メディアで連日飛び交う「闇バイト」の言葉。仕事の内容を明らかにせず、著しく高額な報酬の支払いを示唆するなどして犯罪の実行者を募集するものだ。30日にも東京・三鷹市の住宅に複数人が押し入り、男性の首を絞めるなどした強盗未遂事件が発生。その後、23歳の大学生の男が池袋駅近くの交番に出頭、住居侵入と強盗未遂の容疑で逮捕された。男はXで「ホワイト案件」を検索し、犯行に加わったという。
かつては「裏バイト」とも表現された闇バイト。「バイト」という言葉の響き以上に、犯罪は重大で、初犯であっても裁判で実刑判決が下されるケースも少なくない。『ABEMA Prime』では、若者たちが闇バイトに巻き込まれる現状、さらに「闇バイト」という言葉が広まることのリスクについて議論した。
■指示役からの追い込みは「半端じゃない。逃げられないから前に進むしかない」
三鷹の事件で出頭してきた23歳の大学生は、「ホワイト案件」と検索して闇バイトに応募、強盗未遂事件の実行役として加わったと見られている。指示役から「逃げたら殺す」などと脅され、警察に駆け込んだ。歌舞伎町で悩める人々を支援する日本駆け込み寺代表の玄秀盛氏は、過去に同様のケースで相談・説得したことがあるといい「脅しは半端じゃない。たったワンフレーズで『逃げたら殺す』もそうだし、こういうのに入る時は身分証を取られる。自宅の電話も目の前で確認されるので逃げられない。もう前に進むしかない」と、本人もしくは家族にまで脅迫が及ぶことで、指示を実行してしまうのだという。警察庁も対策はしており、今月18日にXとYouTubeで闇バイトへの加担に関して、注意を促す動画を投稿。「勇気を持ってすぐ警察に相談を」「警察は相談者や家族を確実に保護します」と呼びかけたところ、3人から相談を受けて保護された。
かつて事件記者でもあったジャーナリストの佐々木俊尚氏は「別に治安は悪くなっていない。刑法犯、凶悪犯罪、殺人が一番多かったのは昭和20年代で、その当時と比べると今は10分の1ぐらい。普通に夜の街を女性が歩いていて不安がないのは日本ぐらい」と前置きした上で、「闇バイトみたいな事件は今年に入ってから多発しているのは間違いない。新たな手口を生み出す者はどんな時代にもいる。インターネットや、テレグラムのような匿名性があるメッセンジャーアプリが登場したことで、それを悪用するやつが出てくるのは間違いない」と、犯罪者が生まれ続ける歴史と現状を振り返った。
■文面の裏を読み取れず引っかかるケースも
SNSなどを中心に勧誘が行われる闇バイトだが、募集の文言がまともなものなのか、それとも闇バイトなのか、判断ができない者も少なくない。日頃から犯罪に関する言葉に触れる玄氏は「中高生などはよく言葉を知っている。また『パパ活』なんかも今は名称が変わっているし、みんな案件、案件という。こっちから聞いていかないとリアルタイムの会話についていけなくなる」と、どんどんと言葉も変化している。また、うっかり闇バイトに引っかかってしまうケースについて、佐々木氏は「単なる推測だが」とした上で、「10年ぐらい前に国立情報学研究所が中高生向けに読解力のテストをしたら、わかっていない人が3割いた。文章は読めているけど、意味がよく分かっていない。この3割は大きくて、中学生や高校生で3割いるということは、大人になって急に読解力が高まるわけはないから、人口の3割くらいはいるということ。文章としては読めるけど、その裏に何があるのか理解しないまま、金を受け取ってしまう人は一定数いるし、SNSで騙されやすくなっている」と、誘い文句を疑うことなく、気づけば犯罪に巻き込まれているというケースを示した。
また社会活動家の山本昌子氏は、金銭的に苦しんで闇バイトに関わる若者の心理を代弁した。「借金が10何万円あって、それで自ら命を絶ってしまう子がいる。借金を抱えて、世の中に責められる、電話が来るというのは自分を想像以上に責めるもの。自ら(闇バイトに加わる)ように見えるような子でも、本当は見えない位置ですごく苦しみがあると思う」と、軽いノリではなく、窮地を脱するために手を染めてしまうこともあるとした。類似の例としては、性風俗で務める女性をあげ「性的な仕事に行く子も、ちょっと経ってから『実は止めて欲しかった。誰かに自分を大事にしてと言ってほしかった』というのを聞いた時もあった」と、経験を語った。
■「闇バイト」という言葉が軽い?「問題は用語が示しているオブラート感」
闇バイトに手を染めてしまう若者が増える中、この「闇バイト」という表現が、多くの加害者・被害者を生んでいるという意見もある。佐々木氏は「闇バイトというオブラートに包んだ変な言葉を誰が言い出して、広めているのかすごく気になる」と指摘した。「闇バイトというとすごく幅が広い。ちょっとした違法な金を運ぶ世界から、オレオレ詐欺の受け子・出し子、最後は強盗殺人になっている。問題は用語が示しているオブラート感。売春なのに何か援助交際とかパパ活という。パパ活というと単に一緒に食事するだけもパパ活だが、売春も含まれる。そうすると何か定義を曖昧にすることによってその中に含まれている刑の重さがうまく隠されている」と、言葉の印象によって事の重大さが薄れていると述べた。
また「闇バイトは明らかにそう。強盗殺人なんて無期懲役と死刑しか量刑がない。この前捕まった20歳そこそこの若者も絶対無期になって、30年以上は出られない。用語でオブラートに包みすぎている。(闇バイトなどに)関わっている世界の人たちが隠語のとして使うのは別に構わないが、あまりメディアが乗っかって『闇バイト』と言わない方がいいのでは」と、重大犯罪を含むものが軽く伝わりかねない状況に警鐘を鳴らしていた。
(『ABEMA Prime』より)
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