで帰らない』という気持ちで海外に出て、修行の日々をすごしてきました。最初はなかなか結果も出なかったんですけど、自分を変えるためにリングネームも“YOICHI”に変えて闘ってきて、今は自信を持ってかつての自分とは違うという思いがあります」

――具体的にどんな部分が変わったと思いますか?

「まず、みなさん見てわかるとおり身体が変わりましたね」

――たしかに渡欧前より身体が絞れてなおかつ大きくなった気がします。

「実際そうなんですよ。食事に気をつけて、向こうはサプリメントも進んでいるので積極的に摂るようにして。また向こうでは週末に試合が集中して、平日はトレーニングに専念できる感じだったので、自然と絞れ、身体を大きくすることができましたね。

 あと前哨戦を見ていただいた方はわかると思いますけど、技も増えました。これは去年、武藤(敬司)さんと『レッスルマニア』に行かせてもらった帰りに、『ここからインスピレーションを得て、技なんか増やしたらどうだ?』と言っていただいて。海外に出てから、周りの選手たちが貪欲にいろんなアイデアを出して新しい技に取り組む姿勢を目の当たりにして、自分もそこにチャレンジしていきましたね」

——やはり海外にはハングリーで、自分のオリジナリティを確立することに貪欲な選手が多いわけですか。

「そうですね。選手のみならず、ヨーロッパのプロレススクールに練習に行くと、13歳とかすごく若い人たちもけっこういて、柔軟な発想で練習に取り組んで新しいムーブとかも生み出していたんですよ。それが刺激になったし、自分を表現する力を向こうの選手から学びました。技術的な部分だけじゃなく、気持ち的な部分で学ぶことが多かったです」

——イギリスでは、伝統的なランカシャースタイルのキャッチレスリングのジムにも行かれたそうですね?

「はい、伝説的なスネークピット(蛇の穴)やマーティン・ジョーンズ選手のジムにも行かせていただいて、キャッチレスリングを学ばせてもらいました」

—— “神様”カール・ゴッチや“人間風車”ビル・ロビンソンを輩出した“蛇の穴”に行ってきましたか。

「イギリスに修行に出たからには、絶対に行きたかったし、『行かなきゃダメだ』と思ったんですよ。スネークピットがあるウィガンは、思ったよりも遠かったんですけど。マンチェスターのさらに北西にあって。でも、これはタイミングを見つけて行かなきゃいけないと思って、計3度行かせてもらいましたね。3度とも同じ曜日だったのでコーチが一緒だったんですけど、その人はキャッチレスリングの2019年と2020年のチャンピオンだったんですよ。体重も130kgあって、その選手と肌を合わせて練習ができた経験は、かなり大きかったですね」

——イギリスには、いまだに伝統的なキャッチレスリングが息づいているんですね。

「残ってましたね。ただ、イギリス人でも知らない人が多くて。ロンドンでグラップリングの道場にも練習に行ってたんですけど、そこで『明日、何するの?』って聞かれて『キャッチレスリングを習いに行く』って言ったら、『まだあるのか!? もうなくなったって聞いたぞ』って言われたこともあるんで(笑)」

——実際、もともとあったスネークピット(ビリー・ライレージム)は火事で消失して、いまはライレージム出身のロイ・ウッドが再建したんですよね。

「そうです。でも、ライレージム出身の70歳過ぎの人にも教えてもらったり、すごく貴重な体験をさせてもらいましたね」

——カール・ゴッチ、ビル・ロビンソン、ダイナマイト・キッドらの流れを汲むことは間違いないわけですもんね。スネークピットで学んできたものも含めて、7.13日本武道館では清宮選手にぶつけよう、というわけですか。

「はい。持てるものをすべて使って、清宮海斗を上回るつもりです」

——海外武者修行中、清宮選手の日本での活躍はどのように感じていましたか?

「イギリスにいても試合映像は見ることができたんですよ。メキシコのピープルズチャンピオンであるイホ・デ・ドクトル・ワグナーJr.からGHCヘビー級のベルトを奪取したというのは、やはり清宮海斗の強さと才能の賜物だと思いましたね。

 また、ぼくが帰国した時に見たゲイブ・キッド戦(6.16横浜BUNTAI)でも、今までにない新たな荒々しい清宮海斗が出てきた。ぼくは昔から清宮海斗をこの業界の天才の一人だと言ってるんですけど、去年までとは違う力もつけてきてより進化しているな、と。ただ、それを超えるくらいの自信と力が今の自分にはあると思っているので、必ず打ち勝とうと思います」

——7.13日本武道館では、清宮戦の一つ前に「ダブルメインイベント1」として丸藤正道選手とWWEスーパースター、AJスタイルズの夢のカードが組まれていますが、それについてはどう感じていますか?

「丸藤さんもAJスタイルズ選手も、自分がプロレスラーになる前から見ていた選手で、すごい試合をするだろうことは容易に想像できますけど。あの二人にはできない試合が、僕と清宮海斗にはできると思っているので、そこは自信を持って闘いたいですね。また、丸藤さんとAJスタイルズのおかげで、世界の人たちに僕らの試合を見ていただけるチャンスだと思って、そこはプラスに捉えています。海外武者修行で変わった自分の闘いで、清宮海斗を驚かせ、観客を驚かせ、世界の人を驚かせてみせますよ!」

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