優勝候補の大本命が本戦に入り猛ダッシュだ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」本戦トーナメント1回戦・第1試合、チーム藤井 対 チーム渡辺の模様が8月3日に放送された。藤井聡太竜王・名人(王位、王座、棋王、王将、棋聖、22)、羽生善治九段(53)、青嶋未来六段(29)の3人は予選の好調ぶりからさらに勢いを増し、チーム渡辺を圧倒。怒涛の5連勝で準決勝一番乗りを決めた。最高の結果に藤井竜王・名人も「良い雰囲気の中で戦っていくことができた」とニッコリ。大会前から大注目だったチームが、まぶしいばかりに輝き始めた。
【映像】仲間の指し手に「えー!?」と驚く藤井竜王・名人と羽生九段
八冠独占を果たした藤井竜王・名人に、永世七冠の羽生九段、2人に刺激を受けたオールラウンダー青嶋六段という3人が、本戦を迎えていよいよ手がつけられなくなってきた。第1局を任された青嶋六段は、相手のリーダー渡辺明九段(40)と対戦。タイトル通算31期の実力者に対して先手番から向かい飛車を採用。渡辺九段は居飛車で応じ、対抗形の相穴熊から始まった。両者じっくり陣形を整え、先手側からの局面打開が難しそうな序盤になると、なんとか青嶋六段も攻めの糸口を見つけてやや有利に。中盤は逆に渡辺九段が盛り返し、ABEMAの「SHOGI AI」では勝率60%前後を両者間で行ったり来たりという展開が続いた。中終盤、後手の受けにほころびが見えたところで先手に形勢が傾くと、ここから後手玉めがけてラッシュ。最終盤には逆転を許しかねない瞬間もあったが、そのまま寄せ切り幸先のいい勝利をチームに持ち帰った。
続く第2局は藤井竜王・名人が登場。岡部怜央四段(25)と「(対戦は)完全に初めて」と練習将棋も含めて初手合の一局に臨むと、貫禄を見せた。後手番から相掛かりの出だしに、早くも岡部四段が工夫を入れたものの、冷静に対処。逆にその場に応じた工夫で切り返しペースを握ると、中盤から終盤にかけてはチームメイトからも「さすが」「気づいたらまとまっている」と驚きの声が漏れるほど華麗な攻め。解説していた藤森哲也五段(37)も「ちょっとおかしい強さ」と脱帽する内容で、74手で完勝した。
気持ちいい連勝を受けて、羽生九段ものびのび指した。山崎隆之八段(43)との一局は先手番から一手損角換わりで始まったが、ややリードで迎えた中盤、5筋でのチャンスを逃さず怒涛の攻め。飛車を切り飛ばして後手陣に切り込むと、その後も細い攻めをきれいにつなげて危なげなく勝ちを収めた。
内容も充実した3連勝を受けて、チーム藤井は気を緩めるどころか、さらに加速した。第4局は青嶋六段が2度目に登場となると、山崎八段と対戦。相居飛車でしっかりと囲い合ってからの序盤になったが、駒得になってからは終始リードを維持。山崎八段からも粘りを見せられたものの、逆転は許さずしっかりまとめ切ってチーム4勝目を果たした。そして最後はリーダー藤井竜王・名人。第5局は渡辺九段とのリーダー対決になったが、先手番から角換わり腰掛け銀になると、60手目を過ぎたあたりからじわりじわりと差を広げ、終盤を迎えるころには大差に。羽生九段も「いい勝負だと思っているのに、10手ぐらい経つと差がついている」と脱帽のコメントが漏れるほどの内容で、113手で勝利した。
これでチーム藤井、昨年予選リーグで戦った際に続き、チーム渡辺を2年連続でスイープ。文句なしの結果で、ベスト4入りを果たした。藤井竜王・名人は「初戦で青嶋六段が熱戦を制して、そこからチーム全体、すごく勢いに乗れました。この結果もそうですけど、良い雰囲気の中で戦っていくことができました」と微笑んだ。藤井竜王・名人に羽生九段という2人だけでも豪華過ぎるところに、青嶋六段も絶好調となれば、優勝への追い風は強まるばかり。今のところチーム藤井に死角は見当たらない。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)