それから祖父に会うことはほとんどなかった。彼の反対を押し切って結婚式も挙げたが、当然祖父は来ない。
しばらくして、祖父は入院。生存率が高いとは言えない手術を受けることになり、私は無理に結婚を進めたことを後悔した。
手術の前、祖父の家から病院に生活用品を持っていく時、部屋のたんすに私宛の手紙が入っているのを見つけた。それは“遺書”のようだった。
『本当は手放しで祝いたかったけれど、この孫には怖くてめんどくさいじじいがついているんだ、と相手に釘を刺しておきたかった。こんなじじいがいても結婚してくれる相手なら、良い人だから大切にするように』
手紙は夫にも見せ、私たちは2人でしばらく泣いた。「おじいちゃんにはもう会いたくない」と言ってしまった、あの一言を後悔した。
数日後、祖父の手術は無事成功。今では私たち夫婦は祖父と3人で暮らしている。
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