2024年は動画配信サイトを使ってライブ配信を行う「ライバー」と言われる人の脱税、無申告が目立った。テレビ朝日社会部・国税担当の西平大毅記者にライバーの脱税の実態などについて聞いた。
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━━ライバーとはどのような人たちなのか?
「ライバーとは生配信をメインでオンラインで活動を行う配信者のことだ。ユーチューブ、TikTok、インスタグラム以外にも様々なアプリを使って発信している」
━━ライバーはどうやって収益を得ているのか?
「ライバーの収益源は主には『投げ銭』と呼ばれるものだ。投げ銭とは配信アプリやサイト上でファンがライバーに対し金銭的に支援するもので、投げ銭をすることでライバーに質問することもできるのだが、中には億を稼ぐライバーもいるほどだ。ライバーはその場で金額などが分かるため、熱心なファンとして認知してもらえる可能性が高まる。オンライン上ではあるが、双方向のコミュニケーションを取っていると感じるファンもいるようだ」
━━ファンから受け取った投げ銭はライバーがそのまま受け取れるのか?
「まず、フリーのライバーのケースを見ていく。ファンが投げ銭をすると、まずライブ配信運営会社にお金が入る。その後、ライブ配信会社が何%かを取り分として受け取り、差し引かれたものがライバーに振り込まれる。一方、事務所に所属するライバーはさらに事務所の取り分も引かれる形になる。国税局はこの投げ銭に着目し、力を入れて税務調査を行ったとみられる」
━━税金を払わないライバーが増えているのか?
「国税庁によると、2023年度の申告漏れ1件あたりの金額が多い上位10業種では、1位=経営コンサルタント、2位=ホステス・ホストに続く3位に『コンテンツ配信』、いわゆるライバーが初めてランクインした。現在、コンテンツ配信を行うライバーの所得の無申告が相次いでいるのだ」
━━なぜライバーが目立ったのか?
「納税意識の低さが原因だ。先ほど説明した投げ銭は全額懐に入れていいと考えるライバーが多い傾向がある。10年ほど前からユーチューバーが台頭し、その存在は一般化した。事務所に所属するユーチューバーは事務所からきちんと納税することを言われることが多く、業界全体で意識が向上してきた。一方でライバーは事務所に所属しないフリーも多く、また業界全体で発展途上ということもあり、税に対する意識がユーチューバーと比べると低いと国税関係者は話している」
━━国税が「職業」に注目して集中的に税務調査に入ることはあるのか?
「一般論で言うと、国税局は大企業では定期的に税務調査を行っており、テレビ、新聞、週刊誌などトレンドは常にキャッチしてので、伸びている業界・職業を重点的に調べることはよくある。以前はユーチューバーに税務調査に入り、追徴課税となったケースが多かったが、今年は特にライバーが目立った」
━━国税はどうやってライバーの稼ぎを探っているのか?
「明らかにはされていないが、インターネット上で有名になっているライバーなどは常にチェックされているとみられる。登録者・フォロワー数などから調査の端緒としているケースもあると考えられる。一般論にはなるが、様々な方法で資料は入手しており、その中で口座もチェックされていることもあるようだ」
━━具体的にはどんな事案があるのか?
「アプリで配信を行っていたライバーの女性が4年間にわたりおよそ1億1900万円の所得を全く税務申告していなかったことが大阪国税局管内であった。国税局は予告なしで女性に調査に入り、スマートフォンを確認したところ、女性が利用するライブ配信運営会社から報酬の金額通知を受けていたことを把握した。証拠をもとに女性を追及したところ、全く税務申告していなかったことを認めた。女性は『忙しかったから申告を忘れていた』と話したという。大阪国税局は無申告加算税と合わせ、2100万円ほどを追徴課税した」
━━追徴課税の基準は?
「所得を意図的に隠し、申告していなかった場合などは重加算税といって、本来払うべき税金に原則35%上乗せされ、納めなければならない。一方、単純に無申告だった場合は15%、見解や認識の違いから払うべき税金が少なった場合は過少申告加算税という、10%ほど上乗せされ納めなければならない」
━━他にもライバーが巨額の脱税をしていた事件はあるか_
「神奈川県に住む動画配信業を行っている40歳の女性は自身が出演するアダルト動画を有料の会員制サイトで配信していたが、2億1000万円余りの所得を全く税務申告していなかった。女性は所得税7800万円ほどを脱税したとして今年6月に東京国税局が刑事告発した。関係者によると、女性は会員制動画配信サイトで40万人を超えるフォロワーを抱えている、いわば人気アダルト動画配信者だった。10年以上前から事業として活動しており、アニメのキャラクターなどに扮し活動しており、マスコミ各社が刑事告発を報じると、Xを中心に大きな騒ぎとなった」
━━ライバーやインフルエンサーが企業の商品や事業を紹介している配信動画を見かけることも多いが、こちらも申告の対象になるのか?
「申告対象になる。企業から報酬を受け取っていた場合はきちんと所得を申告しなければならない。また商品を受け取った場合では、時価計算で国税当局から課税される可能性もある」
━━申告漏れを防ぐためにはどうすればよいのか?
「納税する意識をきちんと持つしかない。収入がたくさんあれば、国税局は逃さずチェックしている。指摘されれば、人前に出るライバーの仕事に悪影響になりかねない。見られているという意識を持つほか、迷ったら税理士に相談するべきだ」
━━会社員がお小遣いを稼ぐ感覚でライブ配信を行い、収益をあげた場合、どうすればいいのか?
「国税庁は20万円のライブ配信による収入があれば、それは副業になるので申告してほしいと呼びかけている」
━━中高生など教育の段階で「税金」に関して考える機会が少ないように思うが、納税意識の低さと関係があると思うか?
「ライバーなどのコンテンツ配信の多くは若者。学生時代に税に関する勉強や啓蒙をもう少しできれば申告漏れを減らせる可能性はあるかもしれない」
━━国税局の調査の手法に変化は起こっているのか?
「国税局は税務調査にAIを導入して既に効果をもたらしている。今年6月までの1年間に行われた各地の国税局の税務調査で、所得税の申告漏れを指摘して追徴課税をした額が全国で1398億円あまりあった。これは過去最多なのだが、実はこの背景にAIの導入がある。申告書の不備が多かったり、キリのよい金額で申告したりしている人や現金収入が多い仕事など、過去実績のある税務調査をAIに記憶させ、申告漏れのおそれのある納税者を重点的に調べた結果、追徴課税につながったのだ。国税庁関係者は調査の効率が上がったと自信をのぞかせていた」
(ABEMA/倍速ニュース)