11月6日、プロレスリング・ノア『STAR NAVIGATION 2024』東京・後楽園ホール大会が開催された。メインイベントは、丸藤正道vs杉浦貴のGHCヘビー級王座次期挑戦者決定戦。ともにNOAHの旗揚げメンバーであり長年団体を支え続けた戦友同士が、齋藤彰俊引退記念大会である11.17ドルフィンズアリーナ（愛知県体育館）でのNOAH最高峰王座挑戦権を賭けて対戦した。
NOAHの象徴である丸藤と、NOAHの重鎮である杉浦の一戦は、伝統的なNOAH黎明期のGHCヘビー級タイトルマッチを彷彿させるような重厚な闘いとなった。
序盤、グラウンドでの腕への一点集中攻撃でペースを握った丸藤が、エプロンからロープを飛び越えてのコードブレイカー、ダブルリストを固めての変形バックドロップホールドなど、普段は開けない引き出しを開け、さらにパーフェクトキーロックでじわじわと削っていく。
それに対し杉浦は、持ち前のタフネスさでそれらをしのいでいくと、フロントネックロック、垂直落下式ブレーンバスター、強烈なラリアットで反撃。終盤、意地の張り手合戦から丸藤が杉浦の顔面にナックルを入れると、杉浦もナックル連打で応戦してからラリアットでなぎ倒す。
そして「齋藤さん！」と、放送席でゲスト解説を務める齋藤彰俊の名を叫びアピールすると、オリンピック予選スラムを完璧に決める。これを丸藤がカウント3ギリギリで返すが、すぐさま杉浦はフロントネックロックで捕獲し、そのまま絞め続けレフェリーストップ勝ち。
齋藤彰俊と同じ中京高校（現・中京大学付属中京高校）の後輩である杉浦が、齋藤の引退の舞台である11.17ドルフィンズアリーナで、清宮海斗が持つGHCヘビー級王座へ挑戦することが決定した。
試合後、リングサイドでこの一戦を見届けた王者・清宮がベルトを肩に下げてリングインすると、齋藤をリングに呼び込み「齋藤さんがこれまで支えてきたNOAHを安心して託せるように、俺のすべてをぶつけて杉浦さんを倒して、新しいNOAHを作ります」と宣言。そして「杉浦さん、名古屋よろしくお願いします」と、これまでGHC4度戴冠経験のある挑戦者に敬意を表し、握手を交わした。
これを受けてマイクを握った齋藤は「チャンピオン、呼んでくれてありがとう。今の心のこもった決意、しかと受け取りました。そして今日、NOAHの魂を感じるような熱い闘いをした二人、ありがとうございました」と、清宮、杉浦、丸藤にそれぞれ感謝の言葉を述べた。
そして「話題性でもなく、他団体でもなく、俺にとって価値のある、意味のある対戦相手を決めました」と、自身の引退試合について語り始め、「俺が初めてプロレスリング・ノアに上がった愛知県体育館、そしてNOAHに再入団した時も常に対角線にいた人。そして俺は忘れもしない、三沢（光晴）さんとシングルをやって、最後、三沢さんがおぶって花道を帰った選手。彼の背中に三沢さんを感じている。だから、丸藤選手！ あなたに俺がこのプロレスのリング、NOAHのリングを降りる最後の相手になってもらいたい！」と、熱のこもった口調で、引退試合の相手に丸藤正道を指名した。
これに対して丸藤も「今日は負けてしまいましたよ。でも俺にとって齋藤彰俊に対する気持ちは何も変わらないです。あなたが俺を最後の相手に指名してくれるなら光栄です。心してあなたに引導をわたします。よろしくお願いします」と受諾し、がっちりと握手を交わした。
そして最後、齋藤彰俊が再びマイクを握ると「NOAHの闘いは熱い。そして俺もプロレス人生最後のすべてをかけて、生き様を見せる。11月17日名古屋では、これ以上ないくらいみんなの心に突き刺さる、とても熱い素晴らしい試合をするから、ぜひ見にきてくれーーー！」と絶叫した。
こうして11.17ドルフィンズアリーナ大会では、清宮海斗vs杉浦貴のGHCヘビー級タイトルマッチ、そして齋藤彰俊引退試合、齋藤彰俊vs丸藤正道が決定。名古屋でNOAHの歴史と現在、未来が交差する。
文／堀江ガンツ
写真／プロレスリング・ノア
