石破総理が6日、裏金問題で処分を受けた安倍派幹部ら6人を次の衆院選で非公認とする方針を表明し、波紋を広げている。
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石破総理の決断の背景、そして自民党内の受け止めなどをテレビ朝日政治部の森洋介記者に聞いた。
━━総選挙に向けて裏金議員に対する自民党の方針が決まったが、どのような内容か?
「大きく分けると『選挙での非公認』と『比例代表との重複立候補を認めないこと』という2つの方針が決まった。非公認には3つのパターンがある。1つ目は、党内処分で非公認より重い処分を受けた人。2つ目は、処分が継続中かつ国会の政治倫理審査会に出席せず、説明責任を果たしていないとされる議員。3つ目は、説明責任が十分に果たされず、地元の理解が十分に進んでいないと判断される議員だ」
「『重複立候補を認めない』とは、政治資金パーティーで不記載が1円でもあった議員については、全員比例名簿に登載しないというもの。こうなると、比例代表と重複して立候補することができず、選挙区単独で戦うことになる。また石破総理と、森山幹事長、鈴木総務会長、小野寺政調会長、小泉選対委員長といった党四役と呼ばれる幹部も『共に責任を果たしていく』として、比例代表と重複して立候補しない方針だ」
━━非公認はどの議員が該当するのか?
「『非公認よりも重い処分を受けた議員』は『党員資格停止』の処分を受けた、安倍派の下村博文議員、西村康稔議員、高木毅議員の3人が該当。2つ目の『処分が継続中かつ国会の政治倫理審査会の場に出席せず説明責任を果たしていないとされる議員』については、「1年間の党の役職停止処分」を受けた安倍派の萩生田光一議員、三ツ林裕巳議員、そして二階派の平沢勝栄議員の3人。3つ目の『地元での理解が十分進んでいない議員』については、9日の選対本部会議で決まる。『6カ月の党の役職停止処分』を受けた議員と、その下の『戒告処分』を受けた議員のうち、次の衆議院選挙に出るとされている現職の議員で、参議院からのくら替えを含めて16人(このほか、いわゆる支部長=立候補予定者1人もいる)。この16人のうち、裏金問題について説明責任が果たされていない、地元からも理解が得られていないなどと党本部が判断した議員については、非公認となる可能性がある」
━━そもそも非公認となるとどういう不利益があるのか?
「党から公認料、いわゆる金銭的な支援などが受けられなくなる。つまり、街頭演説などの選挙活動もしないといけない中で、街宣車の発注やポスターの撮影・印刷など、何もかも自分で手配しなければいけなくなるのだ」
━━「比例名簿への登載をしない議員」に該当するのは誰か?
「今後党が協議するというが、現職議員の数を紹介すると、参議院からのくら替え1人を含めて37人(このほか、いわゆる支部長=立候補予定者は3人)だ」
※10月8日現在、36人(越智隆雄議員が不出馬の意向を示したため)
━━そもそも「原則公認する方針」と見られていたが、どういう経緯で変更になったのか?
「我々メディアもつい最近までは、いわゆる裏金議員も原則公認され、比例代表の重複立候補も原則認められる方向だという話を聞いていた。それが先週末に幹部が集まって協議して、最終的には非公認になる議員が出る見通しとなり、比例との重複立候補も認められないことになった」
━━最終的には、石破総理は筋を通したことになるのか?
「石破総理は、総裁選の頃は『公認するにふさわしいかどうかは選挙対策委員会で徹底的に議論されるべき』として非公認の可能性も示唆していたが、総裁選の論戦の中で『新しい執行部で判断されるべき』など、どんどんトーンダウンしていった。そして総裁選が終わり総理になると『選挙区においてどれくらい支持されているのか把握して、公認するか否かということを決定する』と述べるに留め、党内からは『言行不一致だ』『石破さんも総裁選の頃と言っていることが変わっているじゃないか』という失望感のようなムードが形成されたのが実際のところだろう」
━━国民には“期待外れ”と思われてしまった?
「若干そのように映ってしまった感はある。政権が発足して報道各社が世論調査を実施するが、通常は“ご祝儀相場”として内閣支持率が高めに出る傾向がある。しかし今回、各社の世論調査では内閣支持率がそれほど高く出なかった。ANNでもこの週末に世論調査を実施したが、石破政権の支持率は42.3%。これは3年前に岸田政権が発足した直後と比べると、1.1ポイント下回る結果となっている。また、裏金問題に関わった議員について『公認してもよい』と答えた人は20%、一方『公認すべきではない』と答えた人が66%と大きく上回っている。思ったより内閣支持率も上がらず、裏金問題についても依然として厳しい措置が求められていると判断し、党内融和よりも、国民・世論のほうに向いた、今回のような厳しい措置に舵を切ったのではないか、とみられている」
━━この決定を自民党議員はどう受け止めているのか?
「処分を受けた・受けないにかかわらず自民党内には衝撃が走っている。安倍派の中からは『半年前にこの厳しい処分が出ていれば、自民党を出ることも検討できた』『なぜ同じ問題で二度も処分されるのか』と戸惑いの声が上がっている。さらには、この一報を受けて、越智隆雄議員など出馬を見送る考えを示した議員も出てきている。これらの動きに対し、7日午前中に東京都連が緊急で会合を開いた。井上都連会長は会議の冒頭、『東京都連としてはすでに公認申請も党本部にしている。今回の措置の対象者の地元から、不平不満、不安の声が寄せられていると。なぜもう少し早く決断していただけなかったのか』と執行部への不満をあらわにした」
━━処分を受けていない人からも批判の声が出ているのか?
「賛否両論だ。裏金に関係していない議員からは『党内の融和より世論を選んだ』と評価する声もあるが『党としての手続きをちゃんと経ていない』『石破さんはこれまで権力から遠いところにいたので、権力の使い方を分かっていない』などと厳しい声も出ている。さらに石破総理の側近からも『思い切ったよね。石破さんらしさがやっと出たんじゃないか』と評価する声がある一方、別の側近からは『当然反感は買うよね。早期解散よりも重い決断だし、党内が一触即発になりかねない』として、選挙後の政権運営を危ぶむ声が上がっている」
━━ネット上などには「非公認議員が少ない」という批判の声もある。石破総理は“やった感”を出すためにこの処分を決めたのか?
「党内基盤がそれほど強くない石破総理にとっては“やった感”を出すためだけにこの処分をするのは相当リスクが高い。裏金議員を原則通り公認するという報道が出て、党内からも多くの反発が出て『このままではまずい』という危機感から世論を向いた判断をせざるを得なかったのではないか。そのため、選挙後に安定した党内運営を進められるかどうかも危うい」
━━この決定で自民党は今後どうなるのか? “分裂”の動きになるのか?
「7日は衆議院で代表質問があったが、普通総理が演説すると答弁後に応援するような拍手が起こるのが今日は拍手の勢いがいつもよりは小さく聞こえ、安倍派議員を中心に拍手をしていない人もおり、白けたムードが漂って一体感のなさが浮き彫りになった」
━━解散を間近に控え、自民党の状況は?
「厳しい選挙になることは間違いない。そもそも政治とカネでずっと逆風が吹いている中であり、議員は自分の選挙に必死だ。そのため、少し気が早いかもしれないが注目すべきは『選挙が終わった後』だ。石破総理の周辺は『今回の衆議院選挙の勝敗ラインは自民公明で過半数確保』との考えを示しているが、裏金問題がどこまで波及するかは未知数だ。世論に流されて厳しい処分をしたものの、結果的に自民党は議席を減らすかもしれない。その場合、今回の決定をくだした石破総理と執行部が責任を問われることになる。いずれにしても、このタイミングで選挙に関わる今回の決定を行ったことは、党内に大きな禍根を残すとみられる」
━━明日以降の国会日程は?
「7日は衆議院で代表質問が行われたが、8日は参議院本会議で1日中代表質問が行われ、9日には党首討論を開く。そして石破総理は9日に衆議院を解散する方針で、15日公示、27日に投開票のスケジュールで進んでいく見通しだ」
(ABEMA/倍速ニュース)