井ノ上奈々氏と長男
【映像】母が手を放した瞬間、離れてしまう発達障害の男の子
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 今、SNSに溢れる、親からの悲痛な叫び。「児童精神科に行くように学校から指摘されたけど予約が取れない」「児童精神科、数カ月待ち…少子化なのに何故?」(取材・Xの投稿より)

【映像】母が手を放した瞬間、離れてしまう発達障害の男の子

 児童精神科とは子どもの発達障害・知的障害といった発達面の問題、不登校や非行・虐待・うつ状態など、子どもに起きるさまざまな精神障害を扱うところなのだが、実は今、児童精神科に行きたくてもいけない人が増えている。

 文科省によると、発達障害の子どもの数は、2006年時点で、7000人ほどだったが、今は10万人を突破。しかし、児童精神科医が少ないため、予約を取りにくい状況になっているのだ。ニーズが高まる児童精神科。『ABEMA Prime』では、当事者と専門家とともに現状と課題について考えた。

■2000回以上電話するも予約がとれない児童精神科

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 井ノ上奈々氏の長男(7歳)は、発達支援センターで4歳の時にADHDなどの発達障害と診断され、現在は小学校の支援学級に通っている。薬の処方、精神障害者手帳を取得するため、児童精神科を受診したいが、2000回以上電話するも予約が取れなかったという。

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 そのときの状況について、井ノ上氏は「(電話が)繋がって断られる、3カ月後4カ月後だと言われるのは、若干覚悟していた。最初の発達検査、幼稚園の時の発達検査もそうだった。しかし、1時間半ぐらいかけ続けても繋がらず、繋がったと思ったら予約はもう終わったと言われた」と振り返る。

 児童精神科を予約しようと思ったのは「幼稚園で診断された後、他の病院に行き、薬の相談をしてみた。多動性、衝動性がちょっと強めなので、落ち着けるような薬があればと話をしたら、幼稚園のうちは様子をみてくれと。今年4月に小学校に入って、まだそういった心配があるなら相談をしてみてはと言われた」と説明。

 予約できないことは不安ではなかったのか。井ノ上氏は「不安だったし焦る。小学校には、通常の授業もそうだが、いろんなイベントがある。そういうときに薬を飲んでいたら、本人が気持ちよく参加できるかもしれないとか。子どものことを考えると早い方がいいと思っていた」と答えた。

■児童精神科医は「成り手が少ない」「子どもの精神疾患は診療が難しい」

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 精神科医の人数は年々増えているが、児童精神科が足りない状況。その理由には、一人前の専門医になるまで約14年の時間がかかる、診療の大変さと収入の問題などで成り手が少ないことが挙げられる。また、子どもの成長とともに病状が変化することや、親として子どもの障害を受け入れていく大変さなどが挙げられるという。

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 診断の難しさについて、国立国際医療研究センター国府台病院、児童精神科診療科長の宇佐美政英氏は「例えば5歳の自閉症の子どもが、7歳まで同じ自閉症の症状とは限らない。子どもは環境に大きく影響を受ける。単純に精神疾患の状態像だけではなくて、どんな環境なのか、隣の席は誰なのか、先生との相性はどうなのかによって見せる顔はだいぶ変わってくると思う」と説明。

 さらに「児童精神科において、日本で安全性、有効性が認められている薬は少ない。例えば、うつ状態の子どもに対して、抗うつ薬はひとつもない。発達障害は、自閉症が2つ、ADHDが4つだけだ。統合失調症においても、ひとつしかない。もちろんそれ以外の薬も医者の裁量で使うが、限られてしまっているのが今の日本の現状ということだ」と付け加えた。

■「薬じゃなくてもできることはたくさんある」

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 そもそも、発達障害とは、自開症・アスペルガー症候群、注意欠如・多動症、読字障害などの学習症のこと。2005年の発達障害者支援法施行の認知広がりと、SNSの普及により、発達障害児は年々増え続けている。

 井ノ上氏の長男は、発達障害を理解しているのか。井ノ上氏は「幼稚園の年長の頃、“僕はなんでこんなに怒りっぽいんだろう”と言ってきたことがあった。話せば分かると感じたので、この番組に出る際に話した。あなたは発達障害で、自閉症とADHDがある。だから病院にも行くし、療育にも通っているし、放課後のデイサービスにも通っているし、支援学級に通っていると話したので、本人は理解をしている」と明かす。

 また、「そういうところに行き、治ることはないので、説明が難しいが、隔離をされることによって安全が保障されたり、普通学級と支援学級は活動が違う。あとは療育の先生も本人がこういうことをしたい、これはやりたくないという特性を持っているから、理解してやってくださっている。それを親が見て安心ができる」と続けた。

 予約を取れない人はどうすればいいのか。宇佐美氏は「今、子どもの専門家を増やそうとしている。国が医者だけじゃなくて、心理やワーカーにも保険の点数がつくようになってきた。薬じゃなくてもできることはたくさんある。そういった意味では他職種で、医者以外の人たちをもっと活用して支えようと、今、厚労省が舵を切っている。病院の医者だけが頼りじゃなくて、もっと同じ職種の、同じ領域の他職種で支えていけると、もっと相談しやすくなるんじゃないかと思っている」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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