9月1日、エディオンアリーナ大阪第1競技場でプロレスリング・ノア『ABEMA presents N-1 VICTORY 2024』優勝決定戦が行われた。
8.4横浜大会から約1ヶ月にわたって行われた真夏の最強決定リーグ戦。A、B両ブロックを勝ち上がった優勝決定戦は現在のNOAHのツートップとも言うべき清宮海斗と拳王。清宮は現GHCヘビー級王者であるため、この一戦にはN-1優勝とともにNOAHの最高王座GHCヘビー級のベルトも懸けられ、さらに両者が所属するユニット「ALL REBELLION」のリーダーの座までも懸けられた、NOAHの真の頂上対決となった。
これまで幾度となく対戦してきたライバル同士の闘いは試合開始早々からエンジン全開。ゴングと同時に激しいエルボー合戦が展開されたが、先手を取ったのは清宮だ。ドラゴンスクリューからシャイニング・ウィザード、足4の字固めにつなぐ武藤直伝コンボでペースを握らんとする。しかし、拳王はこれを脱出すると負けじと得意の蹴りで応戦。そしてここからは、手の内を知り尽くした者同士の意地の張り合い、一歩も引かぬ攻防が展開された。
清宮が、エプロンに立つ拳王を場外へ奈落フランケンシュタイナーで叩き落とせば、拳王は清宮をコーナーに担ぎ上げてトップロープから雪崩式ドラゴンスープレックスで投げ捨てるなど、危険な大技で応戦。
さらに清宮が拳王のPFS(プロフェッショナル・フット・スタンプ)をかわし、フランケンシュタイナー、変形タイガードライバー、ブーメラン・シャイニングを決め、LOVEポーズから変形シャイニングにいくが、これを拳王がキャッチして拳王スペシャルで絞り上げる。
清宮がこれをなんとかロープブレイクで脱出すると、拳王は再度PFSを投下。そして最終兵器の炎輪(ムーンサルト・フットスタンプ)にいくが、清宮がギリギリで回避し、着地した拳王にシャイニングを決めるが、拳王も3カウントは許さない。
両者共に奥の手を出し合う死力を尽くした闘いを決めたのは、意外な技だった。拳王がハイキックを決め、さらに追撃を仕掛けようとした次の瞬間、清宮が鮮やかなアームドラッグを決めるとそのまま片エビに固め3カウントを奪取。
NOAHが旗揚げ以来大事にしてきたプロレスの基本技であり、N-1シリーズ中に引退を表明した師・小川良成に清宮が若手の頃から徹底的に叩き込まれた“これぞNOAH”とも言うべき技で頂上対決を制し、清宮海斗が史上初となるN-1優勝&GHCヘビー級王座防衛を同時にはたしてみせた。
試合後、マイクを握った清宮は「大阪、ありがとうございます! まず始めにN-1中に言えなかったことをひとつ。小川さん、長いプロレス生活、本当にお疲れ様でした。自分のエゴかもしれませんけど、最後に出した技(アームドラッグ)も小川さんと何度も何度も繰り返し練習してきた技です。自分のようなレスラーをゼロからここに来るまで育てていただき、本当にありがとうございました!」と、小川への感謝を口にした。
しかし、この日ABEMA生放送で解説を務めた小川良成の評価は手厳しかった。「水を差すようですけれど、ザックの真似だよね」と、バッサリ。新日本プロレス「G1クライマックス」で優勝し小川への感謝の言葉を述べたザック・セイバーJr.の二番煎じだと断じた。さらに「試合もそう、武藤さんの真似、武藤さんのコピー。清宮海斗の色がない。この時点でそういうものを作っておかなければいけなかった」と、偉業を達成した愛弟子に対しあえて厳しい叱咤を繰り返した。
これはもちろん、清宮への高い期待の裏返しだろう。今の清宮には、どんなに険しい道でも笑顔で突き進んでいくような強さがある。
「N-1VICTORY、皆さんいかがでしたか? いろんなアクシデント、そして台風もあったけど、忘れられない夏になったでしょう? N-1獲ってGHCも守った。プロレスリング・ノアの頂点は俺です! ここからノアを頂点に俺が持っていきます! 清宮海斗に任せてください! これからも日本一、プロレス界一熱い闘いを見せていきます! ALL REBELLION、すべてはNOAHのために!」
こう笑顔で決めゼリフを叫んでNOAHの熱い夏を締めた清宮。リングを降りたあとは、統一WWE王者コーディ・ローデスばりに、リングサイドのファンと握手を繰り返しよろこびを共有し、ファンもそんな清宮を後押ししようとしている。
清宮の“革命”はN-1とGHCの同時制覇で成就したわけではない。プロレス界の序列を覆し、NOAHを頂点に持っていく長い闘いにこれから本格的に挑んでいく。そのひとつの出発点となった。
文/堀江ガンツ