「世の中に どんだけおんねん サークル長」(愛知県 まろたんさん)
これは就職活動中に学生が集団面接で出くわした驚きの場面を詠んだ川柳だ。
こうした就職活動の印象的な出来事を学生そして採用担当者がしたためた川柳から、「就活川柳」「採用川柳」として毎年入選作品が発表されている。
主催しているHR総研(ProFuture株式会社)の担当者に話を聞くと、少ない字数の中にも、今ならではの問題点や学生・企業双方の喜怒哀楽が見て取れるという。例えば…
「耳につく 志望動機は みな同じ AI聞いても また同じ」(熊本県 ひろしですさん)
この川柳に対し、ProFuture HR総研 久木田亮子主任研究員は「AIを使ったエントリーシートが増えていて、採用側としてはAIを使われると少し悲しい気持ちになる。そんな採用側の心情を表した作品だ」と説明した。
「早期化よ 蓋を開ければ 長期化よ」(京都府 てんてんさん)
「就活は 早めにやらんで 大丈夫 言ってた友が 早期内定」(大阪府 サラダ食べたいさん)
これらの川柳は単なる学生の嘆きではなく、開始時期が年々早まる一方で長期戦もあり得る「現代の就活ならでは」の苦労が描かれている。一方で、苦労を苦労と受け止めない、学生ならではの明るい工夫を感じる川柳もあるそうだ。
「Excelで まとめる落ちた 企業名 ファイルの名前は 『信者リスト』」(大阪府 サラダ食べたいさん)
この『信者』とは『企業』のこと。不採用の通知メールの多くが「一層のご活躍をお祈り申し上げております」という締め言葉になっていることから、企業を「祈りを捧げる信者」と捉えた解釈であり、ProFuture HR総研 久木田氏も「学生が強くなってきた。祈られるという苦しい状態を逆手に取り、企業を『信者』と呼び返すのはなかなかうまい」と舌を巻く。
落ち込まずにアレンジする学生の視点が光る川柳だが、この「お祈りメール」は企業側も辛いという本音を吐露する作品もある。
「お祈りは するもされるも 心晴れず」(東京都 ネコXさん)
企業側も「学生から品定めされる苦労」が増えているのが昨今の採用市場の特徴だと指摘している。
「ITの 広い世界に 羽ばたきたい 志望動機は 在宅勤務」(神奈川県 賽の河原の採用担当さん)
この川柳に対し、ProFuture HR総研 久木田氏は「『そんなことで本当に広い世界を見られるの?』という気持ちと一方で『そんな考えを持つ(採用担当の)私の考えは前時代的なのかな』と自身を皮肉っている気持ちも表している」と解説。
今の学生たちは「新しい働き方」を受け入れる企業かどうかを見定めているという。そんな学生優位の市場だからこそ、学生と企業それぞれの本音が見える川柳を通じて知ってほしいことがあるという。
「世間一般では学生が弱者で企業側が強者という認識だが、今では企業側が選ばれる側になっている。大手企業でも人材の取り合いで苦戦しており、内定辞退も多い。そんな現実を学生にも一般の人々にも知っていただきたい」(ProFuture HR総研 松岡仁主席研究員)
(『ABEMAヒルズ』より)
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