アメリカの名門スタンフォード大学が、人間の「老い」に関する最新の調査結果を発表した。これによれば人間は年齢とともに、一定のペースで老いていくと思われていたところ、44歳と60歳、2度のタイミングで一気に老化が進むという。
老化といえば目や耳、足腰などの能力が衰え、シワや白髪などの見た目、記憶力などにも影響があるが、44歳前後では脂質・アルコールの代謝の低下、60歳前後では炭水化物の代謝の低下、活性酸素が増え酸化ストレスにさらされ、免疫力も落ちると言われている。
ただし日本は世界有数の長寿国でもあり、健康寿命が上がったことでかつては20代までを「若者」と呼んでいたところ30代、さらには40代も若いと言われることが増えてきた。『ABEMA Prime』では老化を研究する医師、50~60代とともに、老いとの付き合い方・向き合い方を議論した。
■一気に老いるタイミングが見つかった!?
最新の研究で明らかになった、老いにタイミングとはいかなるものか。お茶の水健康長寿クリニック院長で国際予防医学協会理事長の白澤卓二氏は「今までの研究は、見た目のシワや体力、筋力の低下を基準にしていた。しかし、今回の研究は新しい方法で遺伝子発現を見た。血液から細胞を取って遺伝子発現や腸内細菌をシークエンスし、生活習慣やアルコール消費量などをコンピュータで解析した。その結果、衰えが一定の速度で進むのではなく、44歳と60歳で加速のピークがあることを発見した」と解説した。
この研究でポイントとなった遺伝子発現とは何か。「例えばアルコールを飲むと、その解毒酵素が多く必要になる。そのため遺伝子がたくさんの酵素を作らなければならない。血液データを見ると、アルコール消費量が反映される。1週間や2週間の生活が分かり、2年間の追跡調査で老化の速度を計算すると、44歳前後と60歳前後が加速する時期であると分かった」と述べた。
精神的なものや生活環境の変化によって、老いが加速したり緩やかになったりするのか。「老化研究では重要視されるのは寿命だ。寿命に対する遺伝と環境の影響を調べたデンマークの双子研究によれば、遺伝が25%、環境が75%を占める。食事、運動、空気、気温、居住地、結婚相手などが環境因子で、大きな影響を持つ」。また、ストレスも環境要因の一つだと語った。
■老いを見る3つのポイント
白澤氏によれば「老化研究は3つのレベルがある」という。「1つは細胞の老化、もう1つは臓器の老化、最後に来るのが個体の老化だ。視力や聴力の変化は臓器の老化だ。それぞれ臓器の老化スピードは違う。ほとんど老化しない臓器もある。変わらない臓器は腸だ。腸の細胞は常に入れ替わっているが、脳と筋肉の細胞は減る一方だ」と説明した。
腸が衰えないのに年齢とともに消化力が落ちるのは、すい臓の働きが低下するためだという。さらに、睡眠時間も短くなる傾向がある。「正常な老化の一部であり、考え方次第で受け入れられる」。
脳と筋肉の老化は40歳頃から始まる。白澤氏は「一生かけて追い続ける目標を持っている人は長生きする傾向にある。だから目的は別にあって、結果として長生きしたというのがほとんどのケースだ」という見解を示し、「100歳で元気な人たちの若い頃の写真を見ると、やはりバリバリに活動していた」と、やりがいを持つ人こそ長寿に近いと語った。
■老けない方法はある?マウスの実験ではコミュニケーションの重要性も
シリコンバレーのビッグテックでは、イーロン・マスクやジェフ・ベゾスをはじめ、50代から60代の人物たちが健康維持や若返りに多額の資金を投入している。この傾向は、アメリカで技術進歩が進む一因となっている。新しい知見はあるのだろうか。
白澤氏は「中年期と高齢期の病気には大きな差があり、年齢によってリスク管理を変える必要がある。例えば80歳以上になると癌の進行が遅くなるが、20代では進行が早い。同じ高血圧でも、年齢によってリスクが異なるため、年齢別に評価すべきだ」と、年齢によっての付き合い方を提案した。
脳の老化についての研究も進んでいる。「以前は脳の細胞は増えないと言われていたが、最近の研究では増やすことが可能と分かってきた」と語る。マウスの実験例を挙げ「走っているネズミやコミュニティで飼われているネズミの(脳の)神経細胞は分裂が進む。しかし、孤立した環境のネズミは細胞が増えない」というのだ。このことから、一人暮らしの孤独が脳に悪影響を与えるという予想もできる「コミュニケーションは脳の刺激に大いに関与している」と強調した。
対談に参加した68歳のがんちち氏も同意見だ。「使わなければ脳も退化する。だからこそ、新しいことに挑戦し続けることが重要だ」と述べた。54歳のめぐまつ氏も自身の経験を共有した。「45歳を過ぎてから学び直し、ファイナンシャルプランナーの資格を取得した。脳の老化を防ぐためには、学び続けることが大事」。老けないための大切なポイントは、脳の刺激を保ち続けること。そのためには、コミュニケーションや新しい挑戦が欠かせないようだ。
(『ABEMA Prime』より)
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