精神疾患の一つ「トゥレット症」。自分の意思に反して、勝手に体が動いてしまう「運動チック」、声が出てしまう「音声チック」の両方が1年以上続くと、トゥレット症と診断される。この症状に少年時代から悩まされてきた酒井隆成さん(24)は、周囲から好奇の目に晒されながらも、実に前向きに生きている。5年半ほど前、メディア露出をしたことが人生の転機となり、今では重度訪問介護の事務スタッフとして活躍している。病気を理解してくれる同僚、そして仕事に恵まれ「これ以上ない環境。天職です!」と語る酒井さんの今に、『ABEMA Prime』が密着した。
酒井さんが前回『ABEMA Prime』でトゥレット症に悩む人の一人として出演したのは、今から5年半ほど前のこと。当時は多くの困難を抱えていた。自分の名前を書こうにも、勝手に手が動いてしまい余計な線を何度も書いてしまう。さらに突然「うっせぇんだよ!」など、思ってもいない言葉が出てしまう「汚言症」もあった。日常的に周囲から好奇の目に晒されてきたが、「トゥレット症について知ってほしい」と番組出演を決意。これが大きな反響を呼び、その後は新聞やテレビ、YouTubeなど様々な形で情報を発信。初めてABEMAPrimeに出演した時の動画は、再生数が1100万回を超えた。
大学を卒業後、自分と同じように障害に苦しむ人を救いたいとカウンセラーを目指し、福祉関係の企業へ就職活動を行ったものの「とにかく大変でした。『こういう病気なんです』と伝えても伝わりきれない。自分は何ができるか、何をさせてもらえるかという話に到達することすらない」と、門前払いのようなこともあった。障害者雇用を希望しても「急に声が出るなら働けない」と断られ続けた。
そんな酒井さんに転機が訪れる。テレビで酒井さんの様子を見た企業からスカウトがあった。マツノケアグループ代表で、自身も吃音症で就職活動に苦労した経験を持つ松野竜一さんから、XのDMを通じて連絡があった。松野さんはスカウト理由について「僕も吃音症というどもる病気を持っていて、彼の力になれたらなと。勝手に声が出てしまうとか、体が動いてしまうところがあるだけで、一緒に社会に出て活躍できそうな人材というか、酒井隆成という一人の男だなと思った」と述べ、大きな期待をかけていた。
就職を決めた酒井さんは、重度訪問介護の事務職として精力的に働いている。障害を持つからこそ、ケアされる相手側からも「当事者だから気持ちを理解してくれる」という声がある。かつては酒井さんの入社に反対した会社の同僚たちも、今では笑い合って話せる仲間になった。「(精神的に)めちゃくちゃ楽です。これ以上ない環境だと思っています。こういう病気がありながらも、人と話をするのがすごく好きなので天職かなって思っています」と笑顔で現状を語った。
今でも苦労は尽きない。周囲に人がいる電車内では音声チックのため「お前、うるさいんだよ」と舌打ちされることもあれば、運動チックが出て痴漢と間違われる恐れもある。それでも酒井さんの行動を見て勇気をもらった別の若者は「酒井くんを見て勇気をもらって、就活に励んで内定がもらえました」と感謝の言葉を述べる。
最近では自身の人生を振り返った著書も出版し、夢にはトゥレット症の人々が安心して暮らせるグループホームも作りたいと語る。酒井さんの現在地は、笑顔と希望に溢れていた。
(『ABEMA Prime』より)
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