「金を出せば逮捕状取り下げる」なぜ“ニセ警察詐欺”に騙される?元刑事が見抜き方を解説
【映像】警察手帳の本物とニセモノ(比較写真)

 ニセ逮捕状や警察手帳を使った詐欺が横行している。警察を名乗る詐欺行為は特殊詐欺で多く見られるが、最近は偽の警察手帳や偽の逮捕状なども登場し、信じ込ませるなど手口が巧妙化しているという。

【映像】警察手帳の本物とニセモノ(比較写真)

 なぜ信じてしまうのか、実は「本物を知らない」という落とし穴があるからだ。元埼玉県警捜査1課刑事の佐々木成三氏は「はじめのころは電話で警察官を名乗り示談金を名目に(詐欺を働く)ということで始まった。警察官をかたるだけでは騙される人が少なくなった。犯罪組織は対策を講じられたら手口をバージョンアップしていく」と説明。

 茨城県に住む38歳の男性は偽警察に騙され9900万円の被害に。送られてきたのは逮捕状で、警察官を名乗る男から「捜査本部」のLINEアカウントを登録するように指示。すると逮捕状や凍結捜査差押許可状の画像が送られてきた。

 その後検察官を名乗る男も登場し「保釈金を支払えば逮捕しない」と言われた男性は指定された口座に現金2000万円を振り込んだ。さらに検察官を名乗る男は「あなたの財産すべて差し押さえて捜査しなければならない。口座から振り込みをすれば口座番号がわかり取引状況もわかる」と言われ、男性はさらに7900万円を振り込んだ。

 もちろんすべて偽物で、佐々木氏によるとニセの逮捕状による詐欺事件は今年になって始まった手法だという。「ネット上にはテンプレートが出ていて、それっぽい逮捕状の書式をうまく使えば作れる」と話した。

 また長崎県では「2課のタナベです。あなた名義の携帯が不正利用されています」と、偽の逮捕状だけでなく偽の警察手帳を見せて信じ込ませようとするケースも。この件については不審に思った女性が警察に相談し、犯行は未然に防げた。

 本物の逮捕状や警察手帳を知る人はそう多くないはずで、真偽を見極めるのは難しい。佐々木氏は「一般の方、警察手帳を見たこともない方が本物と偽物を見極めることはできない」と指摘した。

 資産家が狙われるケースもあった。警察官を名乗る女は「ニセ札のニュースが話題になっている。金庫にニセ札が紛れているか確認させてほしい」と、その後自宅に訪ねてきた男性のニセ警察官が金庫をチェック。現金や金塊の一部、合わせて2200万円相当を盗み逃走した。

 「ファクトチェックがすごく大事」と語る佐々木氏は「逮捕状というのは裁判官が出すもの。裁判官の公印がなきゃダメ。逮捕される前に検察官の印鑑があるのは矛盾している」と説明。通常逮捕の場合、逮捕令状は警察や検察が裁判所に請求、発行を求めるもので検察の印鑑はそもそもない。

 警察手帳の場合は「エンブレムのところに『埼玉県警察』『警察庁』などという刻印があるかどうか。偽物の手帳は『〇〇県警』が刻されてない」と解説。しかし犯罪者側も日々アップデートしているとして、真偽については「そこで見極めようとしないことが大切」とくぎを刺した。

 警察を名乗るものが「逮捕されたくなかったらお金を払え」「あなたの身の潔白を晴らすためにお金を振り込んでください」「あなたの口座を確認するのでお金を送金してください」などと、条件を提示してきたらその時点で詐欺だと判断すべきだとして「逮捕状を示したら警察官は逮捕するしかない。それ以外の条件を突きつけてきたらすべて詐欺」と断言した。

 さらに「ネット空間だけで物事を信じてはいけない」と続けると「すべて装うことができる時代。いま(Zoom越しに)喋っているのも僕ではないかもしれないと、疑わなければならない時代になっている」と警鐘を鳴らした。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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