黙秘する被疑者に対して、検察官による違法な取り調べが問題になるケースが相次いでいる。長期にわたる身柄拘束や自白を強要する、いわゆる「人質司法」は冤罪の温床ともされてきた。
刑事裁判を20年以上取材してきた映画監督の周防正行氏は、任意捜査段階を含めた取り調べの可視化(録音・録画)の完全実施に向けた法務省の協議会に注目している。
周防氏は現状について「可視化されていると言っても裁判員裁判と独自捜査事件と言われるものだけで、全体の3%と言われている」と語る。さらに、2019年施行の取り調べの可視化が義務付けられた改正刑事訴訟法について「今まさに3年後の見直しを行っている」としつつ「信じ難いが、録音・録画の対象事件を増やす方向には進んでいない」と説明。
「今は逮捕勾留後の取り調べは録音・録画しているが、任意捜査段階の取り調べだってしなければいけない。参考人、被害者の供述も全て録音・録画すべきだということを私や村木氏(元厚生労働省事務次官・村木厚子氏)は意見してきた。それが認められず一部事件のみになってしまったが、3年後にきちんと見直しましょうということで妥協した。今その協議会が続いているが、(法務省は)広げるどころかもう終わりにしたいようだ。個別事件には踏み込まないと言って、統計の数字だけで議論を進めようとする。もし変えるとしても、何年も先になるだろう。それぐらい消極的だ」(周防氏)
2020年に軍事転用可能な機器を不正輸出しようとしたとして、社長ら3人が逮捕・起訴、のちに起訴が取り消された大川原化工機事件。その担当弁護士を務めた高田剛弁護士も「可視化は非常に重要」としつつ「大川原化工機事件でも一審で、検事の違法を認めた。なぜ認められたかというと、3人が逮捕された後に検事が従業員らを呼んで取り調べをしたが、参考人聴取を何人かが隠れて録音をした。その録音データを提出したところ(証拠として認められ)勝った。それがなかったら勝てていなかった」と振り返った。
「事件の鍵を握るものが、取り調べの可視化によって表に出やすくなるので、ぜひ実現してほしい」(高田氏)
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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