混戦模様の自民党総裁選だが、今回(2024年)は2012年の状況に近いと指摘されている。政治ジャーナリストの青山和弘氏は「自民党内からも『似ている』という声が出ている」と語る。
当時の候補者は、石破茂氏、安倍晋三氏、石原伸晃氏、町村信孝氏、林芳正氏の5人。石破・石原両氏の「石・石対決」になると見られていたが、結果は決選投票で安倍氏が石破氏に逆転勝利し、憲政史上最長となる第2次安倍政権がスタートした。
16人の総理に仕えた元自民党職員の田村重信氏は、「『オレがやりたい』という政治家が結構いた」と振り返る。当時の自民党は野党だったが、民主党政権に陰りが見えて、次の総選挙で政権奪還の期待が高まっていた。谷垣禎一総裁も再選に意欲を見せていたが、党内では「谷垣総裁でいいのか」という声が飛び交っていたという。
「谷垣氏も今度は総理を目指そうという動きがあったが、足元から違う動きが出てきた。谷垣氏は谷垣氏なりの考え方でやっていて、長老にこびへつらうことは、あまり好きではなかったのだと思う」(田村重信氏)
当時の自民党は、森喜朗氏や古賀誠氏、青木幹雄氏、山崎拓氏といった“ドン”が自民を牛耳っていて、次世代を担う議員からは「長老支配打破」が叫ばれていた。これに対して、長老たちが担ぎ上げたのが、当時幹事長だった石原氏だ。
谷垣体制を支えた石原氏の出馬にあたり、党執行部では一本化の協議を続けたが、決裂に終わってしまう。田村氏は「谷垣氏は自分が出たかった。現役総裁が出て、負けるとなると恥をかく。今回の岸田文雄総理も出たかっただろうが、勝つ可能性が低ければ、やはり身をひく」と回顧する。谷垣氏は結局、「執行部から2人出るのは良くない」と不出馬を表明した。
石原氏は一気に有力候補となったが、総裁を裏切る形で現役幹事長が立候補する行為に、麻生太郎氏は「石原を支援する人の神経がよくわからない」と批判した。
さらに前代未聞なことが起きた。「町村氏が『派閥の長だから俺が出る』と言ったにもかかわらず、今度は安倍氏が(表明した)。1つの派閥から2人出るのはレアで過去になかった」。安倍氏は当時、町村派だった。町村氏本人や長老たちから立候補を自重するよう要請されていたが、派閥分裂選挙の道を選んだ。
安倍氏は2006年から2007年にかけて、総裁・総理の座に就いていた。「やめ方がまずかた。『また出るのか』という感じが一般的だったが、『日本を取り戻すために必要だ』という強烈な支持者がいた」という。
いざ総裁選が始まると、当初マスコミは石破・石原両氏を有力視して、「石・石対決」と報じた。しかし最終的には、安倍氏を加えた三つ巴に。地方票で優勢な石破氏の1位が有力視され、2位争いに注目が集まるなか、石原氏が「(汚染された土壌を)運ぶところは福島原発第1サティアンしかない」と失言してしまう。
そして開票日、地方票では石破氏、議員票では石原氏が最も多くの票を集めたが、結果的には1位石破氏、2位安倍氏となり決選投票へ進んだ。そして議員票のみで行われた決選投票で、安倍氏の返り咲きが決まった。
「党員票で圧倒的に石破氏が勝ち、国会議員も決選投票の時には尊重すると思ったが、それだけ国会議員の石破アレルギーがあった。厳しい時に自民党を抜けた。やはりつらい時一緒にいなかったことだ」(田村氏)
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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